香酒盃(こうしゅはい)
あるバーで飲んでいたときのこと、目の前の棚にズラリとディスプレイされているカップのひとつに目が止まった。 陶製品で、表面に大きくワタリガニが描かれている。 チューリップの花のようにモコッとしていて胴に筋が二本走る。
焼酎を注文したら、バーテンダーはその棚からカップをひとつ取ろうとした。 ワタリガニが選ばれることを望んだが、残念ながら、虹色のグラスを彼は手に取った。
「あのー、できればその、カニが描かれているグラスで飲んでみたいのですが・・・」とお願いしてみると、すんなり了承を得た。
近くで見ると、なおさらいいカップだ。 ズシリと重く、カニは細密に描かれており、中身の焼酎はどうでもよくなってきた。 すぐさま飲み干して、カップをなめるように見回した。
「それ、有田焼なんですよ」とバーテンダー。 大分前に有田陶器市で購入したものらしい。
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