板わかめ
ナマコを一番最初に喰った人
居酒屋でサラリーマンのグループが飲んでいて、つまみの一つにナマコがあったりすると、課長らしいのが箸でつまみあげてしみじみ眺め、「しかしこのー、こういうものを最初に食べた人は偉いよなあ」と言うと、「またかよ」と思って黙っている部下と、
「ほんとにぼくもそう思います」と、しみじみ頷く部下とがいて、「しみじみ」のほうはいずれ出世し、「またかよ」のほうはいつまでたっても平社員という「ナマコの分岐点」をサラリーマンは経験することになる。 ぼくもナマコを最初に食べた人を偉いと思うが、
その最初の人はナマコをどうやって食べたのだろう。 いきなり三杯酢で、ということはなかったはずだ。 その時代は恐らく人類の拾い食いの時代で、海から拾いあげて齧ってみた人は「こら、あかん」と思ってすぐ捨てたと思う。
問題は「こら、あかん」から「三杯酢」に至る期間のほうにある。 三杯酢があってこそナマコは成立するわけだから、「一番最初に三杯酢で食べた人が一番偉い」ということになるのではないか(東海林さだお)。
さっすが東海林さん!
ふぐの子糠漬
三宅島のくさや
三宅島のくさやを頂戴した。
しかも定番のムロアジのみならず、シイラ、トビウオもセットになっている豪華版。 くさやに限らずシイラは、長崎では普段あまりなじみのない魚。 でもそのシイラが、くさや初心者にはうってつけだと助言ただいている。

鮒寿司考

鮒寿司は「フナと米と塩」のみが織り成す小宇宙。
好物「鮒寿司」を買い漁り、好みのものに出会えれば至福。 今回入手したものは酸味がマイルドで、あまりにも酒に合うので、メーカーに問い合わせをしてみたところ、丁寧に作り方を教えてくださった。
(more…)おいしい、広島。
広島で遊んできた。 昼間はあちこち観光し、何しろ夜が楽しいったらない。 お好み焼きはもちろん食べてと、あとは地元在住ガイド役の友人に案内してもらった。
「川せ」という飲み屋街の真っ只中にある割烹屋は、若店主が繰り出す料理が実直で、ズラリ揃えられた広島の酒とよく合い、閉店時刻までまったりしてしまった。
昭和33年創業のホルモン専門店「利根屋」は強烈だ。 以前『酒場放浪記』で紹介された店で、たまたまそれを観ていて一度行ってみたいと思っていたのだ。 入店してすぐオカミさんにそう伝えると「じゃあ吉田さんが食べたのと同じものを出してみましょうか?」と訊かれたのでそうした。
(more…)佳肴二品
腹皮
カツオの腹皮にようやく出会えた。 鹿児島県のアンテナショップで売られていたものだ。 炙ってかじると、珍味というほどでもないが、ただ単に塩を振って干しただけではない歯ざわりと、熟成された「血合い」のような深い味がする。 焼いたのを刻んで、マヨ醤油にカボスを絞りこみ、七味で喰うと旨々。
(more…)大根おろしの卵かけ

「大根おろしの上に、生卵を割り落とし、醤油をたらしてかき回して食う」
と、團 伊玖磨 の『パイプのけむり』にあったから、早速試してみたらこれがまた旨かった。 あっさりしたトロロのような味がして、ザックリ混ぜて匙ですくえば酒のアテにもなる。 もちろんこれをご飯の上にかけて、かっ込んでもイケる。
(more…)高橋由一の「鮭」風「鯵」

だいぶ涼しくなってきたので、このところ寒風干しを量産している。 立派な鮭一匹へ丹念に塩をすりこんで干し、熟成させたものを作ってみたいのだが、肝心な鮭が手に入らないので、もっぱら鯵でこしらえている。
(more…)江戸善:老舗風唐揚げ

人を待っていて少し時間があったので、何年ぶりかに江戸善へ寄った。 江戸善は長崎の飲み屋街にある老舗で、鶏一本で勝負して何十年になる名店である。 やはり唐揚げとビールを注文する。
皿に小ぶりな唐揚げがいくつか乗り、脇にキャベツが盛ってある。 ビールをグイと飲んでから、すかさず唐揚げをつまみ上げかじりついたらポリボリとした衣の食感が心地よく、見た目ほど味が濃くなくてすんなり胃に納まる。 またこの大きさがよい。 ビールのために最適化された唐揚げだという印象を受ける。
普段作っている唐揚げについては以前記したが(鶏のから揚げ)、江戸善風に作るとなれば、どんな感じになるかなあ・・・。
江戸善の鶏はパーツが小さいところを見るとヒナ鶏なのだろうか。 肉屋に置いていなかったから、普通の鶏モモ肉をいつもより小さく切り分けて使うとして味付けは・・・どんなジャンルにしろ、老舗というものは小細工がなく王道を堂々と歩んでいる。
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