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筒井康隆 『アホの壁』
ええがな
(more…)ある結婚式に出席した時のこと。 控室にいると、別の結婚式の親族がいる向かいの控室から、興奮した年配の女性の声が聞こえてきた。 サスペンダーを忘れてきた男性に向かって、代わりにベルトを締めるように言っているらしい。
「そうやがな、ベルト締めたらええがな。 サスペンダー忘れてきたんやったら、ベルト締めたらええがな。 そのベルトでええがな。 ええベルトやがな。 そうやがな。 ベルト締めたらええがな。 そのベルトでええがな。 そのベルト締めたらええがな。 そのベルト締めんかいな。 そやがな。 サスペンダーないねんさかい、ベルト締めなあかんがな。 そのベルトええベルトやがな。 それ締めたらええねん。 そやろ。 ベルト締めんかいな。」
声高にえんえんとやるのだが、誰もうるさいとは言わない。 結婚式でもあることだし、恐らくこの女性は結婚式だというので興奮しているのだろうが、そんな時でなくてもある程度はこうなのだろうから、みな慣れてしまっていて何も言わないのだろう。
筒井康隆 『アホの壁』より引用
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