タイムキャプスル
三年前の夏。 羽化直前のセミの幼虫を探す為、必死で神社の境内の木々の根元を見て回った。
80過ぎの元高校教諭によると、夏の夕刻、木の根元に小さな穴を見つけたら、そこにセミの幼虫が潜んでいる事がある、という話だった。
セミの羽化するドラマチックな瞬間を子供と一緒に観察したかった。
普段気に留めていなかったが、木々の根元には意外と沢山穴が開いている。 その穴へ、木の枝の切れ端をゆっくり差し込んでみる。 もしもセミがいたら、それに釣られてひっぱり出てくるという寸法だ。
ところが、いくら差してみてもセミの気配はまったく無い。 どの穴も全部、巣立ってしまった後なのではなかろうか。 幹を見上げると、おびただしい数のセミの抜け殻がこちらに背を向けている。
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