娘と一緒にドーナツを作る
休日、娘と約束していたことがあった。 それはドーナツ作り。
娘は誕生日プレゼントで手作りドーナツセットをもらい、すぐに試してみたかったのだが次男というかなり強力な活動家がいるために遊ぶ隙をうかがう他なかったのだ。 成人の日、早起きして一緒に作り始めた。
ドーナツの型とドーナツの生地をシェイクするための容器がセットになったおもちゃで、はっきりいってこんなもんなくてもドーナツぐらい作れるだろう、とつい思えてしまうほどのものだ。 でも娘にとっては大事な大事な、プレゼント。 セットをフル活用してドーナツを作らなければ、意味ないのである。
はじめるまえに、まずは身支度を整えなければならないと娘は言う。 保育園で使っている三角巾とエプロンをちょうだい、といわれ衣装タンスを探してみるも見つけることができない。 それらの場所は、やはりカミさんに聞くしかないが、あいにくカミさんは赤ちゃんの世話で一杯一杯だ。
ピンチ時のどらえもん状態とはこのことか。 タンスの中身をほじくりかえしてようやく見つけた。
家庭で用意するものは、ホットケーキの素、砂糖、卵、牛乳。
各分量を説明書通り正確に測り、シェイクする容器に入れる。 ホットケーキの素なんてウチにはないので、普段作っているレシピでホットケーキの生地を調合する。 生地が少々硬いような気もしたが、とにかく容器に流し込んでフタを閉じ、シェイクしてみることにした。
予想通り、生地が硬すぎてふることができなかった。 やはり市販のホットケーキの素を使わねばいかんのだろう。 生地を牛乳でのばして再度挑戦。 今度は軽快に振り回すことができた。
次は数珠繋ぎになったドーナツの型へ生地を流し込む作業。 型にある線まで生地を流し込むよう説明書に指示がある。
娘は慎重に注ぎ始める。 型がこんだけ小さいので線までキッチリ注ぐのは大人でも困難、オチョコにバケツから水を注ぐようなものだ、と感じていたところやはりその通りだった。 線を大幅に超えて生地を流し込んでしまった。 二人であせる。
でもまあ、とりあえず作ってみようよ。 そのまま気にせず全ての型に生地を注いでしまうよう促した。 盛りだくさんに生地を盛り込まれた型にフタをして、電子レンジにでチンすること50秒。 たったこれだけでドーナツが作れてしまう予定。
ドキドキのなか電子レンジのドアを開くと、そこに現れたドーナツの型は、まるでマグマが噴出した火山のように頂上から生地がたれあふれていた。 「えっドーナツは・・・」娘は動揺を隠せない。
型をとりだし、開いてみるとそこには、とてもじゃないがドーナツとは呼べない物体があった。 しかも生煮えだ。 こんなものは食えない。 再度レンジで30秒ほどチンして、型から取り外し脇にのけておく。 あとで丸揚げして食ってみよう。
気を取り直して今度はスプーンで生地をすくい、ドミノを並べる時のように慎重に、型の線のところまでキッチリと生地を流し込む。 そしてフタをしてチンすること50秒。
今度は箱にある挿絵通りにきれいなドーナツができた。
「やったね!」と、感動を分かち合うつもりで声をかけると不満げな顔。 「だって、チョコがかかってないじゃん。」とつぶやく。 それはトッピングとして別途用意するよう説明書にある、ということを伝えると、今回の作業で、どうやら「ミスド」みたいなドーナツが作れるものだと想像していたらしい。
フカフカのドーナツをかじってみると、まるで蒸しパンのような味がした。 一応ドーナツ作りは成功になるが、このままでは終われそうもない。 材料をそろえてミスドのようなドーナツを作らなければ、娘は納得してくれないだろう・・・・・・。