長芋のわさびあえ
「いい店があるんだよー」
変に気が合い、一緒に飲みに行くことになった氏は言う。 「どんな感じの店? 酒の種類が豊富だったりとかそういうの?」と尋ねてみれば、これがまた別の意味でのいい店で・・・氏:「店員の姉ちゃんがみんなこんな短いスカートはいててね、もう飲むどころではないっちゅう居酒屋なわけよ」 オイ:「・・・」
飲み行くのに飲まんでどうする。 そっち系がよければ、何も居酒屋に行くこともなかろうもん。 即却下。
オイ:「じゃあオイが店決めようか、あのねえ」 氏:「もうひとつ気になってる店があるわけよ」 オイ:「どんな?」
氏:「あのねえ、居酒屋なんだけど店員の姉ちゃんがみんな花魁みたいな格好しているわけよ。 ガツッと開いた襟元を見ていたらもう、酒なんて飲めるかっちゅう話でね。 でも接客は最悪だよ」 オイ:「またそっちか・・・」
気が合う気がしたのは何かの間違いだったようだ。 キャバクラにでも行ってきたらと促したら、飲みには行きたいらしい。
店はもちろんオイの独断で決めて、いざ乾杯。
(more…)福砂屋のカステラを・・・
子供の頃、おやつによくカステラを食べた。
よく冷やしたカステラに、冷たい牛乳を添えてつまんだものだ。 「カステラといえば福砂屋だ」と聞いて育ったものだが、成長するにつれ、カステラを口にすることは次第に少なくなっていった。
吉田健一の『舌鼓ところどころ』を読んでいた時のことだと記憶しているが、カステラにまつわる思わず「ウソォ」と口に出た逸話がある。
(more…)ボラヘソ
なじみの料理屋でハラカワのことを絶賛していたら大将の目が怪しく光った。 うらやましがられたのかと思いきや「へーえ」という精気のない相槌をされ、「まだまだだな、オイよ」と言わんばかりに見下された。
だって喰ったことなかとやろうもん。 その態度、どがんなっとっと!と突っ込んだら、ガサゴソとカウンターの下をまさぐって袋を取り出した。
中から出てきたものは、見覚えのある物体なのだが、なぜこんな姿になっているのかが皆目見当がつかない。 カラスミの一部なのだ。
カラスミの下の部分、ちょうどボラの腹と卵巣が接する部分だけが袋一杯詰められている。 カラスミは、あの美しい形も味のうちである(参考:?)。 それをなんで切り落としてしまったのだろうこの人は。 飲みすぎてついにおかしくなったのではなかろうか?
(more…)極マメ
次男がしきりに釣りをしたいという。 何に影響を受けたのかは知らないが、望みをかなえてあげるしかない。 朝、ポイントに釣具を買いにいった。 念のためにライフジャケットも着せることにした。 アジな麦わら帽子があったので、これもかぶせてみよう。 やはり足元は長靴か・・・全て装着させると、我が子ながらついふいてしまいそうな姿になった。
運転しながら手ごろな防波堤を見つけ、釣りを開始した。 さびき釣りである。 あたりに釣人がちらほら見える。 撒き餌をし、竿をたらしてチョンチョコ動かす・・・竿先が小刻みに震えたのを合図に糸を巻き上げると、ピチピチ跳ねる小魚が鈴なりになって海面からあがってくる。
次男は、はじめて自分で釣り上げた魚に雄たけびをあげた。 釣れた魚は、子供の頃「金魚」と呼んでいた赤っぽい小魚である。 「ザコ」とか「エサトリ」という別名もあったように記憶している。 つまり、釣っても嬉しくない部類の魚なのだ。 でも次男にとっては初めて釣った魚であるからして、愛しいったらない。 すぐさま針をはずし、クーラーボックスに入れると勢いよく泳ぎはじめた。
自信をつけた次男は何度も何度も竿をたらし、その度に金魚を釣りあげた。 時間がたつのを忘れ没頭し、我等の腕は真っ赤に焼けてヒリヒリしてきた。 「そろそろ帰ろう」という言葉にも次男は耳を貸さない。 マズい。
(more…)ハラカワ
ある場所で、ハガツオのフルコースをご馳走になった。
身は勿論タタキで。 本鰹みたいに下駄のように厚く切ってつまむわけにはいかないが、薬味をテンコ盛りにするとなかなかのもの。
面白いのがここからだ。 三枚おろしにしたあとに残る頭を出刃二刀流でメッタメタに叩きあげ、まるでなめろうのような舌触りにした皿がでてきた。 エラを取り除いているだけで、目玉も骨も、あの堅い頭全体を叩き潰しているのだ。 ここまで叩くのにどれほどの時間がかかったのだろうか、空気的に聞けなかったので今度こっそり教えてもらおう。
(more…)塩鮭
さんまの塩焼き、アジの開き、塩鮭の切り身・・・。 どれも朝の食卓を彩る華々しいスターたちだが、個人的な好みでいうと、塩鮭が一番嬉しい。 これに熱い味噌汁がつけばあとは特に必要ない。
焼きたての塩鮭が一切れあれば、たとえ朝でも、ご飯二杯は軽い。 否、鮭の皮だけでも一杯いけるハズだから計三杯か。 今後も飽きる気配がない。
塩鮭の調理法、実は焼くだけではないのをご存知か。
(more…)プチシイタケ
シイタケに塩、胡椒を振り、たっぷりのバターで炒めてつまむ。 噛んだ瞬間、傘のヒダからバターがにじみでてきてアチアツなりながら冷ったいビールを流し込む。 たぶんその気になれば、シイタケのバター焼きだけでビールを5リットルは飲めると思う。
シイタケのバター焼きは、自分で作ったほうが旨い。 炒める際立ちのぼる芳醇な香りは、調理場でしか味わうことができない。 その余韻に浸りつつ急いで食卓に乗せ、即かぶりつくのである。 ただ卓につき、できあがるのを待つだけならば、あの香りを楽しむことはできない。
(more…)たたみいわし
タタミイワシは、イワシの稚魚を生のまま薄く板状に並べて干したもの。 東海地方の特産品である。 聞くところによれば、この製法を思いついたのは海苔職人だという。 シーズンオフでヒマな時、イワシの稚魚を海苔を作る時のように扱ったところ、「たたみいわし」が誕生したらしい。
(more…)式見かまぼこ
長崎に式見という町があり、そこに船本かまぼこはある。 この店で作られるのは「揚げかまぼこ」の一種だけ。 このかまぼこを、式見かまぼこという。
長崎市民ならば知らぬ人はいないかまぼこであり、連日常連客で絶えない店だ。
(more…)大根のから揚げ
うっかり肴を用意することを忘れてしまったので、急遽豚バラスライスを、シャブシャブすることにした。 つけだれは、ポン酢に胡麻油をたらしこみ、すりにんにく、しょうがを溶かし、タカノツメを散らしたもの。
別途大根一本を真っ二つにし、根っこに近いほうを全てすりおろす。 これで準備完了。
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