台風第16号 :サンバ
「最大瞬間風速80メートルだってああ怖い、避難しよう」といつものように反射的に娘たちを連れそそくさと実家に帰ってしまった嫁。
「80メートルってこたないだろう」と予報を見ると、確かにその文字が。 普段「最大風速」は気にしても「最大瞬間風速」は気にしないもので、これがいったいいつもの大型台風とどれぐらい規模的に違うものなんだろう・・・と悩んでいたところ「今度の進路は長崎的に最悪コースばい」と語る町の長老のひきつった顔を見て、急いで雨戸を閉めて回った。
(more…)カスピ海ヨーグルト
朝食時、子供たちにヨーグルトを食べさせるようになり数年になる。 旬の果物の上にヨーグルトと、ハチミツをたらす。
気分によりヨーグルトとハチミツの種類を替えるのが作り手としての楽しみであり、何か珍しいヨーグルトはないものかとデパートをうろついていて見つけたのが、手作りカスピ海ヨーグルトのセット。
(more…)キー坊
友人一家が遊びに来ており、みんなで晩餐中である。
友人の息子二歳(以下キー坊)は「ウマー」と言いながらしきりにエビフライにかじりついている。 が、用意しているタルタルソースをつけて食べるのではなく、アジの煮つけの煮汁に浸しながらかじっている。
こりゃ新しい手法だと感心していると、彼が旨いと言っているのは、実はエビフライそのものではなく、魚の煮汁であることが判明した。 その証拠に、エビフライはちっとも減らないのだった。
よく見ると、煮汁にエビフライの先をチョコンと浸し、それにかぶりついて汁をチューチュー吸っている様子。 どうあれ、新しい食べ方をする子である。
食事が済むやいなや、キー坊は父親の所へiPhoneを借りに行き、ひとり寝転んでアンパンマンを見始めた。 これが夕食後の習慣であるらしい。
驚いたのは、そのiPhoneを操る手つきのこなれ具合だ。 二歳なのに、ふてぶてしさすら垣間見える、大人顔負けの、iPhone5が発売される事なんて、とっくの昔に知ってる風の手つきだった・・・。
トカモツカワレルンデスカ
久しぶりに家内と二人で買い物に出かけた。
腹ごしらえの後いざ買い物へ。 この買い物に付き合わされるのが苦痛なので同行したくないのだが、ポーターとして駆り出されてしまう。
相変わらずひとつの買い物が長い。 物を買いに来たというよりも、店員さんとおしゃべりをしに来たというほうが妥当。 まだ長引きそうなのでここはひとつ、ちょっとその辺をお散歩に…。
セレクトショップの店頭に別注スニーカーとやらが置かれてあり、やけに発色が良かったのでつい近寄って手に取った。 ためつすがめつしていると、奥から店員さんが近づいてきた。
店員氏:「スニーカーとかも履かれるんですか?」
若い男性店員は爽やかな笑顔でこう尋ねながら、やや腰を落として両腕をハの字に開き指先をピンと伸ばして掌をこちらに向けて頭を20度向かって右に傾けている。
「ええまあ(履かなさそうに見えるのかな)」
(more…)ブドウ狩り
毎年九月に入ると、子供たちの通う保育園ではぶどう狩りに行く。 それをいつも次男は楽しみにしていて「ぶどう狩りに行くけん水筒よういしておいてね」とか「いっぱいとってくるけんね」と張り切っているのだが、今年は天候に恵まれず延び延びになっていた。
先日ようやく行くことができ、丸々したぶどうを三房もいで帰ってきた。 夕ご飯を食べた後、皆でぶどうを食べるんだと冷蔵庫のドアを開け、椅子を引いてきて、棚の一番高いところに自ら仕舞った。
(more…)佳肴二品
腹皮
カツオの腹皮にようやく出会えた。 鹿児島県のアンテナショップで売られていたものだ。 炙ってかじると、珍味というほどでもないが、ただ単に塩を振って干しただけではない歯ざわりと、熟成された「血合い」のような深い味がする。 焼いたのを刻んで、マヨ醤油にカボスを絞りこみ、七味で喰うと旨々。
(more…)タッチョーダイ
デパートの海産物売場でカラスミを物色していた時のこと。 贈り物にするのに型の良いのを探していたが、いかんせんカラスミであるがゆえサイズによって値段が違う。 大きいのもになればもう、手が出ない。 なんとか予算内で、型が良いものを……。
突如そこに現れたのは、買い物カゴを押しながら短パンにドクロの黒いTシャツを着たパンクなおじさん。 悩みこんでいるこちらをしり目に、さらりとカラスミを眺めてから「○◆×☆△■!」と言った。
(more…)-195.82℃
何気に腕をさすると掌に当たるものがある。 目を凝らしてみると、小さなイボがあった。
珍しさから家内に見せたら「そんなの皮膚科に行けばポロよポロ」という。 早速病院へ行くと「ああイボですね、他の場所にうつったりもするので取っちゃいましょう」と先生。 イボに効く薬は無いので焼いて取らねばならないのだという。 「え、焼くてどうやって!?」
「焼く」という言葉にかなり反応したが、何もイボを火あぶりにするのではなく、液体窒素を使うらしい。 液体窒素といえばアレだ。
その液体窒素をイボにくっつけて、ヤケド状態にして息の根を止めるそうだ。 「じゃ、液体窒素持ってきて」と先生が言うと、こなれた様子で紙コップを手に棚の下にあるメタリックな球体へ歩み寄る看護師。
そして紙コップを床に置き、球体を持ち上げて中に液体窒素を注ぐ。 瞬間白煙が立つ。
もうもうと白煙のあがる紙コップのフチを親指と人差し指ではさみ持ち、何気に椅子に座るオイの真横を通り過ぎていく。 もしも看護師がくしゃみでもして中身がオイにふりかかってきたらどうなるんだろうか、という恐ろしい妄想をする。
先生は綿棒の先を液体窒素に浸し、イボにチョンチョンとくっつける。 初めは冷たく、次に鈍痛がして、次第にヒリヒリしてくる。 これで治療は終わり。 そのうち皮がむけるが、それにくっついてイボもとれてしまうらしい。 いや勉強になった。