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2006/12/12 野菜

ニラよ

nira

モツ鍋といえばニラが必須である。

丹念に抽出したカツオだしにモツの脂が溶け込んでいて甘く、スライスニンニクや唐辛子のパンチが効いており、キャベツやもやしを煮込んで食べる。 忘れてはならないのがニラで、モツ臭さを消すのに重宝し、唐辛子の赤といっしょに鍋に彩りを与える。

あるとき田舎でモツ鍋を作って食べた際、ニラだけがなかった。 車でひとっ走り、ニラを買いにいこうかとしているところ、ばーちゃんがこう言った。

「に、ニラに似たとは植わっとるにら。」

家の裏に、おそらくニラだと思われる草が植わっているのだという。 案内してもらうと、雑草がボーボーと生い茂っている中に時折ニラのような緑がのぞいている。 でも一見単なる雑草にしか見えない。

「ばーちゃん、これホントにニラかな? その根拠を問う。」

するとばーちゃんは、だいぶ昔にその場所付近にニラを植えたような、植えていないような気がする、というなんともどっちつかずの返答をする。 ならばこの緑の草がニラなのか、ニラでないのかはオイの判断ひとつにゆだねられるわけだ。

少し考えてから、所々生えているニラ風の草を引き抜き、かんでみる。 よく知るニラの風味のようでもあるが、感じる苦味はただの雑草のようにも思える。 うーんどうしようか・・・。

でもまあ、ニラは草でしょう。 万が一雑草だったとしてもそもそも雑草という草はないのだしさ、しかもこれって無農薬じゃないか。 と自ら励ましながら、目の前に植わる緑の草をニラだということに認定した。

抜き取って、キレイに水洗いして、切って鍋に投入。 もう後にはひけない。 喜んで鍋をつつく皆には、「ニラは買ってきました」と伝えた。 この件は、ばーちゃんとオイだけの秘密である。

2006/12/10

肉!

niku

「何を食べたい?」と子供達に尋ねてみると、「肉ー!」と2人揃って叫ぶ。

もうじき2歳の娘は、酒肴が好きで、シメのラーメンも欠かさないという少し将来を不安にさせる性質で、イクラや寿司を食いたいと訴えることはあるが、肉を食いたいと言ったことは今までなかった。

4歳になる息子は、ジャンクフードが好きで、シメにデザートは欠かせないという少し将来を不安にさせる性質の持ち主で、ハンバーガー、ピザを食いたいと訴えたことはあるが、肉を食いたいと叫んだことは今までなかった。

その二人が口をそろえて「肉が食いたい」と訴えるということは、もはや食べ物の好みでそう言っているのではなく、おそらく体が肉を、タンパク源を欲求しているのではなかろうか。 「焼肉」ではなく「肉」というところにも、なんだか切実な思いが込められているような気がする。

親として、早急に子の願いをかなえてやらねばならない。 駆け足で近所の焼肉屋へ向かい、バラ、カルビ、ロース、タン、ホルモンと3皿づつ注文する。 これだけ注文すれば大丈夫かな。

親としては、あれほど肉を欲していたわけだから、ものすごい勢いでガッつく光景を期待していたわけだが、おとなりの子がアイスクリームを食べていることに気付いた息子は、自分もアイスがイイとゴネだす。 それを見たマネっこの娘もアイスがイイと言い出した。 オイオイ、肉はどうした肉は。

オイはというと、忘年会由来の暴飲暴食で胃が疲れ果てていて、肉はちょっと避けたいというか、ソーメンあたりで充分といった感じ。 沢山残った肉は、かぶりにしてもらおっと。

2006/12/09 酒肴

ボリュームに欠ける生牡蠣

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忘年会シーズンである。

「オレさ、もう12月いっぱいいっぱいなんだよね。 だからこの日しか空いてない。 どうする? やる? オレん家で。」なんていう電話をもらったわけだが、なにもオマエだけがこの師走、忙しいわけではないぞ。 しかし民家での忘年会というのもたまにはよいか。

そのいっぱい2氏も、オイ同様小さな子供がいる。 子供が起きてる時間はとてもじゃないがゆっくり飲んでいられないからということで、22時集合である。

持参品は、オイ家に眠っていた妙な日本酒とクラシックラガー、それにもらったけれどテンで飲む気がしなくて放っておいたボジョレーヌーボー。 肴はチーズの盛り合わせとイカの塩辛、それにチャーシューを持っていこう。 あとは用意してくれているであろう。

道中、手書きの「カキ焼き」という看板がやけに目に付く。 「あれ、あそこのカキ小屋、まだ営業中でないの。」 一件のカキ小屋は、夜10時を回ろうとしているのに、まだ営業中であった。 寒空の中4、5人がカキを焼いて食ってる。 「そうだ、生牡蠣を買っていこう。」

小屋でカキを焼きながらガヤガヤ騒いでいた連中は、そこで働く人々であった。 営業が終わり、余ったカキを自分達で食っていたのだという。 「売ってくれ」というと、営業時間外にも関わらず、快く商売をしてくれたのである。 1kgで500円なり。 悪くない。

オイがいっぱい2家に到着したときはすでに宴会が始まっていたのであるが、とりあえず奥さんに挨拶をして、持参品を渡し、早速カキ割りに励むことにした。焼いてなんか食わない。 酒を飲みながら生でズルズルと食うわけである。 「奥さん、カキを割りたいのでスプーンかフォーク、もしくはバターナイフかカキをこじ開けることができる何かはありませんか?」と聞くと、木製のバターナイフしかないという。

木製のバターナイフ。 そりゃムリな話である。 しかしなんで家にスプーンとフォークがないのか。 でもまあ、奥さんを責めてもしょうがない。 じゃ、焼くか。 いやまて、オイをナメてもらっては困る。 どうしても生で食わねば気がすまない。 「ちょっと失礼します。」と、オイはカキの入った袋を手に、外へでる。 街灯の下、駐車場のブロック塀のカドに、牡蠣の殻をガンガンと打ち付けて割り始める。 強行手段である。 あいにくそれほど大きな音はたたないので近所迷惑にはなるハズはないと思うが、街灯の下、ブロック塀付近でゴソゴソやっているオイは間違いなく怪しい。 巡査が通りかかれば職務質問されること必至である。 でもスプーンが家に無いというから仕方がない。

人間その気になればなんでもできないことはない。 そう感じた人生初のブロック塀でのカキ割りであった。 上手くいった。 割ったカキを手に部屋に帰り、皆のもとへ。 「さあ、生牡蠣で一杯やろう!」 ひと仕事終えた後のオイは、ビールを飲みながら生牡蠣をズズズ、っとススル。 いつもより多少殻の破片が気になるが、そんなデリケートなことは言ってらんない。 ウマけりゃよい。

しかし、肝腎なその牡蠣であるが、身が薄っぺらい。 フレッシュではあるが小さい。 時期的には、もっとこうプックリとした、カキエキスがジュワっとしたたる、豊満なカキを期待していたにも関わらず、いまいちボリュームに欠ける。 せっかく苦労して割ったのに、これではなんだか報われないような気がした。

後日聞いた話によると、今年のカキはどれも身の入りが悪いのだとか。 無念。

2006/12/08 おかず

魚久:京粕漬け

uokyu

魚の粕漬けといわれてもいまいちピンとこないのは、オイが長崎人だからなのか、好みの問題なのか。

魚といったら刺身かあとは塩焼き、煮るぐらいしか普段食わないわけであるが、この魚久の京粕漬けを食べてみると、うまい。 酒粕(かす)が魚の芯までしみこんでいて、どの部分を食べても同じ濃さの味がする。 こんだけ甘い味付けの魚料理を食べたことはこの粕漬けを除いてはおそらくない。 しかし、ご飯でも酒でもイケるのだ。

魚久の粕漬けを食べるには、まず焼き方に細心の注意を払わねばならない。 手元にある魚久のチラシを元に少し説明してみると、まず始めに魚についた粕をよく洗い流さねばならない。 そして魚焼きを充分熱してから、目を離さずに、弱火で両面じっくりと焼いていくわけだ。

uokyu2

しかし個人的な好みを言わせていただくと、せっかく粕漬けの魚を食べるわけだから、酒粕の風味を存分に楽しみたいような気がしないでもない。 さらに魚の身を水にさらすということに若干抵抗がある。 だから粕漬けは洗わない。 酒粕を手で拭う程度にしておいて、グリルで焼き上げる。

以下のサイトから、電話注文で購入することができる。 賞味期限は、冷蔵庫で1週間。 保存している間にも酒粕が魚に染みてくるので、刻々と変化する風味の違いも楽しめるという特典つき。

魚久東京都中央区日本橋人形町。

2006/12/07 菓子

カンコロモチの季節

kankoromoti

かんころもちについては去年コチラで書いた。

今年第一号のかんころもちを頂いたわけだ。 5ミリ程度にスライスして、ストーブ上で焼いてほうばると、口の中の天井にへばりつき歯のスキマなんかにまとわりついて、あまりのネバりの強さに、まるでスローモーションで見る牛の口のような食べ方しかできないわけだ。

その金の延べ棒然としたスタイルも魅力的である。

カンコロモチの作り方 – まとめました

2006/12/03 雑記

灯油(醤油)チュルチュル

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師走ともなるとさすがに寒い。 電気カーペットやエアコン等、暖房器具が活躍する季節である。 数ある暖房器具のなかでも、石油ストーブは欠かすことが出来ないアイテムだ。 ストーブ上にやかんを置いたり、おでんを並々と入れた土鍋を煮たりと、調理器具としても活用できるというメリットはもちろんであるが、やはりヒトとして、「火」を見るとなんだか落ち着くような気がするわけだ。 ビジュアル的にもあったかい。

石油ストーブの燃料は、石油である。 石油の中でも、白灯油が用いられる。 石油ストーブに給油サインが現れたら、灯油を入れてやらねばならぬ。 我が家でこの作業を担うのが、オイである。

我が家には灯油で満たされたポリタンクが2個常備されており、一方に灯油(醤油)チュルチュルが突っ込んである。 電気式である。 「入」ボタンを押すと、ポリタンクの中の灯油を吸い上げ、ストーブのタンクへ流れる。 そして満タンになるころそれを察知し、入れすぎによる灯油があふれるのを防ぐ賢いセンサー付きなわけだ。

その日もいつものように、その電気式灯油チュルチュルを使おうと、「入」ボタンを押す。 いつもなら「ウィーン」と作動音がして、勢いよく灯油を吸い上げてくれるハズなのだが、おしい、あと一歩というところでポリタンク内に灯油が逆戻りしてしまう。 ムカツイテ、入ボタンをガチャガチャ押してみても、ダメだ。 こりゃ電池切れだぞ。 あいにく家には電池のストックがなかった。 ヤバイ、これでは灯油が入れられん、灯油係りとしての仕事をまっとうできない。 家族が暖をとれないではないか。

電池を買いに、ホームセンターへ出かける。 そしてお金を払おうと、レジに並んでいるところ、電池式でない普通の灯油チュルチュルが置かれてあった。 ひとつ59円と、電池よりも安い。 その佇(たたず)まいには、なかなか風情がある。 とりあえず、今回のように電池が切れた際の緊急用として、ひとつ買っておくのもテである。 購入。

帰宅し、早速電池を入れ替えてやると、もうね、「ウィーン」の音からして違う。 「ヴゥイィーンッ」という具合に、内臓モーターの回転数が、今までとは比べ物にならないぐらい上昇しているのがすぐにわかる。 これで灯油を吸い上げるならば、さぞかし爽快であろう。 でもまてよ、せっかく無電池式普通の灯油チュルチュルを買ったんだし、今回は特別にこれで灯油を入れてみようではないの。

まずは上の白いキャップがキッチリと閉められているかを確認する。 これが緩んでいると、灯油を吸い上げてくれない。 そして直立しているほうの管をポリタンク側に差し込み、自在に曲がるクネクネしたホースのほうを、ストーブのタンク内に挿入する。 そして蛇腹になった赤い胴体を「シュボ、シュボ、シュボ」と握りつぶしてやると、次第に灯油が吸い上げられていく様子が見える。 そしてサイフォンの原理により、勝手にタンク内に灯油が注がれていくわけだ。 しかしひとつ注意しなければならないのは、タンクが満タンになっても、勝手に給油を止めてくれるわけがない。 こうして書いているだけでも、床が灯油びたしになった悲惨な光景が目に浮かぶ。 目視で注意深くタンクの目盛りを確認し、満タンになる寸前で、上の白いキャップを緩めてやらねばならない。 このタイミングは、慣れである。

とまあ無電池式灯油チュルチュルもナカナカ面白い。 クセになる。 今度からこっち使って灯油を入れることにしよう。 近い将来、オイが灯油係りから引退し、息子がそれを引き継ぐかもしれない。 その時、電池式灯油チュルチュルがデフォルトになっていては、サイフォンの原理の素晴らしさを目の当たりにすることができない。 灯油があふれる寸前で、白キャップを緩めるというカンとスリルも体感することができないし。 なにより電池切れがない。

以上の理由により、我が家の給油では、昔ながらの灯油チュルチュルを採用することに決定しました。

2006/12/01 酒肴

カキ焼きはじめました

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「鍋物はじめました」

近所の料理屋さんの玄関に、こんな張り紙がでる季節になった。 夏、中華料理やさんの軒先には「冷やし中華始めました。」という張り紙がされるが、「冷やし中華終わりました」という張り紙は見たことがない。 「始めました」と宣伝するならば、「終わりました」の報告もしたほうがよいではないか? こんな話を前に書いたが是非、近所の料理屋さんには「鍋物おわりました」の張り紙も貼っていただくよう説得したい。 いやどうでもよいか。

「カキ焼き始めました」というハタが、国道沿いに乱立する季節になった。 冬といえば、牡蠣である。 しかし「カキ焼き始めました」というお知らせはあっても、「カキ焼き終わりました」という期間終了をお知らせするハタなんてみたことはない。 しつこいか。

殻付きの牡蠣を買ってきて殻をあけ、レモンを豪快に絞り込み、ズズズとやるのはケッコウなものだが、いつもおんなじ食い方ばかりではツマラン。 今日はひとつ、焼いて食ってみようではないか。

まずは昆布をしばらく日本酒に浸しておいて、七輪で炭をおこす。 そしてその上に昆布をのせて、さらにその上にカキの身を並べる。 小ネギなんか散らしたりして、グツグツいいながら半熟程度に焼けたところをパクリ。 カキのミルキーな風味に日本酒と昆布の旨味が加わるものだから、マズいわけない(いわゆるひとつの松前焼)。

2006/11/28 野菜

折れた大根

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オマエどんだけオンチなんだよ。 という人物に会った。

結婚式そして披露宴はおめでたいものではあるが、いくら11月つったって、毎週のごとくあっても困るわけで。 いささか食傷気味の披露宴に(いやメデタイことは確かだよホント)、その日は向かったのである。

スピーチは短くて、その他トントン拍子に進み、今回の披露宴は、酒にはやくありつけそうだ、ウヒョ。 なんて考えてたら甘かった。 乾杯の音頭が長ーいのである。

「えー、Yさんは、Kさんとの、えーっ、アレであって・・・。 本当に・・・。 お二人とも・・、仲がよくて、まるでキャッチャーミットのように、Yさんを・・・、つつんであげてください乾杯!」

と、最後はいささかテンパりながらの乾杯をなされたわけだが、キャッチャーミットのようにて。 ま、いいか。 食べよう。 グビグビ飲んで、にぎやかなご一行が裸踊りなんかを始め、ビールをノメノメの注がれ、楽しい。 そして余興がはじまる。

いたって普通だ。 カラオケなんか歌ったりして。 Yさんおめでと! とか叫んだりして。 ダンスもなかなかよい。 バンドだって上手いよ。 そして、この余興の最後に登場する人物の紹介をDJが始めた。

「え、この人はね、え、NHKのど自慢大会で、え、かなりのキンコンカンを鳴らされた好評価な人物でね、皆さん期待してくださいそれではどうぞ!」

「ボエぼえぼえー、ボエボエビー、グーガー。 ビービボー、ボー、ボーバァーベェーたーりーぎーりーだねー。」

と、耳をつんざく大音響。 たしか流れている曲は、アムロナミエさんの、キャンユーナントカ、だと思うのではあるが。 それがどのように聞いても、「ボエボエ」としか聞こえない。(事実) そんな歌を聴かされたんじゃ、オイはもはや笑うしかなく、ゲラゲラと喜んでいたわけだが、ふとあたりを見回してみると、会場の3分の2は引いているようだ。 いや、ごく少数のコアな人間にだけウケているといったほうが近い。 親族席のおじさんたちの顔には、怒りの色すら表れてるようだ。 こりゃ、ヤバいのではないの。

そんなことはお構いなく、ひとり壇上で気持ちよく歌っている男が、2番を歌い始めようとする瞬間、数名の男が駆け寄り、そのオンチ氏は、幕の後ろへと引きずられていった。

とまあこんな楽しい席だったので、酒が進んで飲みすぎた。 すこしほろ酔い加減で帰宅途中に、遠くからオイを呼ぶ声がする。 「おーい、オーイ、おいでー。」 よく見ると、近所のお婆ちゃんが、家庭菜園で、叫んでいる。 近寄ってみると、大根をもって帰れという。

その畑一面は、全て大根が植えられているのだとか。 普段スーパーでばっかり買い物していると、植わったままの大根なんか目にする機会がなく、一目でそれが大根だとはわからない。 しかし、葉っぱの根元を掻き分けてみると、ちょびっとだけ、例の白いぶっといのが土から出ている。

「ほら、よか大根の植わっとるけん、2、3本抜いていけ。」と婆ちゃん。 「あらホント、よか大根たいね。 でもね、今服装が服装やけんさ、また今度もらうけん。 酒も飲んどるしー。」とオイ。 でもどうしても今持っていけとウルサイので、しかたなく、大根を抜いてみることにした。

適当に1本の大根を選び、葉っぱをかきわけて、抜く。「アレ?」抜く。 抜けない。 大根って、なかなか抜けないものだということを、今日始めて知ったわけだ。 「あーその大根は細かよ。 もっと太かとば抜かんばさね。」とか婆ちゃんにツッコまれながらも、「イヤイヤ、オイはこの大根ば、抜きたい。 抜けないまま放っておいては男がすたるよ。」とかなんとかワケわからんことを言いながら、ネバって抜こうとしてみるも、その大根、なかなか抜けない。 なんで?

少しカンシャクを起こしてグリグリ無理やり引っ張ったら、掘れたことは掘れたんだけど、先がポッキリと折れてしまっているわけ。 これじゃ大根抜き失格だと婆ちゃんはいう。 じゃあばーちゃんが抜いてみろ、と言うと「どーれ」とスローな動作で大根をつかむ。 グイッ、ボソッ。 と、キレイに根っこから抜けたのである。 なんでもコツっちゅうものがあるわけだ。

しかし、自分で食べる大根ぐらい、自分で抜くことができねば話にならぬ、ということで、もう1本だけ抜かせてもらうことにした。 今、目の前で婆ちゃんが上手に抜くところを凝視していたので、イメージは完璧である。

イメージは大事である。 昔本で読んだ話に、鶴の飼育についてこう書いてあった。

とある若者が、とある動物園に就職した。 その若者は、獣医の免許をもっていて、動物にはそれなりに詳しいつもりだ。 最初に任された仕事は、鶴のオリの掃除係だった。 毎朝、動物園がオープンする前に、オリの中をきれいに掃除するのだ。

掃除はその若者と、前任者のこの道50年の老人が行う。 掃除の手はずは、老人によく聞いた。 若者は、鶴が2羽飼育されているオリのカギを開け、腰をかがめて入る。 そして竹ぼうきで床を掃除しようとしたその瞬間、鶴がバタバタと羽を広げて狭いオリ内を暴れまわる。 とてもじゃないが掃除どころではない。 鶴は怒っているのだ。

あわててオリから抜け出した若者は、すっかりビビッてしまった。 それを見ていた老人は「どれ、ホウキを貸してみなさい」と言うと、オリの中へ入っていった。 そしてオリ内の掃除を始める。 鶴は少しも騒がない。 老人なんて、まるで意識をしていない。

若者は考えた。 これはきっと、老人がその道50年のベテランだからである。 鶴が慣れているから騒がないのだきっと。 オレもじきこうなるだろう。

しかし、2年が経ち、3年が経っても、鶴はいっこうに若者に馴れようとはしない。 老人とまったく同じ手順にて掃除しようとしているにも関わらず、である。 そして若者は、老人の掃除をする様子を、じっと観察した。 するとあることに気が付いた。

老人をよく見ていると、なんだか仕草が鶴と似ている。 ホラあの歩き方やリズム、そっくりだ。 そういえば老人は細身で、背格好も鶴と近い。 あ、さらに時折老人がみせる、胸についたホコリをはたく仕草は、ツルのそれとソックリではないか! わかったぞ! 老人は、ツルになりきっているんだー!

と、若者はヒラメキ、そのように老人に尋ねてみた。 すると老人は、特別意識はしていないが、長い間接するうちに、鶴に似てきたのかもしれない、と言った。 そういえば、老人はオリの外にいるときも、どこかしら鶴のような動きをする。 そうなんだ。 鶴になりきることが、大事だったんだ。

と、若者は、鶴になりきる訓練を始めたのだとか。

とまあこのような話もあるし、オイも婆ちゃんになったつもりで、すこしボーッとした表情で、スローに、根っこをおもむろに握って、ブチッ。 あ、折れた。  と、結局上手に抜くことが出来なかった2本の大根を、泥まみれになりながら、持って帰った。 ブリ大根でも作ろう。

※今年は大根が取れすぎて、相場が例年の半分以下になっており、農家の方々は大根を廃棄処分しているとかいうニュースをテレビで見た。 非常にもったいない話である。 どうにかならぬものか。

2006/11/25 webで買い物

佐藤養助:稲庭饂飩

inaniwa 佐藤養助:稲庭饂飩

とあるデパートの地下食品売り場にて。 オイは「しょっつる」を探していて、なかなか見つけることができずに、売り場のおばちゃんに尋ねてみた。

「あのー。 シ、しょっつるって置いてますか?」

おばちゃん:「はぁ? しょっつる? ないです。 ナンプラーならあると思いますが、場所はどこかわかりませんので他の人に聞いてください。」と、冷たくあしらわれた。 そのもはや初老にさしかかろうとしているであろうおばちゃんの、不親切さに、失望した。

しょっつるを購入するという目的を果たすことができずに落ち込んだオイは、そのデパートの出口へと向かってズルズルとゾンビのように向かっていた・・。

突然、なんともフレッシュな香りが左側から漂ってきた。 顔だけそちらを向けると、「お酢」を試飲販売していた。 「お、お酢。」そうか、サッパリするもの悪くないということで、お酢の説明をひととおり聞いて、1本購入する。 黒酢である。

そのお酢屋さんは、話好きである。 酢は買ったので、もはやここには用はない。 早く立ち去りたいのではあるが、食品談義が延々と続く。 酢屋:「世の中、食品添加物だらけです。 そこらの酢でさえ、何が入っているのかわかったもんじゃ、ありません。 きちんと本物の食品を口にしておかないと、年取ったときに体がボロボロになります。 ですので、ウチの酢を、毎日ちょびっとづつ飲んで、健康体でいてください。 あ、お酢がなくなったら、また買いにきてくださいね。 それはそうと、このジャム、ウチのお酢で作っているんですよ。 添加物は一切なし。 いかが? 普通ね、シャムっていったら、増粘剤っていうのが入っているんですよ。 え?なんでかって? それはね、ジャムの水増しをするためです。 増粘剤を半分ぐらい入れると、原料のジャムが半分ですむので経済的でしょう。 儲かるでしょう。 フフフ。 でもうちのジャムは、そんなもの一切使っていません。 正直に作っています。 いかがですか? ジャム。」

と、早口でまくしたてられる。 話はよくわかったが、ジャムはいらん。 酢だけでよい。 こういう風に伝えると、酢屋:「あーそうですか。 でも気をつけてくださいね。 無添加食品なんていう言葉はよく聞きますけど、実際無添加の商品なんて少ないのが実情なんですよ。 たとえばね、ほらあのメンタイコとか。 あれはね、ホニャララ○×△■・・・なんですよ。」 オイ:「へぇー。」

(オイのいかにも感心した風のうなずきに、お酢屋は気をよくして、目がギラリと輝く。)酢屋:「それでね! ウドンってあるでしょ、うどんね。 あのウドンっていうのも、冷凍ウドンでもそこそこ美味しいでしょう。 ツルツルシコシコしてて。 あなたの食べているそのウドンの喉ごしって、ホニャララ○×△■・・・だったりするんですよ。」 オイ:「あらそう。」

もはやこれまで。 コイツには付き合ってらんない。 帰る。 歩いて帰りながら、お酢屋の話し方を思い出しながら、なんだかうどんが食べたくなって、うどん屋さんへ向かう。 熱いうどんをすすりながら、あの美味しかった讃岐うどんのことを思い出したりもした。 うどんっておいしいなー。 どうして塩と小麦粉、水だけでつくられているのにこんなに美味しいんだろうかうどんって。 うどんのことで頭が混沌としてくる。 また今日も、うどんを手打ちして食べようかな。 いやいや色んなウドンを買ってみようではないか。

便利な世の中である。 ネットで「うどん」と検索すれば、山ほどでてくる色んな情報。 もはや、情報が多すぎて、なにがなんだかわからん様相を呈してきた。 でもうどんだし。 そんなに高価なものではないしということで、手当たり次第、よさそうなものを買ってみる。

inaniwaf

大体どれも美味しかったんだけど、喉越しのよさ、コシで考えると、佐藤養助商店の、稲庭ウドンがベストであると思われた。 うどん自体は細いんだけど、「コシ」があるわけだ。 くわしい製法は、佐藤養助商店のウェブサイトを見ていただくと、よくわかる。

佐藤養助商店

2006/11/24 酒肴

炙りアジ

abiruazi

その堂々とした体躯のアジをサッとおろして、その半身に鉄串を打ち込み、直火で炙ると、「バチバチバチッ」と油のはじける音がする。

およそ15秒ぐらい、猛烈な火の中で炙ると、キッチンに香ばしいにおいが充満してきて、よだれがたれる。

炙ったアジをぶつ切りにして、半身の姿のまま皿に盛り、右端から順番につまんでいくと、酒がとまらなくなる。 左端まで全部食い終えた頃には、ベロベロになっている。 ああ今日も、幸せな一日だった。

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