式見かまぼこ
長崎に式見という町があり、そこに船本かまぼこはある。 この店で作られるのは「揚げかまぼこ」の一種だけ。 このかまぼこを、式見かまぼこという。
長崎市民ならば知らぬ人はいないかまぼこであり、連日常連客で絶えない店だ。
店に入るとそこは、今まさにかまぼこ作りの真っ最中である。 小さなカウンターに揚げたてのかまぼこが並べられており、おばさんが「はい何枚にしましょう」と聞いてくる。
一枚120円。 十枚入りのかまぼこが飛ぶように売れてゆく。
下げ袋を受け取ると、揚げたての温かさが伝わってくる。 我慢できなくなり、歩きながら包みを破り、かまぼこの油と熱気で湿った油紙の中からかまぼこを取り出してかじる。
潮風を浴びながらハフハフ飲み込めば、シャクリとした外皮の中にある、もっちりとしたすり身に身悶える。 ちゃんと魚の味がするかまぼこだ。
鹿児島のさつま揚げみたいな外見をしているが、魚本来の持つ甘みがあるだけで、ほんのりと塩がきいている。 これがビールの肴にはうってつけなのだ。 日本酒とも合う。
冷めても旨い。 ウチでは次の日まで残ると、軽く炙って皮をパリリとさせ、それをスルメのように、マヨ醤油に七味でつまむことにしている。 長崎の酒飲みならば、これを見るだけで、誰だってヨダレがでる。
「オイ、式見かんぼこば買うてきたぞ!」と、家に遊びに来る度いつも船本かまぼこを提げてきた親友のことを思い出した。
小江に職場の倉庫があったので、行ったついでに寄りました。
懐かしい味ですね。
五島・福江出身の女房の一番の好物はカンボコです。