ボリュームに欠ける生牡蠣

忘年会シーズンである。
「オレさ、もう12月いっぱいいっぱいなんだよね。 だからこの日しか空いてない。 どうする? やる? オレん家で。」なんていう電話をもらったわけだが、なにもオマエだけがこの師走、忙しいわけではないぞ。 しかし民家での忘年会というのもたまにはよいか。
そのいっぱい2氏も、オイ同様小さな子供がいる。 子供が起きてる時間はとてもじゃないがゆっくり飲んでいられないからということで、22時集合である。
持参品は、オイ家に眠っていた妙な日本酒とクラシックラガー、それにもらったけれどテンで飲む気がしなくて放っておいたボジョレーヌーボー。 肴はチーズの盛り合わせとイカの塩辛、それにチャーシューを持っていこう。 あとは用意してくれているであろう。
道中、手書きの「カキ焼き」という看板がやけに目に付く。 「あれ、あそこのカキ小屋、まだ営業中でないの。」 一件のカキ小屋は、夜10時を回ろうとしているのに、まだ営業中であった。 寒空の中4、5人がカキを焼いて食ってる。 「そうだ、生牡蠣を買っていこう。」
小屋でカキを焼きながらガヤガヤ騒いでいた連中は、そこで働く人々であった。 営業が終わり、余ったカキを自分達で食っていたのだという。 「売ってくれ」というと、営業時間外にも関わらず、快く商売をしてくれたのである。 1kgで500円なり。 悪くない。
オイがいっぱい2家に到着したときはすでに宴会が始まっていたのであるが、とりあえず奥さんに挨拶をして、持参品を渡し、早速カキ割りに励むことにした。焼いてなんか食わない。 酒を飲みながら生でズルズルと食うわけである。 「奥さん、カキを割りたいのでスプーンかフォーク、もしくはバターナイフかカキをこじ開けることができる何かはありませんか?」と聞くと、木製のバターナイフしかないという。
木製のバターナイフ。 そりゃムリな話である。 しかしなんで家にスプーンとフォークがないのか。 でもまあ、奥さんを責めてもしょうがない。 じゃ、焼くか。 いやまて、オイをナメてもらっては困る。 どうしても生で食わねば気がすまない。 「ちょっと失礼します。」と、オイはカキの入った袋を手に、外へでる。 街灯の下、駐車場のブロック塀のカドに、牡蠣の殻をガンガンと打ち付けて割り始める。 強行手段である。 あいにくそれほど大きな音はたたないので近所迷惑にはなるハズはないと思うが、街灯の下、ブロック塀付近でゴソゴソやっているオイは間違いなく怪しい。 巡査が通りかかれば職務質問されること必至である。 でもスプーンが家に無いというから仕方がない。
人間その気になればなんでもできないことはない。 そう感じた人生初のブロック塀でのカキ割りであった。 上手くいった。 割ったカキを手に部屋に帰り、皆のもとへ。 「さあ、生牡蠣で一杯やろう!」 ひと仕事終えた後のオイは、ビールを飲みながら生牡蠣をズズズ、っとススル。 いつもより多少殻の破片が気になるが、そんなデリケートなことは言ってらんない。 ウマけりゃよい。
しかし、肝腎なその牡蠣であるが、身が薄っぺらい。 フレッシュではあるが小さい。 時期的には、もっとこうプックリとした、カキエキスがジュワっとしたたる、豊満なカキを期待していたにも関わらず、いまいちボリュームに欠ける。 せっかく苦労して割ったのに、これではなんだか報われないような気がした。
後日聞いた話によると、今年のカキはどれも身の入りが悪いのだとか。 無念。
カキ焼きはじめました

「鍋物はじめました」
近所の料理屋さんの玄関に、こんな張り紙がでる季節になった。 夏、中華料理やさんの軒先には「冷やし中華始めました。」という張り紙がされるが、「冷やし中華終わりました」という張り紙は見たことがない。 「始めました」と宣伝するならば、「終わりました」の報告もしたほうがよいではないか? こんな話を前に書いたが是非、近所の料理屋さんには「鍋物おわりました」の張り紙も貼っていただくよう説得したい。 いやどうでもよいか。
「カキ焼き始めました」というハタが、国道沿いに乱立する季節になった。 冬といえば、牡蠣である。 しかし「カキ焼き始めました」というお知らせはあっても、「カキ焼き終わりました」という期間終了をお知らせするハタなんてみたことはない。 しつこいか。
殻付きの牡蠣を買ってきて殻をあけ、レモンを豪快に絞り込み、ズズズとやるのはケッコウなものだが、いつもおんなじ食い方ばかりではツマラン。 今日はひとつ、焼いて食ってみようではないか。
まずは昆布をしばらく日本酒に浸しておいて、七輪で炭をおこす。 そしてその上に昆布をのせて、さらにその上にカキの身を並べる。 小ネギなんか散らしたりして、グツグツいいながら半熟程度に焼けたところをパクリ。 カキのミルキーな風味に日本酒と昆布の旨味が加わるものだから、マズいわけない(いわゆるひとつの松前焼)。
炙りアジ

その堂々とした体躯のアジをサッとおろして、その半身に鉄串を打ち込み、直火で炙ると、「バチバチバチッ」と油のはじける音がする。
およそ15秒ぐらい、猛烈な火の中で炙ると、キッチンに香ばしいにおいが充満してきて、よだれがたれる。
炙ったアジをぶつ切りにして、半身の姿のまま皿に盛り、右端から順番につまんでいくと、酒がとまらなくなる。 左端まで全部食い終えた頃には、ベロベロになっている。 ああ今日も、幸せな一日だった。
クジラ、ミンクかナガスか?

世の中には人を虜にする珍味がごまんとある。
昔々、鮭皮大名なる人物がいたそうだが、その大名曰く、「鮭の皮は薄くて少ない。 もっと鮭の皮を食いたい。 鮭の皮ならば丼で何杯でも食えるぞワシは。 フォッフォッフォ。」
というほど鮭の皮が好きだったのだそうな。
似たような話はほかにも沢山ありそうではあるが、とにかくある食べ物がすごく美味しくて、好きなので、もっと沢山食いたいという願望の結果、このような大げさな話になってくるわけだ。
オイの周囲にも、こんな人がいる。

オレはね、さんまのハラワタだったらね、丼3杯は食えるね。 もうね、サンマ本体はさておきワタを愛しているわけよ。 なんとかしてさ、サンマのハラワタを、フォアグラみたいに肥大させることはできないものかね。 丼3杯は食えるぞしかし。
なんて熱く語る。
(more…)野桜本店:激辛口わさび漬

「こだわりの焼酎を出す」という近頃ホントによく聞くたぐいのお店で飲んでいたときのこと。
「マスター、なんかもう一品つまみがホシイんスけど。」と、お願いしてみると、「板ワサ」をだしてくれた。 板わさとは、板かまぼこに、ワサビと醤油を添えたものである。
そのかまぼこ自体はホントにフツーの周りがピンク色をしたどこにでもある姿味だったわけで。 なんちゅうかもっとなんかこう、別の酒肴を出して欲しかったな、なんて考えながら板わさを2、3つまみながら焼酎を飲む。 と、ある瞬間、すごいことに気が付いた。 脇役であるはずのワサビが、ウマイのである。
ためしにワサビだけをつまんでちょっとナメてみると、ミントのような爽快な香りとともに、甘味があって、そのあと辛いけど、その辛さがヤな辛さじゃないというか、とにかくウマイわけだ。 それに気付いてからは、カマボコはほっといて、ワサビをつまみながら焼酎をグイグイ飲んだわけである。
「マスター、このワサビ美味しいですね。 なんでこんなに美味しいの? おかわりちょうだいよ。」と、ワサビのみを注文して、飲みまくった。 その山葵について、詳しく聞いてみると、なんでもとあるJAから取り寄せているらしくて、赤ワサビという種類なのだという。 普通一般的に売られている本わさびは、青ワサビなのだとか。 赤ワサビは青ワサビと比べても、別段美味しいのだとか。
どーりで。 結局この夜で、赤ワサビおよそ2本分ぐらいは食ったと思う。 そしてこの後ワサビに対する興奮が冷めず、毎日毎日、まーいにち(オイの子風)ワサビを食いたいと考えながら、オイは生きてきたわけである。 そして、ネットで見つけたのだワサビ屋さんを。
ワサビの本場、静岡にある野桜本店さんは、創業安政5年だという老舗のワサビやさん。 ここの、激辛口わさび漬という商品を買ってみたわけだ。 ワサビ漬けっつーと、よくお土産やさんで見かけたりもするが、安いので買いもする。 そしてあんまり美味しくなくて、8割がた残して冷蔵庫の奥に押しやられたのが半年ぶりにハッケンされて、その変わり果てた姿に愕然とするという程度(どんな程度か)の食い物だと思っていたところ、ここのはウマカッタ。 カラカッタ。
裏っかわを見てみると、原材料名が書いてあった。【わさび、酒かす、食塩、砂糖、からし粉】 ほう優秀ですね。 大体このような食品には、「青色6号」とかナントカいう、おそらく食べ物ではない妙な物質が見栄えを良くする為だけに、入れられたりされているのに、そんなものが入っていない。 高感度アップ。
小さいサイズを買ったもんで、一晩でなくなっちゃった。
野桜本店:激辛口わさび漬
http://www.nozakura.com/shop/shop/mode_goods/cate_1/no_60
戻り鰹なヤイトガツオ

「はじめには歯にたちかねる堅い魚」
という川柳がある。 句意は、
「初鰹の出始めは、庶民ではとても手が出ない」
という意味だ。 そんな初ガツオを高い金を出して買って食すのが江戸の粋であったとか。
このように、初夏の初鰹ばかりが注目される中、私は戻り鰹の旨さを知ることになる。
(more…)2匹の蟹

ワタリガニについてイヤなこと があったという話は前に書いた。
甲羅に酒を注ぎこんで、カニミソと具茶混ぜにしてススルというのは2匹カニがあるとき 限定の食べ方であるという話もした。 そして今回、2匹のワタリガニが手に入ったわけだ。
しかしひとつ問題がある。 それは、このワタリガニが小さいということである。 おそらくミソには期待できない。 「カパッ。」ほら、やっぱり。 ミソなんでどこにも入ってないじゃん。 これじゃ熱燗なんで入れてもさ、むなしいじゃん。
ということで、2匹のワタリガニの身だけを味わうことにしたわけであるが、 カニがこうも小さいと、むしるのにイライラしてくる。 いちいちパーツが小さいので、身をとりだすのに手間取るくせに、 その仕事に対する報酬といったら微々たる物。 ほとんど身なんてはいっていない。 なので、むしることをやめた。 しかし食べることはやめていない。 むしらずにどうやってカニを食べるのか? 不思議でしょう。 その方法は、カニの各パーツを指で圧縮し、つぶして、身をニュルニュルと搾り出すわけである。 けっこうでてくるものである。 カニが小さいので、殻が柔らかい。 だからこのようなマネができるわけだが、めんどくさくってこうでもしないと食ってらんない。 そうして指をカニまみれにして、 酒を飲み飲みしたものだから忙しくって、 グラスが汚れてゆっくりと飲めやしなかったという話。
厚切りアワビの刺身テンコ盛り

前エントリで書いた余談ではあるが、生まれた。 オメデト!
めでたい。 祝いじゃ! ということで、その新しく母親になったコのお父さんが張り切ったわけである。
メシ食ってけというので、お心遣い感謝いたしますということで、おじゃまする。 お父さんは、浮(うわ)ついている。 お父さん → ジイちゃんになったわけだ。 「オイ兄やん。 あんた酒は飲ますとね?(飲むんですか)」 オイが「ハイ、たしなみ程度舐めます。」と答えると、「ムワッハッハ」と、台所からドデカいアワビを数個ワシ掴みにして持ってきた。 「こいで、一杯、飲もで!」
オイは立派すぎるアワビを目の前にして興奮し、今晩の宴の席にたいする期待が高まる。 お父さんがアワビを調理する様を見守る。 お父さんは豪快なお方である。 アワビに塩をドバッと振り、手早く揉んで、水で洗い流し、殻から引き剥がし、肝と身を分けて、肝はその場でオイにそのまま食えと差し出し、オイは言われたとおり、その肝を口いっぱいにほうばる。 お父さんは、殻からはずされた巨大なアワビの身を、端から切っていく。 厚い。 「あんまり薄く切りきらんとやもんねハハハ」と、一番厚切りの身にして、少なくとも5ミリは幅のあるアワビの刺身に切っていく。 豪快。
そしてそのアワビを食卓に運び、その他のおごちそうが到着するまで、「一杯やろうで」ということになった。 今まで食べたことがないほど厚切りのアワビの身は、固かった。 固くて噛み切れないやなんて思いながら力いっぱい歯をたてると、もうギリギリ噛み切れないかというところで、「スコン」と切れる。 さらにかみ進むと、アワビ独特の磯の香りと甘味が広がる。 うーんうまい! と、味わいながら食べようとかまえていると、「早よ食え! まだアワビはあるとぞ!」とせかされる。 アワビを早く食えとせかされたことなど生まれて初めてであって、それならば遠慮なくと、酒をガブガブのみながら、まるでカマボコでもつまむかのように、いや、ポテトチップス並に頻繁に口に運んだのである。
「アワビば食べたら目によかしぇん。」とか、「アワビの殻は魔よけになるしぇんもってけ。」とか、お得情報も教えてくれながら、娘の現在にいたるまでの人生を、まずは娘が産婦人科で産声をあげたところから結婚、出産にいたるまで 詳細に午前2時まで7時間みっちりと語ってくれたのである。
なのでヨメの知人に関しては、お父さんの次ぐらいに詳しくなった。
パワーニンニク

大蒜(ニンニク)をまるごと、低温の油でじっくりと揚げただけ、という「パワーニンニク」なる料理を出す店がある。 というか、けっこうこんな店あるのかもしれない。
その店の場所ははっきりとわかるが、正式なお店の名前を知らない。 人呼んで、「おふくろさん」なるそのお店は、大繁盛店である。 なんでそのお店の名前をしらないのか? それは、そのお店にたどり着いたときには、いつもすでにできあがっているからである。
(more…)「強2」ウインナー

ウインナーは、ウマイ。
母ちゃんが、弁当のおかずに恒久的に入れていたから、一時期食傷したのではあるが、こんなに便利な食べ物というのもナカナカ無い。
飲んだ! つまみがない。 あ、冷蔵庫のなかにウインナーの袋発見。 何故かシルベスタ・スタローンを思い出しながら、 その2袋が一組になった少々開けにくい袋を切羽詰って歯で食い破り、茹でる。 蒸す。 炒める。 揚げる。 どのように調理してもウマイ。 がしかし、
オイがオススメする調理法というか食べ方は、強2ウインナーである。
「強2?」なんて疑問符が浮かぶことは当然なので、強2ウインナーの説明をさせていただきたいと、存ずる。 まずはそのウインナーの封を破り、ウインナーを取り出す。 そして、適当な器に移し、ご自宅の電子レンジでチンする のである。 それだけ。 でも、その電子レンジの出力を、「強めに設定」しなければならない。 強く、チン、するのである。
我が家のボロ電子レンジには、オートでチンする他、「強め」「弱め」の設定ができるようになっている。 そしてその強弱も、 2段階に調節できるようになっている。 その強弱の、「強2」で、チンするのである。
ブーン、ブーン、パチパチッなんていう音がする中、小窓から、中のウインナーの様子を見守る。 入れる前の、1.3倍ぐらいに、 ウインナーがふくれている。 ときたま、「ボシュ、ボシュー。」なんていう、ウインナーの皮が若干破裂する音がしたらしめたもんだ。
電子レンジのドアをオープンすると、入れる前とは打って変わって、はちきれんばかりの、いや、多少はちきれたムチムチの 汗ばむウインナー現れるハズである。 いやハズである。 それを、つかみ、マスタードとか、塩とか胡椒とか、レモンの絞り汁とかで むしゃぶりつくと、ウマイのなんの。 色んな酒の、つまみになるわけである。
さらに「強2×2ウインナー」というのもある。 電子レンジの設定を、強めに強めにチンするように指令し、 一度チンし終わっても、さらに同じ条件でチンするのである。 要は、チンを2回繰り返すのである。 そうすると、強2だけだとムチムチ豊満ボディーだったウインナーが、 干しすぎたスルメのように、皺シワのお婆ちゃん風になり、こう書くとなんだかかじりつきたくないが、いやはや なんの、皮がウマイ、パリパリのウインナーと、変身するのである。
ちなみにページトップ画像は、強2ウインナー。 ご家庭の電子レンジの機能と相談して、強めにチンしてお試しくださいまし。