酒税法いかに@さるYouTuberの意見
先日公開した動画 『葡萄でレーズン造り』 について、「酒税法に抵触しているのではないか?」
とわざわざコメント欄にツラツラ書いてくる連中がチラチラするのでこの文章を書いている。
自分の創ったコンテンツについて、別の場所で詳細に書くのは好きではないが、今度同じような事が起きた場合の備忘録として残す。
動画内容は、素晴らしい葡萄が手に入ったので、それをいかに美味しく楽しむか、というものであり、途中で日本酒に浸しておく工程についての酒税法云々という話になっている。
調べもせずに動画なんてこしらえて公開するワケなかろうもん。
実はこの動画を仕上げる前に、税務署へ直に本件について問い合わせを行っているのだ。 以下先方とのやりとりを記す。
葡萄を日本酒に漬けておく事は違法なのか?
違法である。
葡萄を漬けておいて、その葡萄だけを賞味して、日本酒自体は廃棄したとしても違法は違法である。
しかし日本酒に酢や塩を少々加えて用いたとしたならばゴニョゴニョ…と、何とも歯切れの悪い担当者の意見である。
そして、
葡萄を日本酒に漬けて、十日も置けば違法であるが、市中のBarみたいに、客前で葡萄と日本酒を合わせてシェイクしカクテルをこしらえ、それを即客に飲んでもらえば違法ではないと言えなくもない、という話である。
要は日本酒に漬けて置いておく時間を設ければ違法となるらしい(と判断するしかない)。
ちなみに私の動画では日本酒に浸して十日置く事にしているが、実際撮影の都合があるワケで、日本酒に葡萄を浸したら即取り出し、十日経過したテイで次の作業へ移っているワケだからそもそも法には抵触していないという事になる。
しかしこのように動画の舞台裏を書いてしまえば、世界観が崩壊してしまうからクリエイターとしては嫌なのであるヤレヤレ。
そして税務署担当官の話によれば、そもそも葡萄に限らす何らかに日本酒を加えれば即違法になるのだという。
そこでアレコレ疑問が浮かんできた私は、これを機会に他の例についても聞いてみる事にした。
塩鯨を日本酒に浸しながらつまむ肴は違法か?
即違法だ、と返答が来た。
塩鯨とは、その名の示す通り、鯨肉の塩漬けであるのだが、とても塩辛い。 だからこれを肴にする場合、日本酒とセットで出す事が多い。
私のなじみの酒場でも、塩鯨と注文すればグラスに注がれた日本酒と共に出される。 そして塩鯨をつまむ際は、日本酒を小皿にとり、そこへ塩鯨をしばらく浸して塩抜きをして、それを引き上げ口に入れるワケなのだが、
これが違法なのだという。
こんなもの、同じやり方で客に出している店をいくつも知っている。 じゃあそれらは皆、法を犯しながら商売をしているという事になるのか。
否、店は塩鯨と日本酒をセットにして客の前に出しているだけで、それを日本酒に浸しているのは客だから、たとえ店からそうやって楽しめ、と説明を受けたにも関わらず実際その行為を行っているのは客だから、客が法を犯しているという事になるのだろうか、何じゃそりゃ。
ちなみに塩鯨を日本酒へ浸しておく時間は数秒からせいぜい、家でやるにしても晩酌をはじめる数時間前程度だ。 なんでたった数秒であるにも関わらず違法と断言するのか? 葡萄の時と少し話が違うではないか。
からすみを造る際日本酒を用いるのは違法か?
違法だという。
からすみはボラの真子をまず塩漬けし、それを塩抜きしてから延々と干すのであるが、その干しはじめる前に、日本酒へ一週間ほど浸して風味づけをする手法がある。
それを行うと違法なのだという。
それならば津々浦々の和食料理人はこの時期、こぞって法に抵触している事になる。
辛味噌に日本酒を入れるのは違法か?
合法だという。
その理由は、「味噌を火にかける際アルコールは飛んでしまうであろうから」だそうで。
それなら万一完全に飛んでいなかったら一転違法なのかよ、と思いながら続いてこう質問を続けた。
私の作る辛味噌は、味噌を火にかけて練り、それを火からおろして人肌まで冷まし、それから発酵促進の為日本酒を加えるのであるが、これなら違法だろう!? と。
なんと、それでも合法なのだという。 その理由は、
味噌は飲めないから
だそうで。
それなら葡萄を十日間浸しておいた日本酒をゼリーに仕立てたら飲めないから合法という事になるだろう、いやなるに決まっている。
まとめ
このように、本法律についてはおかしな所が散見される。 そして担当官は確信的な部分は明言を極力避けたがる印象を受けた。
これまでの対話で数十分経過しているのでいくぶん打ち解けながら話もしたのだが、氏は決して勧めているワケではないが、上記の例全てにおいて、事前に日本酒へ塩や酢を入れて合わせておき、日本酒ではないものをこしらえ、それを使って上みたいに調理に活用すれば、法には抵触しないという意味合いの発言を残した。
そしてさらに衝撃発言が。
仮に葡萄を日本酒へ浸して十日置き、その後その作業者が「この葡萄を漬けておいた日本酒は」飲めない、と判断すれば合法で、飲めると判断すれば違法になるのだという…もはや意味不明。
ではからすみに使った日本酒はそもそも飲んでも生臭くて美味しくないハズだが、それを飲めると判断すれば違法で飲めないと判断すれば合法だという事になる。
おそらく全国の和食料理人達はこの際使用した酒を飲もうとはほとんど考えないハズなので、つまりからすみ造りに日本酒を使う事は一転、合法となるワケだ。
そして塩鯨の件については、供する店側から「鯨を浸しておいた酒がまた、独特のコクがあって旨いので召し上がってください」と促されるので、つまり店側がやはり法を犯している事になる。
以上のよう全てが無茶苦茶の話であるからつまり、違法か合法かの判断は作り手自身による、というのが導き出された答である事を記し筆を置く事にする。
ああ疲れた。
酒税法は面倒ですね。そもそもアレは大手酒造会社が金儲けできるように作られた法律(国産クラフトビールがやたら高いのは原材料費だけでなく酒税が上乗せさせられているため)だからある程度無理を通そうとしているように感じます。東北では家庭から押収した自家製どぶろくを警察官が呑んでいたという話を聞いたことがあります。要するに既得権益を守るための法律なんです。もちろん素晴らしい仕事をする酒造家さんはたくさんいらっしゃいますが、大会社のために国民の自由が奪われるのはどうかなぁと思ってしまいます。
面白すぎる!
こういうグレーゾーンをつつきまわすの好きです。
背徳感がまた酒を美味くする…といったらどこからか怒られそうですね