NEIGHBORHOODの壁紙
たまに覗いているhoneyee.com内滝沢氏自身のブログでNEIGHBORHOODのサイトリニューアルを知る。
カッコイイサイトだなあ。 トップの画像は壁紙としてサイト内で配布しているもの。 何してもクール。
刈上げと日本人
カリアゲ。 小さい頃近所に一人は青々と激しい刈り上げをしている子がいたものだが、そもそも刈り上げとはなんなのか? なぜカリアゲなければならないのか? ある本に興味深いことが書かれていた。
日本では明治時代の文明開化の頃「西洋刈込所」や「英仏髪鋏所」などという名前の散髪屋が現れ始めた。 名前の通り、西洋人風な髪型にカットしてくれるのであろう。 しかし、
西洋人の髪というのは後頭部において、左右の耳の穴を結ぶあたりの高さで一直線に終わっている。 しかし日本人は襟足が長い。 西洋人と比べるならば3~4cm程長い。 この余分な襟足をどうすれば西洋人に近づけることができるか? そうだ、刈り上げてしまえ。
と、いうことになったのであろうと、その著者は推測している。
なるほど。 大分前の話になるが「タイタニックのディカプリオ」を見て、なんか襟足が短いと言うか逆富士山型ではなく、スパッと終わっているよなー。 と思っていた次第。
危篤?
「今回ばかりはもうダメかもわからんよ。」
と母から連絡があった。 じーちゃんだ。
じーちゃんは93歳でついこの前ビールを一緒に飲んだばかりである。
そのじーちゃんが病院に運ばれ、今回ばかりはヤバいらしい。
もう聞き飽きた。 これまでも、じーちゃんは幾度となく危篤、危ないと言われ続けており、初めのうちは真に受けてあわてたりしたが、なんてことはない、面会するとピンピンしているではないか。 周囲が大げさすぎるのだ。 すこし風邪をひいたりするとすぐ危ないと言われてしまうのだ。
そりゃ93歳だし、体のあちこちがどうかあったりもするが、本人が元気だと言うんだから。
この前会った時も朝から晩までカマをといでいたし、話をしてもしっかりしていいた。 だから今回も大丈夫だろうと安心して病院へ向かう。
「おー、オイか。」
とじーちゃんは迎えた。 ホラやっぱり危なくない。 母によると、ここ何日か食事を残すので、もしかしたらと思って…という話だ。 あーめんどくさ。
結論。 じーちゃんはまだ大丈夫、以上。
市場を案内しアゲマキ購入
晩酌中に携帯が鳴る。
「おーオイ、元気?」と古い友人の声。 かなり久しぶり。
酒の勢いも手伝い、つい話がはずんでしまったが、オイは今晩酌中なのだ。 オマエと長々話しているヒマはない。 「じゃ、またね」と切ろうとすると「うーん、長崎に行こうと思うんだけど、なかなか時間がなくてねぇ、じゃたまいつの日か。」 と捨て台詞を吐いて、彼は携帯を切った。
あくる日の早朝、携帯が鳴る。 昨晩の男からだ。 「あーオイ、おはよ。 あのね、もう時間がないんだよ、飛行機とれたんで、今からそっちに行くよ、じゃ」一方的に切られた。
昨晩「なかなか時間がなくてね」と話したばかりなのに何を当然血迷ったのか、これから長崎に来るそうだ。 休日だしゆっくりしたいし、子供らと遊ぶ予定もあるのに何でまた唐突に…。
彼は東北在住。 長崎空港に到着したと連絡があったので迎えにいく。 車中の話では、仕事が忙しくてなかなか休みがとれないためにポッと空いた時間を有効活用するそうだ。 この前も突如富士の麓にある隠れたお宿に泊まりにいったのだとか。
「長崎で、なんか面白い所ない?」
うーん、グラバー園とかそういうこと? 「じゃなくて」 そうか……………。 オイにとって、市場は遊び場だけどねえ。 面白いと思うけどねえ。 「じゃ、その市場を案内してよ」という。
魚市場は早朝に行かねば面白くないし、今の時間だったら長崎市中心部にある築町市場なんか面白いと思うけど。 っていうかオイはそこが好き。 どうっすかね。 今晩はどうせ飲みに行くんだよね? 築町近辺にはいい飲み屋があるもんで、そこもせっかくだから案内しておこうか。
梅雨で魚が少ないのだろうか、いまいちいつもの活気が感じられないような気がしたが、もう10時だし、こんなもんか。 「どーですかキミ、からすみとかも売ってますよ。 東北と比べて、どーっすか。 ほらそこ、鯨カツとかも売ってますよ。」と鯨カツを購入し、築町を歩きながら案内する。
「そこの海産物やさんはね、イーカツブシ売ってるけどいかが? ほかにもイロイロあるよ。 ほーら、この胡麻ドレがまたウマイんだ娘が好きでさ。」 と、ついうっかり、濃口醤油とドレッシング、削り節を購入してしまう。
「ここをまっすぐ行くとね、魚屋さんがいくつかあるんだよ。 ほーらイワシが沢山並んでいる…うーん、キレイなイワシだね、じゃ、これください。」イワシを購入した。
「その角を曲がるとまた魚屋さんがあるんだよ。 ほーら、サザエとかも売ってるし、オ、好物のアゲマキが売ってやがる、えーいしょうがない、一山ください。」アゲマキを2kg購入。
「いやーきみ、どうだね長崎の市場は。 何、面白いも何も、オイの買い物に付き合わされただけじゃないかだって! うん、そうとも言えなくもない。」
オイ家にてアゲマキをバター焼きにして、昼間っから、東北人と飲んだ。 夕方から寿司屋に行って、その後銅座で朝まで飲んだ。 まあまあ楽しかった。
ビビリ王
彼は飛行機に乗る前にウイスキーのダブルを一気する。
そして手当たり次第に雑誌を買い込み、機内へ。
シートベルトを着用したあと、キョロキョロしたり、雑誌を手に取りパラパラめくり、置いて、また別の雑誌をパラパラ…。
「雑誌の向き、逆だよね」と教えてやるとあわてふためく。
離陸前でエンジンの回転数が上がると「もう俺の人生シューリョー」という顔をしている。
このとき耳元で「実は飛行機がどうして空を飛べるのかは実際のところよくわかっていないという話もあるらしいよ」とささやくと、浅黒い顔が一瞬で絹ごし豆腐のようになった。
飛行機が滑走路を突っぱしり、離陸した直後はまさに座席にへばりついている。 まるで彼だけが周囲の数倍の重力を受けていて、もうすこしで「プチッ」とつぶれてなくなってしまいそうなぐらいへばりついている。
機内サービスがはじまる頃には落ち着きを取り戻し、いつものように99.8%はウソだと自ら豪語するくだらない話を延々と語り始める。
「この前飛行機に乗ったときにさ、添乗員さんが新人だったのよ、そんでさ、いろいろとぎこちないわけ。」
「おの、おのみ物はな、何にしますか?」とか頻繁にかんだりして。
「んでさ、オレの横に座っている客に飲み物を尋ねる際に「お飲み物は何になさるか?」と言ってしまったわけ。 そしたらその客もよくわかっているヤツでとっさに「かたじけのうござる」とあわせたわけよ。 それを横で見てて思わずフイてしまったっちゅーわけよ。
らしい。 似た話をテレビで見たし、そのもっと前に「読むクスリ」で読んだ。 やっぱりこいつ、ハッタリ野郎。
着陸態勢に入る頃には離陸時同様の状態になる。
そんな彼とこの前ビール飲んでたら、血液型の話になった。 このテの話はあまり好きではないので取り上げないが、血液型を非常に重視するそうだ。 その流れから手相、人相と話は広がり、オイと彼共通の人物を例に、彼は目元がこうで、口元がこうだから受難の相である。 とかもっともらしく言う。
どうしてそう言いきれるのかというと、昔そのテの先生の付き人をやっていたのだとか。 先生は占い師であり、霊能者であり、家具職人なのだとか。 先生はその驚くべき能力からあちこちお呼びがかかる多忙な人で、一緒にいるうちに自分も色々とわかるようになったと彼は言う。
ある日、ある裕福な家庭の人形にトリツイタ悪霊をお祓いするために、先生、その他テレビで知られる有名な霊能者一同があつめられたそうな。 しかしその悪霊は強力であり、名だたる霊能者では歯が立たなかった中、先生だけは対抗する力を持っており、結局先生がお祓いを済ませたのだとか。 謝礼として莫大なお金を手に入れ、彼もそのおこぼれを頂戴したらしい。
彼は先生の付き人であるから悪魔と対する際もその場におり、その人形も見ている。 ドアを開けるとそこは異様に重たい空気が流れ、真ん中に置かれた人形には結界が張り巡らされている。 人形自体から発せられる威圧感に彼はたじろいだが、先生は立ち向かい、勝った。
家の主人に感謝され、謝礼とともに何故かバナナをもらい、そのバナナを手にした彼が家を出た瞬間、そのバナナはボロボロと灰になったのだとか。
「どう? すごい話でしょ」と彼は言うがどうせハッタリだし、そもそもオイはそのテの世界を一切合財信じてはいない。 素直にそう伝えると、彼は少しつまらなそうに口を歪めた。
久しぶりに彼に会うと、やけにやつれている。 聞いてみると、眠れないらしい。 なんでも、ウトウトしてくると目の前に斧を持った大男が現れ、追いかけてくるそうだ。 必死で逃げるが追い詰められ、まさに斧を振り上げられたところで目が覚めるという状態がもう何日も続いているのだとか。 午前2時と、5時に必ず目が覚めるらしい。
こうなったのは、オイに悪魔の話をした日の夜からであり、オイに何ともないかと聞いてくるが、なんともあるワケがない。 逆に寝つきがよい。 食事もうまい、健康そのものである。
これからは聞く人が喜ぶ素敵な話をすればすればその症状は改善されるんでないの、といかにも物知り顔で助言した。
エコ?
はじめはポイント目当てのマイバッグ持参だった嫁は、最近マジでエコに目覚めたようだ。 小麦その他の値段が上がったことも全部環境破壊によるものだと解釈したらしく、環境破壊は敵そのものだと息巻く。
息巻いたついでに最近あったムカツク事シリーズをベラベラとじゃべりまくる。
保育園で娘の服がないと思ったら別の園児がそれを着ていて、さらに襟首にその子の名前まで書いてあるいったいどーなってんの!とか、
「軽くパーマかけてくださいと言ったらグリグリにかけやがったヤツは!」とか、
いつものようにマイバッグ持参で買い物をしたらその日は少し大量に買いすぎてマイバッグに全部入りきれなかったらしく、仕方がないので「ビニール袋をひとつください。」とレジさんに伝えたら快くくれたのはいいが、その日のエコに対するポイントは抹消された、なんでか、だって入りきれなかったんだしじゃあどうすればよいの? キーッとかいう。
そんなにビニール袋を使うことが悪いのならば、肉や魚を買ったときにいちいち透明なビニール袋に入れてくれるあのサービスはやめれ、それこそエコではない、という。 それはいえてるかもしれない。
今度美味しいものでも食べに連れていってやろーっと。
ニンニク皮むき器
包丁、まな板、オタマ等、基本的な調理道具以外は極力使用しないように心がけている。 買えばどんどん増えて、キリがない。 そう毎日使うものでもないし、あまりいい仕事をしないからだ。
しかし、このニンニク皮むき器は今までのキッチンアイテムとはレベルが違う。 すごく便利なのだ。
およそ半年前ぐらいからホームセンターで売られているのを知っていて、気にはなっていたのだが買わずにいた。 なぜならば、くだらなそうだからだ。 白くて薄っぺらいゴムホースを切っただけのようなこの姿を信用できなかったからだ。 こんなヘナチョコに、あの強情な、ニンニクの皮をむくことができるわけがない。 こんなもん、500円ちょっと出して買って、家に帰りさっそく使用してみて、やっぱり使えずに金輪際永遠にキッチンの引き出しの奥にしまわれるか、もしくは絶叫しながら窓からおもいきり投げ捨てられるのがオチだ、なんて思っていた。
それでも半年間もずっと頭から離れなかったのは、ニンニクの皮をむくのがとても面倒だからだ。 なにかと便利なために常備しているニンニクの醤漬けを作るには、一度に山のようなニンニクを用意して、それをバラし、ひとつひとつチマチマと爪を立てて皮をむかねばならない。 割合簡単にむけるものもあれば、いくらやってもむけないものもある。 どっちにしろ指がだんだんと疲れてくることは確かで、あげくの果てには深爪状態になりヒリヒリしたりもする。
この問題を一気に解決してくれるのが、この白いシリコンゴムの菅なのだ。 バラしたニンニクのヘタを切り、ゴム管に入れるそして手のひらで若干圧をかけながらコロコロと転がすと「ワキャ」とキレイに皮がむける。 ツルリとしたニンニクがゴム管から出てくる。 この光景をはじめて目の当たりにした時はおもわずマジで「おおぉー」と感嘆の声をあげてしまった。 あまりにも効率的でかつ作業が早いのだ。
次々にニンニクの粒を入れてコロコロやる。 おもしろいように皮がむける。 いっぺんに3粒入れて強引にコロコロやってもむける。 ヘタをとらずにそのまま入れてコロコロやってもきれいにむける。 興奮せざるを得ない。
しかしこのニンニクむき器にはたったひとつ弱点があり、そうなるとまったく機能できなくなる。 それは水だ。 ゴム管の内部に水分があると、うまく摩擦力が生み出されずに、皮がむけない。 コロコロやりすぎてニンニクを潰してしまい、ニンニクの汁が内部に漏れてもそうなる。 なのでゴム管の内部は常に乾燥状態でなければならない。 ぬれていると、腹が立つほど皮がむけない。
その点さえ注意しておけば、これほど便利な道具はないと思われる。
クリスマス、餅つき、そして地頭鶏
今年もイブがやってきた、大忙しだ。 近頃は大体このように過ごしているわけだが、もはやオイは料理長と勝手に呼ばれているわけで、大勢の食事を、ほぼひとりで用意しなければならないという境遇にある。 オイ家は子供が3人いるし、その他の家族は毎年どこかで子供が生まれているのでだんだんと人が増えてきている。 少子化なんてハッタリのようだ。
今年中核をなすメニューはローストチキン、ピザ、ローストビーフだった。 クリスマス会にこれらの料理があれば、あとはチョコチョコ持ち寄ったものをつまめば十分である。
オイは夕方にはローストチキンの仕込みを始めなければいけなかったわけだが、なんとこの日に餅つきをするので手伝えとかいう緊急の予定を勝手に組み込まれており、マジかとゴネつつも、どうせやらなければならないのならばサッサト済ませてローストチキンに取り掛かりたかったので、半ば張り切って餅つき現場に自転車で向かった。
「あー、こんちゃーッス」と到着した時にはすでに石ウスを男たちが取り囲んでおり、ペッタンペッタンはじめていた。 その横ではカンコロモチ作りに励む婆さんたち。 暮のほほえましい光景だなーっとボーっとしているわけにはいかない。 さっそく石うすの前に向かう。
おそらく中学生と思われる少年が、へっぴり腰でペチャ、ペチャ…と餅をついており、周囲のおじさんから野次られたり、顔を赤らめたり、石うすの横っちょに杵(きね)をぶつけてしまい、杵のくずが餅にまぎれこんだとかでやはり野次られたりしている。
その少年と向かい合わせになり、一緒に餅をついている人物は小柄ながら腰がはいった杵さばきでいかにも熟練者風で、杵を振り下ろすスピードが違う。 2人は石うすをはさんで向かい合い、餅を交互についているわけだがリズムが合わず、度々中断することになる。 これでは餅をついているのかジャレているのかよくわからない。
少年が皆から野次られすぎて顔面がライチのように真っ赤になってフリーズしたのをキッカケに、オイと交代することになった。 餅覚悟しろ、オイはモロつくよ、さっきの少年とは違うぞ、つきまくるよ、という気構えだ。
熟練者を敬い、熟練者のリズムにあわせて杵を振り下ろす。 一瞬の遅れが命取りとなり、杵どおしをぶつけてしまった日にゃ、また周囲から罵詈雑言が浴びせかけられるという状況だ。 熟練者はまるで自分の餅つきテクニックを誇示するかのように、腰を入れ、だんだんと杵を振り下ろすスピードをあげているように思われる。 「さあ、オイ、どんどん、ついて、こい、おくれ、んなよっ!!」という風に。
こっちは助っ人で呼ばれてわざわざ来てやったんだ、ホントはクリスマス会の準備を家でゆっくり集中してやってたかったんだかんな、たかが餅つきごときで、失態をさらすわけにはいけねえ、と妙な意地が芽生えてきており、杵を振り下ろすたびになんだか祭りモードになってきて、版画を彫っている最中の棟方志功のように夢中で杵を振りかざした。
餅つきというものは、石うすの中のもち米をただ単に杵でついておればよい、という単純なものではない。 ついているスキを見計らって、巧みに手を餅に差し伸べ、途中でまとめてやらねばならない(これを何というのだろうか)。 この役割を担う人が一人必要なのだが、いない。 なのでしばらく餅をついたら手を休め、手を水で濡らし、自分たちで餅をまとめ、また杵を持ち、つきはじめねばならない。 非常に能率的でない。
以前はこの役の上手な人物がいたらしいのだが、ある年運悪く杵で手をグシャリとやられたらしく、それ以来その役を降りたのだという……。
とにかく餅をつき終わり、帰宅して、ローストチキンの準備にとりかかった。 ていうかもう17時じゃないかマズい、皆が来る。 大急ぎで丸鳥の下処理をし、ローストする前にただひたすら油を回しかけるという地味な作業を延々と繰り返す。 美しく仕上げるためにはこれを入念に行わねばならない。 油の温度が高いとすぐに真っ黒になってしまう。
まだ来てほしくないなと思っていたら来てしまうのが客で、ゾロゾロとあがりこんでくる。 「あれ、まだメシできてないの?」と無責任な態度をとる無礼者がいる。 鶏に油をかけつつ顔をのぞかせ「わかっとるっちゃー、もうちょいまっとけボゲーッ」と半ギレ状態になる。
皮がこんがりいい色になった鶏をオーブンにいれて、つぎはピザの生地伸ばしをはじめる。 ピザは近所の住人にも配達してあげるという約束を嫁が勝手にしてしまっているので大量に作らねばならない。 なので今日はオーブンがフル稼働なのだ。 ということは随時焼け具合をチェックしなければいけないのでオイはキッチンに閉じこもりっきりとなる。 さらにやれ氷がないとか、小皿をよこせとかいう注文にも迅速に対応せねばならないし。
焼きあがったローストチキンを丸のままテーブルにのせると「オォー」という歓声があがる。 クリスマスといえばやはりこれだ。 しかし子供たちは誰かがもってきたケンチキに手を伸ばす。 「あーっチョイマテ。 まずは自家製ローストチキンから食ってくだせえ。 せっかく油ジャジャーかけて作ったんだから」 宴の開始だ。
オイはピザを一枚ずつ焼き上げなければならない。 ピザの上にイロイロのせて、オーブンに入れる。 焼けるのを待つ間、次のピザのセットをして……という風に忙しい。 時折アサリバターを作れだとかお湯割りひとつとかいう注文にも対応しなければならない。 忙しいがオイ自身も宴を楽しみたい。 キッチンでキンキンに冷えたプレミアムモルツを開けて飲りはじめる。
肴は冷凍庫から見つけ出したエダマメ。 他に目についたものはない。 イカがあればミサイル焼きにでもするのだがない。 うーんエダマメだけでは気持ちよくないな、なんかないかなんかないか…あった。 真空パックされた宮崎地頭鶏!
地頭鶏とは「じとっこ」と読む宮崎特産の鶏で、パッケージには例のどげんかせんばいかんの元軍団知事のイラストが描かれたシールが貼られてある。 一口大になっており炭火で焼かれている。 適度な歯ごたえとにじみ出る肉汁がお気に入りで、何袋か買いだめしておいたものである。 レンジでチンすればすぐに食べられるが、あいにくピザを焼いているので使用できない。 それならば、ガスコンロに網をのせ、直火で炙って手っ取り早く食ってやろうじゃないか、という図がトップの写真。 延々とピザを焼きながら、ビールを飲みつつ、地頭鶏をつまんだのだった。 酒にも焼酎にも合う。
ブログ覚えたてのおっさん
彼は自称チョイワル親父である。
彼は自称食通である。
彼は自称本物のわかる男である。
彼は萩原健二をこよなく愛す男である。
そして彼は、味オンチである。
彼(以下ショーケン)が最近ハマている事、それはブログである。 流行の最先端をゆくブログなのである。 チョイワルで食通で本物がわかり、萩原健二を愛する男であるからネタは事欠かないわけで、モットーは『ブログを毎日更新すること』らしい。
ブログの面白さを覚えてからというもの、文章を書くことの面白さ、写真を撮ることの妙味を覚え、寝る間を惜しんでブログの更新に励んでいるらしい。
「オイってブログ持ってないの? 何系? アドレス教えて? リンクして? SEP対策にもなるんだよ?」
SEP対策っ!?とにかくワケがわからんので関わりたくない。 とかなんとかいいながら、オイはこのテの面白みのあるヒトが好きで、観察したくなる。 もう少し話を聞いてみようか。
「ブログのテーマは何なんですか?」と聞いてみると
「テーマなどないねん。 自分の書きたいことを書くだけやねんねんか。 そしたらアスセスがあがってきて、もはや40アクセスやー!」とかいう。
すでに名刺にサイトのアドレスが刷り込まれており、渡される。 数日後、オイは飲んだ勢いでそのブログを尋ねてみることにした。
いきなりショーケンの自己紹介というか、生い立ちからはじまる。 子供のころの白黒写真をスキャナで読み取って載せている。 食い物屋レビューというカテゴリがあり、彼お気に入りのラーメン(3回食ったらヤミツキとかいう例のラーメン)を超接写でデカデカと載せている。 「世界の皆さんはじめまして!」というサブタイトルからして、このブログは全世界を視野に入れながら日々更新を続けているらしい。 よくわかったのでページを閉じる。
後日、ショーケン氏とバーで会談したときにブログを見たかどうかを聞かれ、正直に見た、面白かった、と、伝えた。 すると彼は、オイがブログを訪れたことが手に取るようにわかったのだという。 なんでか? それはアクセス解析を覚えたからであるそうだ。 「この前、来てたな」と。
彼はルイ・ヴィトンからVAIOのTYPE Sを取り出した。 電源を入れ、自分のブログをひらく。 そして、アクセス解析のページへむかう。 「ほら、ここで…誰がきたか…わかるんや。 そしてココから……アレ? おかしー…あ、ここや。 ココでどんだけどのページが見られたかわかるんやー」と、いちいち説明される。 彼、パソコンの挙動、共におかしい。
他人のブログの、面白くもなんともないアクセス解析を、延々と見せ続けられながら、夜は更けていくのだった。
オヤジ、ズブロッカもう一杯ちょうだい。
海鮮丼のハズが……
海鮮丼が美味しい店があるという記事を読んで、早くも午前中からその店にいきたくてウズウズしていた。
こんな日に限ってお誘いの声はかかるもので、一緒にメシでも行かないかと誘われる。 断れる場合とそうでない場合があるのが社会であり、今回の場合断ることができなかった。 まあ、しゃあない。 海鮮丼は明日に持ち越すか。
メシをどこに食べにいくのかはまだ決まっていないらしい。 とりあえず、3人はタクシーに乗り込みあっち方面へ向かう。
「メシってどっかなんかイイ店でも見つけたんスか?」
と聞いてみると「うーん、今日は遅いからどっかで軽く済ませて帰ろうや」という。 どっかで軽く済ませる程度の食事をするのに人を誘わんでもよいのではないか。 悩みでも聞いてほしいのか。 yesと言ったオイは失敗だったのではないか、という思いが頭をよぎる。 そもそも「軽く済ませて帰ろうや」の「軽く」とは一体どの程度軽いのか? 生ビールを一杯飲んで、それからうどんでも食って帰るのか、それとも焼酎2、3杯飲るのも「軽く」の範ちゅうに入るのか。
そもそも「一緒にメシでも行かないか」と一口に言っても、それは言う人によって若干意味合いが異なる。 本当にメシだけを食いにいく人もいれば「一杯やろう、てか飲むぞ」メシ=飲むという意味合いの人もいる。 いや少なくともオイの周りはそうだ。 今横にいる人物のいうメシは「酒ぬきで晩御飯を食べに行こう」という意味に違いない。
「うーんどの辺がいいかなーどっかいい店しらない?」彼はいいだしっぺにも関わらずオイにフル。 「実は旨い海鮮丼を食べさせてくれる店があるんですよ」と強引に都合のよい展開にもっていこうと考えたが、ここからは遠い。 「うーん、その辺でいいんじゃないですか?」と答えるのが精一杯である。
「んじゃーそこに入るか」と指差す方向には、何の変哲もない一軒のソバ屋があった。 店から醸し出されるオーラが「ウチはマズいですよ」と訴えかけてくる。 でもオイに選択の余地はないていうかもはやどうでもいい。 早く帰りたい。
早く店に入ればいいものの、店の前に並べられたサンプルを見ながらどれを食べようか悩んでいる。 「どれを選んだっていっしょだよ、まあ早く入ろうや」とココまで出たのを飲み込む。 ようやく店内に入る。 ダルそうなオバチャンに奥へと案内される。
「さぁー何を食べようかな、鍋焼きうどんかなそれとも天ソバかな…」と言いだしっぺ氏は大いに悩む。 オイは……しれーっと生ビールを注文する。 「あーオイくん、ビール飲むの、じゃ、俺らも一杯注文しようか。 それで明日も早いしソバでも食って帰ろうや」という。
「ビール飲むならばつまみがいるよね。 オイくん、何か注文しないの?」というので「つまみも何も、ビール一杯飲んでそば食って帰るんでしょう。 ビール一杯飲むのにツマミは要りません、一気です一気」とココまで出たが「じゃ、枝豆でも頼みますか」と収める。
「オイくんが枝豆ならば私は冷奴。 で、あなたは?」ともう一人に注文を促す。 彼はモツ煮込みを注文した。
しばらくして3杯の生ビールが運ばれてきた。 続いてボロボロの湿ったザルに入った枝豆が届いた。 マズそうである。 「ささ、枝豆でも食べましょうよ」とオイが言うと「それはオイくんが注文したのでしょう。 オイくんが食いなさい。 冷奴はやらんよ」とかいいだしっぺ氏は言う。 それを聞いてあきれる。 枝豆、冷奴、モツ煮込みを皆でつついて生をグッと飲み干すのかと思えば、注文したものは各自で処理しろ、ということらしい。 こんな人物と食事をしたことは今まで一度もない。 なんてヤツだ、アッタマきた。 ビール一杯飲むのに枝豆が一盛りも要るか。 ビール一杯飲むのにモツ煮込みが一皿要るか。
今日ほど枝豆がマズイと思ったことはない。 こんなに早く枝豆を食べたことはない。 早くソバ食って帰ろうと、鴨南そばを注文し、ビールを一気飲みし、枝豆を一生懸命口に運んだ。
モツ煮込み氏はひとりでチョボチョボとそれをつつきながらおそらく発泡酒であろう生ビールをちびりちびりとやってる。 いいだしっぺ氏のことは知らない。 この場は全部オイのおごりでいいから一刻も早く店をでて家に帰りたいなという思いで鴨の細切れの浮かんだノビノビのソバを一気にすすりこんだ。 そして残る二人がソバを食べきるのを待ち「さあ、帰りましょうか」というと食後の一服をしたいといいだしっぺ氏はいう。 どこまで身勝手なヤツなんだ。 モツ氏とオイは彼が一服し終えるまで待つ。
早く吸い終ればいいのにやれ仮面ライダーを見て育った子は攻撃的になるだの、ウルトラマンを見て育った子はそうでなくなるだの面白くもない話を酒を飲んでもいないのにダラダラと語りはじめ、城が好きだとか、戦闘機が好きだとかどうとかこうとか言ってる途中で、モツ氏がヤケに「戦闘機」という言葉に反応したのがその眉毛のつりあがり具合でわかった。
戦闘機というキーワードに異常な反応をみせたモツ氏は「わたしはゼロ戦が好きなのです」とボソリと、まるで相手の知識の深さを測るかのようにつぶやいた。 それを聞いたいいだしっぺは「ゼロ戦ならどこそこに展示してあるよ」と答えた。 「うほっ、お詳しいですね。 もしかして結構好きなんですか?」とモツ氏がニシャーと笑う。 「好きもなにも、戦闘機のプラモデル作らせたらボクにはかなわないよ。 エアブラシはどこのメーカーのがいいか知ってるかい? 戦艦も好きだよボクは」といいだしっぺ。 会話に花が咲いた瞬間である。 それから数十分にわたり戦闘機についての対話がはじまり、
そうな気がしたので、オイは焦り「じゃボクは帰ります金は払っておきます」と言い席をたとうとすると、いいだしっぺは「ワリカンでいきましょうや」と言う。 あたりまえだがや、ダレがお前のメシ代をおごるか、バーカと思いつつも、にこやかな笑みを浮かべながら彼らをおいてソバ屋を去ったのだったのであった。