塩野七生『男たちへ』
教訓と刺激
教訓は、上の者が下の者に与えるものであり、刺激は、平等の者か下位の者が、上位者に対する時の、優雅で効果的な武器である。
外国人の多いシンポジウムの席にて
よくある日本人の挨拶に「お忙しいですか?」というのがある。 あなただったらどう答えますか? 会場にいた外国人たちは異口同音「不幸にして」と答えた。
ところが日本人は違います。 幸いにして、という意味を込めつつ「おかげさまで」と答えます。
基本とは
基本とは、何かワケがあって確立したものだから、それをくつがえすもうひとつの基本スタイルでも創造しないかぎり、軍配は従来のスタイルにあがり続ける。
スタイルとはなにか
誰も知らない。 が、見ればそれとわかるのがスタイルだ。 『ハイ・ライフ』タキ より
殺し文句について
- 殺し文句とは、剣を使わずに相手を殺す方法。
- 相手のスキをついてグサリと一突きで殺さなければ効果はない。
- 性別は関係ない。
- 真偽、100%ではないということを使うほう、使われるほうが認識している必要がある。
- 言葉で殺すわけだから、相手が最も欲していることを的確に察知する能力が使い手には要求される。
他国に影響を与える文明文化を創造するか否か
ギリシアもローマも、フィレンツェもヴェネツィアも、まずはじめにお金をもうけた。 文明文化を創造したのは、その後の話。 お金が無ければなにもできない。 スペインだってオーストリアだってフランスだってイギリスだって、アメリカだって、まず最初にお金持ちになったのだ。
お金持ちになった民族がみな他国に影響を与えるほどの文化文明を創造したのかというとそうでない。 その違いは何か? どうやら、その民族に美的センスがあるか否かにかかっているのか、とも思っている。
やさしさ
若者が、優しくあるはずないのである。 すべてのことが可能だと思っている年頃は、高慢で不遜であるほうが似つかわしい。
優しくあれるようになるのは、人間には不可能なこともある、とわかった年からである。 自分も他者も、限界があることを知り、それでも全力を尽くすのが人間とわかれば、人は自然と優しくなる。 優しさは、哀しさでもあるのだ。 これにいたったとき、人間は成熟したといえる。 そして、忍耐をもって、他者に対することができるようになる。
成功する男とは
- 身体全体からえもいわれぬ明るさを漂わせる男。 静かな立ち振る舞いの中にも明るい雰囲気を漂わせている。
- 暗い面ばかりに目がいく人、ではない男
上手に年をとるために
- 自分の年をいつも頭に刻み込んでおく。
- 自分の年と共存共栄の方法を考え実行する。
- 強いて若作りをしない。
- 自然体でいること。
- 一箇所どこかに派手な色を使うこと。
- 恋をすること。
- 優しくあること。
- 清潔であること。
- 疲労を見せるのを恐れないこと。
- セックスは、九十歳になっても可能だと思うこと。
好きな食べ物
吉田茂にこうたずねた「好きな食べ物は何ですか?」 吉田はこう答えた「人間さ。 人を喰うのが好きなんでね」
メモ
- 男女関係ほど面白いものはない。 一国の外交だって、所詮はこの関係と同じものに帰着するといってよいぐらいに、男女関係は、人間関係の基本だ。
- 真実とは所詮、その人が真実と思いたいものにすぎないのではないか@羅生門
- ケンカは相手の土俵にあがって、相手の手法にのっとってする必要がある。 そうすればケンガがケンカに終わらない。
- 文化が輸入される場合は、心まで輸入しないとおかしなことになる。
- 人間は所詮、人間対人間の関係で成り立っている。
- 人間は男女に限らず二人でいれば、何かを話さねばすまない動物である。
- 黒澤明はよく「素敵だ」という表現を使ったそうだ。
以上、塩野七生の『男たちへ』から気になったところをメモ。