カメノテ
「あそこのお婆さんは近頃ボケてきた」
そんな話を昨年あたりから耳にしていた。 先日お婆さんと道で会い、「オイくん、煮干いるね?」と聞かれたので「喜んで!」と答えたら、家に入ったっきり出てこなくなった。
心配になり家の中を覗いてみると、お婆さんは何事もなかったかのように座布団に腰をおろしお茶をススッていた。 煮干の件は、忘れているのだろう。
この人には随分世話になった。 季節の野菜をもらったり、栽培法を教えてもらったり、田舎料理を伝授してもらったり、子供たちをかわいがってくれたり・・・。
近々デイサービスセンターに入所することが決まっているそうで、そうなると、会うことも難しくなりそうだ。
(more…)梅エキス
今年は40キロの梅を仕込んだ。 家族総出でヘタをとり、塩漬けまでを済ませた。 子供たちにも手伝ってもらうが、もうなれたもので、いちいち指示を出さなくてもテキパキと作業をこなしてゆく。
実は昨年末から、この時期を楽しみにしていた。 なぜならば「梅エキス」を作ってみたかったからである。
(more…)植物の力
昨年から野菜作りに励んでいる。
家族で力を合わせて庭に小さな畑を作り、エダマメやゴーヤ、トマトにナスを、近所の熟練者に指導してもらいながら育てている。 楽しい。
唐突だが、植物には目があるらしい。
南アメリカ原産のスベリヒユという草は、赤と緑を見分ける。 この植物、茎は地をはって伸び、先のほうで立ち上がるが、赤と緑のブロックをそれぞれ近くに置いたところ、赤のブロックはおかまいなしでその上を覆うように這う。
ところが、緑のブロックは避けて這う。 どうしてこのようなことができるかというと、植物は光の波長を感知する色素を持っているからだ。 どうしてこのようなメカニズムを備えたのかというと、葉が重なったりして生育に影響がでないよう、緑を避け合っているのだとか。 建物の壁にからまるツタもよく見ればびっしりと茂っているようでいて、葉は重なり合うことなく、ちょうど良い間隔を保っている。
(more…)妙な話
家に遊びに来ては何冊か本を借りていき、その後返そうとしない人が家内の友人にいる。 別に悪気があってそうしているのではなく、天然な人なので、借りていることがどこかに飛んでいってしまうのだろう。
催促をすると「あっそうだった、ゴメン、今度持ってくるから」と必ず言うが、そのためしがない。 第一そこまで飛んでしまうのならば、いくら本を読んだところで同じだろうに、といつも本人に言いきかせている。
どこか憎めない人物で、かなり話が面白い。 酒が入ると輪をかけて面白くなるから、本をいくらあげたって惜しくはない。 どういう人だと説明すれば一番わかってもらえるかを考えてみたところ、親しみを込めつつ「長嶋監督と中村玉緒を足して二で割ったような人物」と表したい。
ある日、家内にその人から電話があった。 「フンフンそれで・・・エッーまぢで、いや送るっていわれても・・・とにかくそこから逃げて!」という、只事ならぬ会話のやりとりがもれてきた。
どうしたのかをたずねたら、とにかく話してみてと家内が言うものだから、しかたなくかわってみたところ、恐るべき光景を語りだした。
(more…)もしやこれは・・・
このゴールデンウィーク、家族だけでゆっくりと過ごした。
旅先の砂浜で朝から夕方までずっとぼんやりしているだけだったり、あてもなくぷらっぷら散歩したりした。 親が心身ともにリラックスしていると、それが子供にも伝わるようである。 普段ギャアグヮア騒がしい子供たちも、やけにおとなしかった。
砂浜に寝転がっていると、突如巨大な白犬が現れた。 あまりにも犬がデカいので、飼い主の女性は陰になっていて見えなかった。 一瞬あせった。
とてもおとなしい犬で毛並みが美しく、子供たちはすぐとりこになった。 ワッと近寄ってナデワサしていると、飼い主の女性は「シャンプー代が一回一万円もかかる以外はエサを沢山食べるわけでもなくて飼いやすいんです」と言った。
波打ち際を散歩していて、なにやら物体が打ち上げられているのを見つけた。 土器の破片のようである。 駆け寄って手に取るとこれは・・・・・・急いで家族を呼び寄せた。
「これって土偶のカケラじゃなかろうか!」
(more…)写真イロイロ
日頃撮りためた写真の断片を以下掲載。
(more…)じょうしき
知り合いのデザイン会社社長と銅座へ。 新卒採用した社員のことで頭をかかえているらしく、事細やかに話を聞いた。
やたらと遅刻をするので理由を聞いたら「始業時間を勘違いしていました。 明日からちゃんと来ます」という返事。 だがその後も遅刻を連発し、理由はその日によってマチマチなのだとか。
めっぽう数字に弱いそうだ。 やはりここでも間違えた理由をその都度熱心に語るという。 自らに非はないという主張。
ある日、デスクに私物のノートPCを置いていたところ、その社員が勝手に起動させており、 なにやらカタカタ操作している。 何をしているのかとたずねたら「このブログ、超面白いんですよ」といいながら、自分が気に入っているブログを閲覧している最中だった。 以来私物のPCは持ち込まないことにしたそうだ。
(more…)伊王島
むかーし親父に連れられて伊王島に行ったことがあった。
船着場に着くと、親父の友人が出迎えてくれた。 その方の家まで歩いたのだがその道中、行き交う人々が皆知り合いであり、声をかけてくることに驚いた。 「もしかしてこの人は何かしらの有名人なのではなかろうか」と見上げつつ顔をしげしげと眺めたことをよく憶えている。
真っ青な海である。 そそくさと海パンに着替えたまではよかったが、慣れない岩場に立たされ、四方を囲む海原のスケールに圧倒され、たたずむばかりで飛び込むことができない。
もじもぞしている傍らで、突如友人氏は自分の娘を抱えて、海の中にぽーんと放り投げた。 「このおっさん、なんちゅうことを!」と思いきや、放り投げられたほうはなんのその、「ギャアキャア」いいながら喜んでいる。 いつもこうやって遊んでいるのだろう。
その光景を見て、ようやく海に飛ぶことができた。 忘れられない素敵な一日だった。
(more…)近況
しばらく東京に住む知人のところへ行っていた。 東京の雑感。
- 山手線の電気が消えている。
- コンビニの水、お茶が売り切れ。
- タバコも品薄。
- 時折緊急地震速報があり、不気味に揺れる。
- 居酒屋の看板が消えているので営業していないのかと思いきや、やってる。
「もう揺れには慣れちゃった」と知人は言うが、オイは怖い。 飲み屋の店主によると、築地に魚がなかなか集まらず商売しにくいそうだ。 マグロが高騰しているのだとか。 売り上げは平時から25%減、ではなく、25%しか、ないらしい。 深刻な顔をしていたので、やりっぱなしに呑み喰いした。
京都へ
長崎に戻る途中、せっかくなのでと京都に寄った。 夜、どこで飲もうかと模索中に、客で賑わう小さな居酒屋を見つけた。
満席の様子だったが、戸を開けてみると、常連軍団が「空いてますよ!」と席を詰めつつ一席設けてくれた。 てんやわんやの大騒ぎだったので、てっきり皆同じグループなのかと思いきや、皆個別に来た客なのだという。 常連同士、皆知り合いなのだ。
隅っこだから、壁面のメニューが見えない。 一体何がつまめるのやらとリクガメのように首を伸ばして覗き見ようとしていたら、隣の常連がこの店で何が食えるのか、呑めるのかを親切丁寧に説明してくれた。
肴はワカサギが旨い。 焼酎はどの銘柄でも一杯500円。 赤霧呑んでも黒霧だろうが、富乃宝山でもいいちこだとしても500円。 ロックを注文するとロックグラスに並々と注がれて出てくる。
今年で創業31年になるそうで、昨年30周年には、常連客みんなでこの店の歌を作ったそうだ。 突如合唱がはじまった。 隣のお客は次の店に行くそうで、会計を済ませているがその金額がベロンベロン度に対してあまりにも安かった。 人気店なのも頷ける。
(more…)オカン
婆ちゃんのいる田舎に「オカン」という犬が住んでいる。 白犬で、昔っから姿が変わらないのでかなり歳がいっていると思う。 白い毛に映える、赤い首輪をつけているが、飼い主がいるわけではない。 オカンという名がどこからきたのかを誰もしらない。 今日は山田さんが散歩をさせ、エサは佐藤さんが与えるといった具合に、近所中で世話をしている。
人見知りする犬であり「オカン、オハヨ!」と声をかけても、首をひそめて上目遣いに後ずさりする。
ある日、縁側で昼寝をしていると、只事ではない犬の鳴き声が聞こえてきた。 だんだんこっちに近づいてきている。 「グゥアルルル・・・オウオウッ!オウッオウッ、ギャハー!」と、狂気じみている。
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