次女さん
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長女とイチャイチャしていると、家内から声がかかる。 「ちょっと!」
家内が指さす方を見れば次女がほっぺたを膨らませている。 少しうつむいているが目はギロリとこちらを見ており、憎悪の念が突き刺さる。
そういう事かと慌てて次女にも声をかけるが時遅し、スネてどこかへ行ってしまった。 こういうところが次女のすごく可愛らしいところなので、時にはわざとスネるように長女にだけ声をかけたりしている父を許してくれ。
だって大好きなんだものキミのことが。
(more…)鮒寿司考
鮒寿司は「フナと米と塩」のみが織り成す小宇宙。
好物「鮒寿司」を買い漁り、好みのものに出会えれば至福。 今回入手したものは酸味がマイルドで、あまりにも酒に合うので、メーカーに問い合わせをしてみたところ、丁寧に作り方を教えてくださった。
(more…)即筋肉痛
週五日、欠かさず走るようになってから五年程経つ。
太りやすいので体重管理のためというのが発端だったが、酒が旨くなったり、翌朝体内の酒を一気に抜く手段として極めて有効であることから、今では歯磨きと同じような習慣となり、走らないとなんだか気持ちが悪い。
この間しばらく長崎を離れたので、20日ほど走れないでいた。
久しぶりに走ってみると体の疲れが全部抜け切っており、足取りの軽さといえばもう、ナイキにスプリングでも仕込んだのかという軽快さで、フルマラソンでも楽勝で走破できると思えるほどだった。
一歩進むごとに、体が跳ねて飛んで行ってしまいそうなぐらい軽い。 普段と比べてタイムも段違いに良い。 ところが残りわずかというところで、両ふくらはぎの筋肉に鈍痛が走った。 走っていて、こんなになったのは初めてだ。
(more…)撮れるものならば
最近新幹線での移動に凝っている。
本を読みながら、時々車窓を流れる景色を眺めながら「ああもうこんな所まで来たんだ」と数百キロの移動を身近に感じられる所がよい。
とりわけ楽しみなのが富士山を拝むことであり、もうそろそろかと思えば席を立ち、通路の窓に顔をくっつけて、姿が完全に見えなくなるまで凝視する。
「裾が広がっている割には低い」なんて太宰さんは書いていたが、オイの眼は山頂付近をトリミングして見ており気にならない。 そびえる巨山にただ見とれるばかり。
(more…)熱
三年前新宿での出来事。
出張二日目の朝、目を覚ますと体が鉛のように重たく、頭がマグマのように熱い……昨夜の酒が残っているのではないこれは、風邪だ風邪。 スマフォに手を伸ばし、近隣の病院を検索した。
地図を見ながら這うようにしてたどり着いたのは、かなり古びた、こう言っては申し訳ないが廃屋みたいな個人医院だった。
もちろん普段ならば別の所を探すが今はもう、生きているのがやっとであるほどツライ。 それにしても都会のど真ん中にこんな場所が存在しているなんてエモい。
薄く所々濁った、面が均一ではなくデコボコしているガラスの嵌められた、かすれた医院名が残る木の扉を引いて靴を脱いで「受付」と書かれた札の掛っている小窓へと歩いた。
そこには誰も居なかった。
見回しても患者もおらず、シンと静まり返っている。
「あのー、スイマセン。 診てもらいたいんのですが」
と声を投げればヒョイと顔を出したのは、白髪の痩せたお爺さんだった。
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