瓜子
寒い寒い、早くスイカをかじれる夏が来ないかなあ。
昔、切り分けたスイカを種ごと全部食べてしまう男がいた。 種を一粒も出さず、全部果肉と一緒に飲み込んでしまう。 その理由は、いちいち種を出すのが面倒だから。
彼に影響された少年オイは、ある日、マネをして種ごとスイカを食べてみた。 食べれなくもない。 となりでそれを見ていた親父は「種はぺっぺと出すもんだ。 そんな喰いかたしてたら盲腸になるぞ」と言った。
何年かして、オイは盲腸になり、手術するハメになった。 スイカの種が原因かどうかはわからない。
瓜子
中国には瓜子という食べ物がある。 「スイカの種」のことで、食べだすと、止まらなくなるのだとか。 食べ方にはコツがあり、中身を歯と舌先で取り出す。 と書けば簡単そうだが、熟練を要す技らしい。
瓜子の話は邱 永漢の『食は広州に在り』にあったもので、ある日邱さんは瓜子を持って、檀さん宅を訪問した。
日本文壇における軽率妄動派のように目されている檀さんは、慣れない手つきで何度も殻ごとかみつぶしながら、でもなかなか味なことを言われた。
「西瓜の種をかんでいると、気分がしずまりますね」
是非瓜子を喰ってみたい。 だが見たこともないし、はたして売られているものなのだろうか? もしかすると自作できるものかもしれん。 「西瓜の種を天日干しするだけ」とか。 ああ早く夏よ来い。