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2007/12/25 雑記

クリスマス、餅つき、そして地頭鶏

地鶏

今年もイブがやってきた、大忙しだ。 近頃は大体このように過ごしているわけだが、もはやオイは料理長と勝手に呼ばれているわけで、大勢の食事を、ほぼひとりで用意しなければならないという境遇にある。 オイ家は子供が3人いるし、その他の家族は毎年どこかで子供が生まれているのでだんだんと人が増えてきている。 少子化なんてハッタリのようだ。

今年中核をなすメニューはローストチキンピザローストビーフだった。 クリスマス会にこれらの料理があれば、あとはチョコチョコ持ち寄ったものをつまめば十分である。

オイは夕方にはローストチキンの仕込みを始めなければいけなかったわけだが、なんとこの日に餅つきをするので手伝えとかいう緊急の予定を勝手に組み込まれており、マジかとゴネつつも、どうせやらなければならないのならばサッサト済ませてローストチキンに取り掛かりたかったので、半ば張り切って餅つき現場に自転車で向かった。

「あー、こんちゃーッス」と到着した時にはすでに石ウスを男たちが取り囲んでおり、ペッタンペッタンはじめていた。 その横ではカンコロモチ作りに励む婆さんたち。 暮のほほえましい光景だなーっとボーっとしているわけにはいかない。 さっそく石うすの前に向かう。

おそらく中学生と思われる少年が、へっぴり腰でペチャ、ペチャ…と餅をついており、周囲のおじさんから野次られたり、顔を赤らめたり、石うすの横っちょに杵(きね)をぶつけてしまい、杵のくずが餅にまぎれこんだとかでやはり野次られたりしている。

その少年と向かい合わせになり、一緒に餅をついている人物は小柄ながら腰がはいった杵さばきでいかにも熟練者風で、杵を振り下ろすスピードが違う。 2人は石うすをはさんで向かい合い、餅を交互についているわけだがリズムが合わず、度々中断することになる。 これでは餅をついているのかジャレているのかよくわからない。

少年が皆から野次られすぎて顔面がライチのように真っ赤になってフリーズしたのをキッカケに、オイと交代することになった。 餅覚悟しろ、オイはモロつくよ、さっきの少年とは違うぞ、つきまくるよ、という気構えだ。

熟練者を敬い、熟練者のリズムにあわせて杵を振り下ろす。 一瞬の遅れが命取りとなり、杵どおしをぶつけてしまった日にゃ、また周囲から罵詈雑言が浴びせかけられるという状況だ。 熟練者はまるで自分の餅つきテクニックを誇示するかのように、腰を入れ、だんだんと杵を振り下ろすスピードをあげているように思われる。 「さあ、オイ、どんどん、ついて、こい、おくれ、んなよっ!!」という風に。

こっちは助っ人で呼ばれてわざわざ来てやったんだ、ホントはクリスマス会の準備を家でゆっくり集中してやってたかったんだかんな、たかが餅つきごときで、失態をさらすわけにはいけねえ、と妙な意地が芽生えてきており、杵を振り下ろすたびになんだか祭りモードになってきて、版画を彫っている最中の棟方志功のように夢中で杵を振りかざした。

餅つきというものは、石うすの中のもち米をただ単に杵でついておればよい、という単純なものではない。 ついているスキを見計らって、巧みに手を餅に差し伸べ、途中でまとめてやらねばならない(これを何というのだろうか)。 この役割を担う人が一人必要なのだが、いない。 なのでしばらく餅をついたら手を休め、手を水で濡らし、自分たちで餅をまとめ、また杵を持ち、つきはじめねばならない。 非常に能率的でない。

以前はこの役の上手な人物がいたらしいのだが、ある年運悪く杵で手をグシャリとやられたらしく、それ以来その役を降りたのだという……。

とにかく餅をつき終わり、帰宅して、ローストチキンの準備にとりかかった。 ていうかもう17時じゃないかマズい、皆が来る。 大急ぎで丸鳥の下処理をし、ローストする前にただひたすら油を回しかけるという地味な作業を延々と繰り返す。 美しく仕上げるためにはこれを入念に行わねばならない。 油の温度が高いとすぐに真っ黒になってしまう。

まだ来てほしくないなと思っていたら来てしまうのが客で、ゾロゾロとあがりこんでくる。 「あれ、まだメシできてないの?」と無責任な態度をとる無礼者がいる。 鶏に油をかけつつ顔をのぞかせ「わかっとるっちゃー、もうちょいまっとけボゲーッ」と半ギレ状態になる。

皮がこんがりいい色になった鶏をオーブンにいれて、つぎはピザの生地伸ばしをはじめる。 ピザは近所の住人にも配達してあげるという約束を嫁が勝手にしてしまっているので大量に作らねばならない。 なので今日はオーブンがフル稼働なのだ。 ということは随時焼け具合をチェックしなければいけないのでオイはキッチンに閉じこもりっきりとなる。 さらにやれ氷がないとか、小皿をよこせとかいう注文にも迅速に対応せねばならないし。

焼きあがったローストチキンを丸のままテーブルにのせると「オォー」という歓声があがる。 クリスマスといえばやはりこれだ。 しかし子供たちは誰かがもってきたケンチキに手を伸ばす。 「あーっチョイマテ。 まずは自家製ローストチキンから食ってくだせえ。 せっかく油ジャジャーかけて作ったんだから」 宴の開始だ。

オイはピザを一枚ずつ焼き上げなければならない。 ピザの上にイロイロのせて、オーブンに入れる。 焼けるのを待つ間、次のピザのセットをして……という風に忙しい。 時折アサリバターを作れだとかお湯割りひとつとかいう注文にも対応しなければならない。 忙しいがオイ自身も宴を楽しみたい。 キッチンでキンキンに冷えたプレミアムモルツを開けて飲りはじめる。

肴は冷凍庫から見つけ出したエダマメ。 他に目についたものはない。 イカがあればミサイル焼きにでもするのだがない。 うーんエダマメだけでは気持ちよくないな、なんかないかなんかないか…あった。 真空パックされた宮崎地頭鶏

地頭鶏とは「じとっこ」と読む宮崎特産の鶏で、パッケージには例のどげんかせんばいかんの元軍団知事のイラストが描かれたシールが貼られてある。 一口大になっており炭火で焼かれている。 適度な歯ごたえとにじみ出る肉汁がお気に入りで、何袋か買いだめしておいたものである。 レンジでチンすればすぐに食べられるが、あいにくピザを焼いているので使用できない。 それならば、ガスコンロに網をのせ、直火で炙って手っ取り早く食ってやろうじゃないか、という図がトップの写真。 延々とピザを焼きながら、ビールを飲みつつ、地頭鶏をつまんだのだった。 酒にも焼酎にも合う。

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