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2007/12/25 雑記

クリスマス、餅つき、そして地頭鶏

地鶏

今年もイブがやってきた、大忙しだ。 近頃は大体このように過ごしているわけだが、もはやオイは料理長と勝手に呼ばれているわけで、大勢の食事を、ほぼひとりで用意しなければならないという境遇にある。 オイ家は子供が3人いるし、その他の家族は毎年どこかで子供が生まれているのでだんだんと人が増えてきている。 少子化なんてハッタリのようだ。

今年中核をなすメニューはローストチキンピザローストビーフだった。 クリスマス会にこれらの料理があれば、あとはチョコチョコ持ち寄ったものをつまめば十分である。

オイは夕方にはローストチキンの仕込みを始めなければいけなかったわけだが、なんとこの日に餅つきをするので手伝えとかいう緊急の予定を勝手に組み込まれており、マジかとゴネつつも、どうせやらなければならないのならばサッサト済ませてローストチキンに取り掛かりたかったので、半ば張り切って餅つき現場に自転車で向かった。

「あー、こんちゃーッス」と到着した時にはすでに石ウスを男たちが取り囲んでおり、ペッタンペッタンはじめていた。 その横ではカンコロモチ作りに励む婆さんたち。 暮のほほえましい光景だなーっとボーっとしているわけにはいかない。 さっそく石うすの前に向かう。

おそらく中学生と思われる少年が、へっぴり腰でペチャ、ペチャ…と餅をついており、周囲のおじさんから野次られたり、顔を赤らめたり、石うすの横っちょに杵(きね)をぶつけてしまい、杵のくずが餅にまぎれこんだとかでやはり野次られたりしている。

その少年と向かい合わせになり、一緒に餅をついている人物は小柄ながら腰がはいった杵さばきでいかにも熟練者風で、杵を振り下ろすスピードが違う。 2人は石うすをはさんで向かい合い、餅を交互についているわけだがリズムが合わず、度々中断することになる。 これでは餅をついているのかジャレているのかよくわからない。

少年が皆から野次られすぎて顔面がライチのように真っ赤になってフリーズしたのをキッカケに、オイと交代することになった。 餅覚悟しろ、オイはモロつくよ、さっきの少年とは違うぞ、つきまくるよ、という気構えだ。

熟練者を敬い、熟練者のリズムにあわせて杵を振り下ろす。 一瞬の遅れが命取りとなり、杵どおしをぶつけてしまった日にゃ、また周囲から罵詈雑言が浴びせかけられるという状況だ。 熟練者はまるで自分の餅つきテクニックを誇示するかのように、腰を入れ、だんだんと杵を振り下ろすスピードをあげているように思われる。 「さあ、オイ、どんどん、ついて、こい、おくれ、んなよっ!!」という風に。

こっちは助っ人で呼ばれてわざわざ来てやったんだ、ホントはクリスマス会の準備を家でゆっくり集中してやってたかったんだかんな、たかが餅つきごときで、失態をさらすわけにはいけねえ、と妙な意地が芽生えてきており、杵を振り下ろすたびになんだか祭りモードになってきて、版画を彫っている最中の棟方志功のように夢中で杵を振りかざした。

餅つきというものは、石うすの中のもち米をただ単に杵でついておればよい、という単純なものではない。 ついているスキを見計らって、巧みに手を餅に差し伸べ、途中でまとめてやらねばならない(これを何というのだろうか)。 この役割を担う人が一人必要なのだが、いない。 なのでしばらく餅をついたら手を休め、手を水で濡らし、自分たちで餅をまとめ、また杵を持ち、つきはじめねばならない。 非常に能率的でない。

以前はこの役の上手な人物がいたらしいのだが、ある年運悪く杵で手をグシャリとやられたらしく、それ以来その役を降りたのだという……。

とにかく餅をつき終わり、帰宅して、ローストチキンの準備にとりかかった。 ていうかもう17時じゃないかマズい、皆が来る。 大急ぎで丸鳥の下処理をし、ローストする前にただひたすら油を回しかけるという地味な作業を延々と繰り返す。 美しく仕上げるためにはこれを入念に行わねばならない。 油の温度が高いとすぐに真っ黒になってしまう。

まだ来てほしくないなと思っていたら来てしまうのが客で、ゾロゾロとあがりこんでくる。 「あれ、まだメシできてないの?」と無責任な態度をとる無礼者がいる。 鶏に油をかけつつ顔をのぞかせ「わかっとるっちゃー、もうちょいまっとけボゲーッ」と半ギレ状態になる。

皮がこんがりいい色になった鶏をオーブンにいれて、つぎはピザの生地伸ばしをはじめる。 ピザは近所の住人にも配達してあげるという約束を嫁が勝手にしてしまっているので大量に作らねばならない。 なので今日はオーブンがフル稼働なのだ。 ということは随時焼け具合をチェックしなければいけないのでオイはキッチンに閉じこもりっきりとなる。 さらにやれ氷がないとか、小皿をよこせとかいう注文にも迅速に対応せねばならないし。

焼きあがったローストチキンを丸のままテーブルにのせると「オォー」という歓声があがる。 クリスマスといえばやはりこれだ。 しかし子供たちは誰かがもってきたケンチキに手を伸ばす。 「あーっチョイマテ。 まずは自家製ローストチキンから食ってくだせえ。 せっかく油ジャジャーかけて作ったんだから」 宴の開始だ。

オイはピザを一枚ずつ焼き上げなければならない。 ピザの上にイロイロのせて、オーブンに入れる。 焼けるのを待つ間、次のピザのセットをして……という風に忙しい。 時折アサリバターを作れだとかお湯割りひとつとかいう注文にも対応しなければならない。 忙しいがオイ自身も宴を楽しみたい。 キッチンでキンキンに冷えたプレミアムモルツを開けて飲りはじめる。

肴は冷凍庫から見つけ出したエダマメ。 他に目についたものはない。 イカがあればミサイル焼きにでもするのだがない。 うーんエダマメだけでは気持ちよくないな、なんかないかなんかないか…あった。 真空パックされた宮崎地頭鶏

地頭鶏とは「じとっこ」と読む宮崎特産の鶏で、パッケージには例のどげんかせんばいかんの元軍団知事のイラストが描かれたシールが貼られてある。 一口大になっており炭火で焼かれている。 適度な歯ごたえとにじみ出る肉汁がお気に入りで、何袋か買いだめしておいたものである。 レンジでチンすればすぐに食べられるが、あいにくピザを焼いているので使用できない。 それならば、ガスコンロに網をのせ、直火で炙って手っ取り早く食ってやろうじゃないか、という図がトップの写真。 延々とピザを焼きながら、ビールを飲みつつ、地頭鶏をつまんだのだった。 酒にも焼酎にも合う。

2007/12/23 野菜

唐辛子の束ゲット

唐辛子

オイが住んでいる周辺は畑を持つ老人が多く住んでいる。

息子と2人散歩しながら今度の恐竜展にはいつ行くことにするか計画を練っていたところ「オーイ、オイ」と声がかかる。

道路脇を見上げると、太陽光を背に、やせた爺さんが立っていた。 S爺さんである。 このひとは数ある近所の畑のなかでも大々的に色んなものを作っておられる人物であり、収穫したものを季節ごとによく頂戴する。

この前はやさしい酸味のする柚子を沢山もらった。  その前は巨大な甘い、白菜だった。 そして今日は、唐辛子の束だった。

「軒先に吊るしておけーよう効くしぇん」ということらしい。

2007/12/21 菓子

風邪とレディーボーデン

レディーボーデン

師走になると何故か体調を崩すことが近年多く、一年の疲れがドッと出るからなのか、年とっただけなのかはよくわからんが、風邪っぽいなこりゃ。

2、3日前から左耳の鼓膜がゴボゴボいっているような気がしないでもなく、なんだか感じ悪いな、と思っていたところ、腹が痛くなってきた。 さらに口のほうもなんだか……。

今息子の保育園で、上から下から症(詳しく書くと気分を害される方がいるかもしれないのでこう言っておきます) という病気が流行っているらしく、これにかかると上からも下からととめどなくあふれ出てしまうそうな。

そこまではいかないが、なんだか胸がムカムカするし、下はとめどない…。 もしかすると……。 気がめいるというか、生活しづらくて困る。

こういうときはモリモリ食って、ガツンと寝れば直るというもの。 さーて何を食べようか。 カレー。 挽肉のいっぱい入った野菜がゴツゴツの甘い、なんのこだわりもない、普通のカレーをワシワシ食いたい! という欲求にかられる。 アルコールは一切飲みたくない。 どっちかっていうと、ファンタオレンジとかいう炭酸系のジュースを飲みたくなるのだ風邪ひくと何でかよくわからんが。

デザートにレディーボーデン系のアイスを食べたくなる。 とにかく体調を崩すと普段口にしないような甘いのもが欲しくなるのだ。

それらをたらふく食って寝転ぶ。 寝室で寝ればよいものの、何故かそうしたくない。 原因はホットカーペットだ。 ポカポカの上に転がっておくのがやけに気持ちイイのだ(キチンと寝たほうが身のためだという話もわかるのだが)

転がっている病人を前にして嫁はジャマだとか、早く寝床に引っ込めだとかいう暴言を吐く。 子供にうつったら大変だから早く病院にいけとかも言う。 突然、腹の上に息子が大ジャンプしてくる。 だからパパは現在下がアレなのだ。 いつものパパではないのだ。 そういう攻撃方法は現在大変困る。 迷惑極まりない。

顔を青ざめ、横に寝返ろうとするが、体中が痛くて大変だ。 少しずつ体が横になるたびに「よーっこらしょ、うぅ…背骨がイタイ腰が痛い」と口に出さずにはいられないほど体のあちこちがまるで筋肉痛になったかのように痛む。 もしかするとこれは上から下から症ではなくて別のもっとキケンな病気なのではなかろうか?と少し弱気になりつつも、老人になると寝返りだけでもこんだけ大変なのかもしれないな、と先が思いやられる。

夜中に目が覚めるとカーペットの上にひとりポツンと寝転がっていた。 あいにくフトンはかけてもらえてる。 うー、やっぱり具合が悪い。 今度はとくに上のほうが悪い。 どうにかならんかなしかし…首もイタイ。 うー…レディーボーデン食べよ。

その日ひとりで「レディーボーデンパイント(チョコレート)なめらかな口当りと豊かなコク内容量470ml発売地区全国」を平らげて、翌朝起きたら全快していた。 レディーボーデンのおかげなのかもしれない。

2007/12/17 ニュース酒肴

馬刺しと霜降り

馬刺し

嫁とスーパーへ買出しにいく。 最近マイバックを持参するようになったらしく、エルベシャプリエのナイロントート?っぽいのをクルクル丸めてうれしそうに持っている。 「おー、エコっすかエコ」と聞いてみると、それもあるがマイバックを使用してこのスーパーで買い物をするとポイントがついて得だとかどうのこうの…という話らしい。 

このスーパーはレジの男がガムをクチャクチャ噛みながら仕事するところが気に食わないのでなるべく買い物はしないようにしているのだが、マイバック持参でポイントがつくのはこのスーパーだけなのだとかでここで買い物をせざるを得ない。 嫁はかーなーりポイントが欲しいのだ。

さて今晩は何を食べてやろうか…おーっ、豚スペアリブが安い。 塩コショウ振って焼いて食べるかそれともトンコツでも作るとするか、まあどっちにしたって酒の肴になるなしかし。 ふーん、美しい牛スジ肉ですな。 国産ですかそうなんですか、ストーブの上で一日中煮込んでおいたら嬉しいことになりそうですなフフフ。 この牛タタキ、真っ黒けっけじゃん。焼きすぎっていうか、わざと焦がしているのではないだろうな、しかしその真意は謎だ。 いやしかしスーパーって楽しいな。 な、何っ! 精肉コーナーの一番隅に、それは陳列されていた。

馬刺し「半額」

馬刺しのパックに「半額」というシールが貼られている。 馬刺しが半額になっているのを見たのは人生初である。 古そうにも見えないし、その他欠陥がありそうにも見えない。 速攻、マイバックに放り込む。 このスーパーが安売りシール貼付行為を開始するのは普通夕方からであり、それ目当の主婦が殺到し、混みだすのは大体17時以降である。 今はまだ、昼前である。

馬刺し半額の理由は何なのだろうか? やはりあのニュースの影響なのだろうか。 以下、東京新聞Web版の記事を引用する。

脂注入し『霜降り馬刺し』 不当表示で排除命令『白木屋』『村さ来』など

 脂を注入した馬肉を「霜降り馬刺し」などと不当表示し販売したとして、公正取引委員会は十四日、景品表示法違反(優良誤認)で、大手居酒屋チェーン運営会社三社を含む計五社に排除命令を出した。三社は「白木屋」などを運営するモンテローザ(東京)、村さ来本社(同)、「八剣伝」などのマルシェ(大阪市)。

残る二社は業務用スーパー「A-プライス」を運営するトーホー(神戸市)と、食肉加工会社ファンシー(東京)。

公取委によると、居酒屋三社は二〇〇四年十月から今年五月ごろにかけて全国のチェーン店で、馬の脂を注入した加工肉で作った料理を「霜降りとろ桜刺し」「厳選とろ馬刺し」などと表示し提供、計約七億円を売り上げた。不当表示があった店舗数は、モンテローザが五百七十七店、村さ来二百五十一店、マルシェ二百六十五店。

ファンシーは昨年四月から今年八月まで、中国の業者に製造委託した注入加工肉に「極旨霜降り馬刺し」と表示し販売。トーホーはファンシーから仕入れた製品に自社のラベルを張り、全国のA-プライス九十三店で販売した。

注入加工肉は赤身より味が良く、業者間では「馬脂注入」と明示して取引される。価格は赤身の一・五-二倍だが、本物の「極上霜降り馬刺し」と比べると半額以下。公取委は「表示がなければ、消費者は『霜降り馬刺し』が加工品とは判断できない」としている。

モンテローザの村田祥己総務部長は十四日、経済産業省内で記者会見し「『霜降り』『とろ』という言葉は定義があいまいだがイメージが良く、お客さまにご注文いただけると考えた。反省している」と陳謝した。

と、いうことらしい。

肉に脂肪を人為的に加えるという行為が行われていること自体は「お客に言えない食べ物の裏話」という本を読んで知っていたわけだがこれが「牛だけ」に行われているものではないということは知らなかった。 ちょこっと本を引用してみる。

霜降り肉

じつは、安値の霜降り牛肉には、「工場」で加工されたものが混じっているのだ。 その加工法は二とおりあって、一つは赤身肉を薄く切り、それにアイロンがけにした薄い脂身をはさみ込んでいく方法である。 卵白や牛乳などを接着剤代わりにして、赤身肉と脂身を張り合わせ、幾層にも重ねていく。 こうして、肉の塊をつくり、輪切りにすると、霜降り模様入りの“高級肉”ができあがるというわけである。

もうひとつの方法は、、赤身肉の塊に、加熱して液状にした脂身を注射針で注入するという方法である。 全体にまんべんなく脂肪が入るように、長短さまざまな注射針をたくさん並べた加圧注入装置で、霜降り模様がつくられる。 その後、肉全体をよくもんでから、冷やして輪切りにすると、霜降りの牛肉のできあがりとなる。

この工場で加工された”模造霜降り牛肉”は、味も本物そっくりなら、栄養的にもほとんど変わらない。 口に入れても、よほどのグルメでなければ、見分けられないところまで”技術水準”は上がってきている。

だ、そうだ。

オイが2、3日前に食べたすき焼きに使用した牛肉も、もしかすると実は人工的に作られた霜降り肉だったのかもしれない、なんていう話もあるのかもしれない。  とにかく、人造物が出回るくらいに霜降り肉は消費者に好まれるのだ。 だが待て。

実は最近ハマっている美味しんぼに、こういう話があった。

ある人物が海原雄山先生を接待した際に、極上の牛刺しでもてなしたのだが、それを見た海原先生は一口も食べずに怒って帰ってしまった。 その理由は何か?

実は、その牛刺しが、霜降り肉だったからなのである。 日本人は霜降り肉を最高のものと思い込んでおり、どんな料理にも霜降り肉を使いたがるが、刺身に霜降り肉を使うのは最悪のことであり、おそらくマグロのトロと見た目が似ているので同じように刺身で出したりするのだろうが、そもそもマグロと牛では脂肪の性質が違う。

マグロの脂肪は低い温度で溶けるから舌の上でトロケて美味しい。 がしかし牛の脂肪は高温でないと溶けないので刺身で食べると脂肪がろうそくのようにニッチャリと歯にまとわりつくだけで、旨味を感じない。 霜降り肉信仰の愚かしさもそこに極まれり。

という話が、美味しんぼ18巻第一話にある。 なんでも霜降りならば極上、というわけではないのだ。 でもこれが馬にもあてはまるのかどうかはよくわからない。 でも霜降りという言葉に過剰反応するのは考えものだという結論でよいのではないか。

「オイ、ちょっと! 荷物を持ってよ」

おっと嫁から呼ばれてる。 早く行かないと馬刺しを買ってもらえなくなるかもしれないので今日はこのへんで失礼。

2007/12/11 マズい

ツリーとかラーメンとか

焼きそば

友人は最近家を建てたし、子供も生まれたし、酒も旨いしでいいことずくめらしい。 せっかくの忘年会なのに、自分の話ばかりしてやがる。

自慢の新居にはクリスマスが近いからと、電飾を方々に巻きつけて飾り立てているらしく「おたくのイルミネーションはすばらしいですね」と近所で評判なのだとか(後日実物を拝見したが趣味の悪いデコトラ、もしくはパチンコ屋のようにけたたましく煌いていたそのうちジングルベールとかいうお決まりのメロディを周囲の迷惑も考えずに勝手に垂れ流し始めるにちがいない、いやそうに違いないと確信した)。

とにかく今年電飾デビューを果たした彼は、もっぱら付近にある、やはりイルミネーションに力を入れているお宅のことが気になって仕方がないのである。 この時期になると電飾を頑張っておられるお宅を数多く見受ける。 電飾デビュー氏は夜、車に乗ってる最中も、よそのお宅のイルミネーションが気になって仕方がなくて運転に集中できないらしく、やれあの家の電飾はまだまだビギナーだとか、センスが感じられないだとか、あそこの家はサンタがまさに今、家に無断で進入しようとしている瞬間を等身大の人形を使い上手に表現している。 よし、これは来年、いや今年からでも遅くない、是非我が家にも取り入れようとか「まけた~、この家には完敗。 第一家の規模が違うし、イルミネーションも上手い。 あの星型の電飾なんておそらく自作だろうが大したものだ。 是非お近づきになりたい」とかぬかす。 彼以外、誰も、そのことに、興味はないのだ。

しかしオイ家には3人の子供がおり、毎年サンタさんがいらしてくれているわけだから、ほんのちょっとクリスマス臭を漂わせておかなければ失礼だというもの。 玄関入ってすぐのところに、クリスマスツリーを設置している。 このクリスマスツリーのことがオイは大嫌いで、その安っぽさとかチカチカ明滅する電球のことがどうしてもガマンならず、どうせツリーを飾らなければならないのならばいっそのこと、モミの木を一本切り倒してきて、それを飾り立てたいくらいだ。 いや、それならばどうせ毎年必要になるものだし、庭に立派なモミの木を一本植えておけばよいのではないか、と常々考えているのだがならず。

このような電飾ネタでこの忘年会は終わった。

シメはやはりラーメンであり、今日はどこに行こうかなとしばらく考える。 いつも同じところばかりではアレなので、それぞれ意見を出し合ってもらう。 でも大体皆の意見は一致することになる。 美味いラーメン食わせてくれる店ってなかなかないのだ。 でもたまにはあえてマズい、もしくはそれほどでもないラーメンというのもススッテみるべきである。 これもいわゆるひとつの舌の勉強であると半ば強引な展開にもっていく。

そのとある一軒の「そうでもないお店」に初めて行ったのは、かれこれ2、3年前になるであろうか。 「シメに最適なアッサリスープの美味しいラーメン」という説明のもと連れて行かれたハズなのに、マズいなんて代物ではなかった。 食品としての評価はもはや不可能である。 商売云々は抜きにして、こんなラーメンを他人に平気で食べさせることができる人物とは話をしたくない。 人として合わないムリ。 という店だ。 トンコツとか醤油とかナントカ、ジャンルはすでに超越していると思われる。 この店に、突然、無性に行ってみたくなったのだ。 最上のマズーを体験してみたいのだ! 怖いもの見たさなのである! 酒の勢いであることは間違いないのだが。

オイ以外の人間もそこはマズいと知っている。 でもなかなかつぶれないところを考えると、以前はたまたま調子悪かっただけなのかもしれない。 いつもはもっと立派なラーメンを作っておられるのかもしれない。 そういう期待は一切せずに、そのラーメン屋へ向かう。 以前のように、ダルそうな2人がオイたちを出迎える。 今回はシメというか、ひとつのテストなので、皆普通のラーメンを一斉に注文し、様子をみる。

次々に客が入ってきて、満席になる。 厨房内との会話を横で聞いている限り、常連であることは間違いないようだ。 「いつもの」と注文している。

非常に狭い厨房内で男がラーメンを作っている。 オイたちの前に3人の客が入っており、3つのどんぶりをカウンターの上に置き、まずはスープを注いでいる。 次にとなりの男が麺を茹でて、それぞれのどんぶりに茹で上がった麺をあげていくわけだが、まずその作業がスムーズではないところが目に付いて、非常に不安になる。 素人といっても過言ではないその手つきを前に我々は意気消沈する。 やはりこの店に入ったのが間違いだったのだ。

危なげに3つのドンブリに麺を入れ終えた男。 以外や以外、水切りだけは平ザルを用いてしっかり丁寧に行っていたのが印象的だ。 さあ、あとはドンブリの中の麺を2、3回いなしてからネギでも散らし、客に出すだけであろう。 が、その3つのドンブリを客に差し出さない。 いまだ大鍋の中に平ザルを突っ込んで残りの麺がないのかをたしかめている最中である。 それがまた沢山残っているものだから、次々にごく少量の麺が平ザルについてくるわけで……それをご丁寧にそれぞれのドンブリにチョットづつ入れていくわけ。 しかもこの際は水切りをしっかり行わないのでどっちかっていうと、くず麺の量よりもしたたるお湯の分量のほうが丼に入るのは多いくらいだ。 もはやけしからんというレベルではない。

このようなラーメン作りを目の前で見せ付けられてもはや食欲もなくなり、呆然としていたところに我等のラーメンが到着。 湯気はたっていない。 麺は若干太めのストレート。 無論、のびのびである。 スープを一口ススル。 うーん、うーん、やっぱりマズい。 はっきりと言わしてもらおう。 激マズだこれは。 腹が立つほどマズい。 オイはラーメンが好きで一応自作もする。 経験上、このラーメンの作り方ははっきりとわかる。 お教えしよう。

まずはドンブリに湯を張り、麺をノビノビに茹でて投入。 そこへ安い醤油を少なめにまわしかけてうえからネギを散らし、胡椒をふりかけるとできあがり。 化学調味料を入れたいところだが、それすらケチってごく微量投入スル…。 これで間違いなくこのラーメンを再現できる。 実際にオイが試した本当だ。 このようなラーメンを、繁華街で、一杯500円ちょっとで売っているという事実に驚かざるをえない。

夜のみの営業、立地も考慮するとラーメンをすすっている客はほぼ間違いなく酒を飲んでいるハズである。 飲んで酔って味云々よりもちょっと小腹がすいたからなにか入れて帰りたい、という客で満たされているハズだこの店は。 よって味なんかどうでもよいのだ。 おそらく粗利益は480円くらいあるはずだこのラーメンは。 長崎人として、情けなくなる。 観光客がこんなラーメンを食べたら「長崎のラーメンは激マズ」なんて烙印を押されてしまう。 真面目にやってるラーメン屋さんに対しても迷惑極まりない。 非常に残念である。

2口食べて、1口スープをすすって、どんぶりを置いた。 皆口々にマズいマズいと麺をすすった。

「じゃーラーメンもマズかったことだし、帰るか」と解散。

だけどもオイは、全然シマっていないのである。 何せほとんどラーメンを食べていないのだから。 ここからは単独行動だし何をしようと勝手だ。 よし、もう一軒ラーメン屋に行ってから帰ろう。

この店は安心だ。 いつ行っても美味しいトンコツラーメンを食べさせてくれる。 ありがとうございました、とこっちがお礼を言いたいぐらいだ。 いや、事実そうしている。 酔っていようがそうであるまいがいつ行っても美味しい。 「美味しいものを食べると人は幸せになる。 ドウシマスカッ!」とアントニオ猪木が昔淡々と語ったという話はないが、この店のラーメンを食べるとオイは幸せになる。 人によれば、化学調味料が入っているという話もあるが、問題はそこにはない。 化学調味料にたよりきって大量投入している店のラーメンは食えば一発でわかるが、この店が使っていたとしてもアクセント程度に微量なのであろう。 問題は、ないと言ってしまう。

正直にトンコツを煮て抽出したマッタリとした美味しいスープがウリのラーメン屋があったのだが、急遽、突然、こともあろうに、天変地異、いつのまにか、洗濯脱水、化学調味料だらけのラーメンを出すようになった。 その変わりっぷりは大胆かつ巧妙かつ平然、信じられなかった。 ちょうど支店を出し始める前だった。 儲けに走ったのであろう。 

なにしろ真面目に美味しいものを作ってくれるお店を大事にしたいものだ。

というふうなことがあったのだと、次の日嫁に話していたら腹が減ってきたというので冷蔵庫の中を物色すると3袋がひとつになった特売の焼きそばを発見、調理する。 麺は一気に3袋全部使用し、白菜、豚肉の切れ端と共に炒める。 添付の粉末ソースは3袋全部入れると辛くなる恐れがあったので2袋のみ使用することにして、仕上げに醤油をチョロッとたらした。

大皿に盛り、ネギを適当に切ってぶちまけ、行儀悪く2人前の箸を突っ込んで食卓へ。 嫁といっしょに向かい合って、とり皿も使わずに、大皿から直接すすりこんだ。

マズい料理を作るのって難しいとしみじみ思った。

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