親しらず
上の奥歯のそのまた奥にある歯茎に違和感を感じ始めて半月ばかり、まさかこれが親しらずが生えてくる予兆だったとは。
その後少しずつ親しらずは伸びてきて、下の歯茎に少し干渉するようになった。 気になりだしたらとことん気になるものであり、段々イリイリしてきたのでいっそ抜いてしまおうかと考えた。
が、親しらずを抜くのは痛く、大変だというどこからか入ってきた情報に頭は占領されており、抜こうか抜くまいか悩み始めてひと月ばかり。 その間も、親しらずの存在が気になり精神衛生上よろしくない。 でも抜くのは恐ろしい。
妙案が思いついた。
(more…)熱
三年前新宿での出来事。
出張二日目の朝、目を覚ますと体が鉛のように重たく、頭がマグマのように熱い……昨夜の酒が残っているのではないこれは、風邪だ風邪。 スマフォに手を伸ばし、近隣の病院を検索した。
地図を見ながら這うようにしてたどり着いたのは、かなり古びた、こう言っては申し訳ないが廃屋みたいな個人医院だった。
もちろん普段ならば別の所を探すが今はもう、生きているのがやっとであるほどツライ。 それにしても都会のど真ん中にこんな場所が存在しているなんてエモい。
薄く所々濁った、面が均一ではなくデコボコしているガラスの嵌められた、かすれた医院名が残る木の扉を引いて靴を脱いで「受付」と書かれた札の掛っている小窓へと歩いた。
そこには誰も居なかった。
見回しても患者もおらず、シンと静まり返っている。
「あのー、スイマセン。 診てもらいたいんのですが」
と声を投げればヒョイと顔を出したのは、白髪の痩せたお爺さんだった。
(more…)トカモツカワレルンデスカ
久しぶりに家内と二人で買い物に出かけた。
腹ごしらえの後いざ買い物へ。 この買い物に付き合わされるのが苦痛なので同行したくないのだが、ポーターとして駆り出されてしまう。
相変わらずひとつの買い物が長い。 物を買いに来たというよりも、店員さんとおしゃべりをしに来たというほうが妥当。 まだ長引きそうなのでここはひとつ、ちょっとその辺をお散歩に…。
セレクトショップの店頭に別注スニーカーとやらが置かれてあり、やけに発色が良かったのでつい近寄って手に取った。 ためつすがめつしていると、奥から店員さんが近づいてきた。
店員氏:「スニーカーとかも履かれるんですか?」
若い男性店員は爽やかな笑顔でこう尋ねながら、やや腰を落として両腕をハの字に開き指先をピンと伸ばして掌をこちらに向けて頭を20度向かって右に傾けている。
「ええまあ(履かなさそうに見えるのかな)」
(more…)タッチョーダイ
デパートの海産物売場でカラスミを物色していた時のこと。 贈り物にするのに型の良いのを探していたが、いかんせんカラスミであるがゆえサイズによって値段が違う。 大きいのもになればもう、手が出ない。 なんとか予算内で、型が良いものを……。
突如そこに現れたのは、買い物カゴを押しながら短パンにドクロの黒いTシャツを着たパンクなおじさん。 悩みこんでいるこちらをしり目に、さらりとカラスミを眺めてから「○◆×☆△■!」と言った。
(more…)とうさん
【カラス】空中戦【トンビ】
よく晴れた日、草っぱらに寝転がって京の町屋の写真集を眺めていた時の話。 少し目が疲れたので空を仰ぐと、突如視界にカラスが入ってきた。 続いてトンビがやってきた。 どうやら両者はケンカをしているらしい。
トンビのほうが体が大きく優勢な様子。 カラスは下から突き上げられそうになり、思わず体を反らす。 すると今度は背後に回られ上から押し付けられそうになる。 防戦一方の展開だ。
(more…)自作PC
あまカラ
『父の詫び状』向田 邦子
薩摩揚
土地の人たちは薩摩揚とはいわず、「つけ揚げ」という。 シッチャゲと少々行儀の悪い呼び方をする人もいた。
骨湯
(more…)煮魚を食べ終ると、残った骨や頭に熱湯をさし、汁を吸うのである。 私の体が弱かったせいもあって、滋養になるからと祖母はかならず私に飲ませた。 私は目をつぶって飲んでいた。 今はこんなことをする年寄りも少ないと思うが、昔の人間は塩気を捨てることを勿体ながり、祖母は小皿に残った醤油まで湯をさして飲んでいた。
【安い】有田陶器市【体験記】
子供たちを連れて有田陶器市へ向かった。
雨模様にも関わらず、あちこちに設けられている駐車場はいっぱいで、人があふれかえる会場。 道の両側にずらりと並ぶ陶器店に圧倒される。 2割引、3割引は当たり前で、中には「全品半額」との張り紙もみえる。 人それぞれに、陶器の入ったビニール袋を重たそうに提げて、次はこの店に、いやあっちに行ってみようと、まるでテーマパークにでもいるかのように、楽しんでいる様子がうかがえる。 中にはコンテナを三段積んだ台車を持ち込んで、その中に買った陶器を山のように積んで押している人もいた。
子供たち三人は、はぐれないよう手をつなぎ合いながらオイの後ろをだまってついてくる。 と、思いきや面白そうなものを見つけると皆でそこへ飛んでいってしまうので目が離せない。 陶器は見たいし、でも子供からは目が離せないしで、忙しいったらありゃしない。 こうなることは楽に予想できたから、一人で来ようかとも考えたのだが、子供たちに陶器市の経験をさせてやりたかったのだ。
今回のお目当ては、いや今回もと言ったほうが正しいが、酒器と肴を盛り付けるための器である。 子供たちがまだ小さいので、普段使いの器はシンプルで形の統一されたものを使わざるをえないが、一人でゆっくり酒を飲んだり、来客時に格好をつけるための器というのも必要なのだ。
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