パワーニンニク
大蒜(ニンニク)をまるごと、低温の油でじっくりと揚げただけ、という「パワーニンニク」なる料理を出す店がある。 というか、けっこうこんな店あるのかもしれない。
その店の場所ははっきりとわかるが、正式なお店の名前を知らない。 人呼んで、「おふくろさん」なるそのお店は、大繁盛店である。 なんでそのお店の名前をしらないのか? それは、そのお店にたどり着いたときには、いつもすでにできあがっているからである。
そのお店の大将は、ママである。 おばさんである。 しかも、元々単なる平凡ないち主婦で、ひょんな事から居酒屋さんをひらくことになったという異色の人物である。 供される料理はどれも家庭的で、アタタカイ。 そんなおふくろさんの、名物料理がこのパワーニンニクである。 ニンニクや揚げ油にこだわりながら、家庭で自作しても、もちろんよい酒肴になる。
揚げたてのニンニクを、ハシでほじくり返すと、ほっこりとしたニンニクの中身が出てくる。 ほうばると、栗とも似た、いやしかし遠くで辛味を感じるという、酒の肴にもってこいの一品なわけである。 ちなみに栗で、酒は飲みたくない。
こんなスタミナバツグンな料理があるこの「おふくろさん」の客層はというと、どう少なく見積もっても、50代が9割を占めている。 そんなお店で一番人気のメニューがパワーニンニクであるという事実を知ったオイは、ニッポンもまだ捨てたもんじゃないなと、思った。