佐藤養助:稲庭饂飩
とあるデパートの地下食品売り場にて。 オイは「しょっつる」を探していて、なかなか見つけることができずに、売り場のおばちゃんに尋ねてみた。
「あのー。 シ、しょっつるって置いてますか?」
おばちゃん:「はぁ? しょっつる? ないです。 ナンプラーならあると思いますが、場所はどこかわかりませんので他の人に聞いてください。」と、冷たくあしらわれた。 そのもはや初老にさしかかろうとしているであろうおばちゃんの、不親切さに、失望した。
しょっつるを購入するという目的を果たすことができずに落ち込んだオイは、そのデパートの出口へと向かってズルズルとゾンビのように向かっていた・・。
突然、なんともフレッシュな香りが左側から漂ってきた。 顔だけそちらを向けると、「お酢」を試飲販売していた。 「お、お酢。」そうか、サッパリするもの悪くないということで、お酢の説明をひととおり聞いて、1本購入する。 黒酢である。
そのお酢屋さんは、話好きである。 酢は買ったので、もはやここには用はない。 早く立ち去りたいのではあるが、食品談義が延々と続く。 酢屋:「世の中、食品添加物だらけです。 そこらの酢でさえ、何が入っているのかわかったもんじゃ、ありません。 きちんと本物の食品を口にしておかないと、年取ったときに体がボロボロになります。 ですので、ウチの酢を、毎日ちょびっとづつ飲んで、健康体でいてください。 あ、お酢がなくなったら、また買いにきてくださいね。 それはそうと、このジャム、ウチのお酢で作っているんですよ。 添加物は一切なし。 いかが? 普通ね、シャムっていったら、増粘剤っていうのが入っているんですよ。 え?なんでかって? それはね、ジャムの水増しをするためです。 増粘剤を半分ぐらい入れると、原料のジャムが半分ですむので経済的でしょう。 儲かるでしょう。 フフフ。 でもうちのジャムは、そんなもの一切使っていません。 正直に作っています。 いかがですか? ジャム。」
と、早口でまくしたてられる。 話はよくわかったが、ジャムはいらん。 酢だけでよい。 こういう風に伝えると、酢屋:「あーそうですか。 でも気をつけてくださいね。 無添加食品なんていう言葉はよく聞きますけど、実際無添加の商品なんて少ないのが実情なんですよ。 たとえばね、ほらあのメンタイコとか。 あれはね、ホニャララ○×△■・・・なんですよ。」 オイ:「へぇー。」
(オイのいかにも感心した風のうなずきに、お酢屋は気をよくして、目がギラリと輝く。)酢屋:「それでね! ウドンってあるでしょ、うどんね。 あのウドンっていうのも、冷凍ウドンでもそこそこ美味しいでしょう。 ツルツルシコシコしてて。 あなたの食べているそのウドンの喉ごしって、ホニャララ○×△■・・・だったりするんですよ。」 オイ:「あらそう。」
もはやこれまで。 コイツには付き合ってらんない。 帰る。 歩いて帰りながら、お酢屋の話し方を思い出しながら、なんだかうどんが食べたくなって、うどん屋さんへ向かう。 熱いうどんをすすりながら、あの美味しかった讃岐うどんのことを思い出したりもした。 うどんっておいしいなー。 どうして塩と小麦粉、水だけでつくられているのにこんなに美味しいんだろうかうどんって。 うどんのことで頭が混沌としてくる。 また今日も、うどんを手打ちして食べようかな。 いやいや色んなウドンを買ってみようではないか。
便利な世の中である。 ネットで「うどん」と検索すれば、山ほどでてくる色んな情報。 もはや、情報が多すぎて、なにがなんだかわからん様相を呈してきた。 でもうどんだし。 そんなに高価なものではないしということで、手当たり次第、よさそうなものを買ってみる。
大体どれも美味しかったんだけど、喉越しのよさ、コシで考えると、佐藤養助商店の、稲庭ウドンがベストであると思われた。 うどん自体は細いんだけど、「コシ」があるわけだ。 くわしい製法は、佐藤養助商店のウェブサイトを見ていただくと、よくわかる。