モ△コの思い出
レンタル用のテレビ電話システムのマルチ商法を展開していた東京の会社と経営者に対し、消費者庁は、レンタルの需要がないことを隠して客を勧誘していたのは特定商取引法に違反するとして、業務の一部を15か月間停止するよう命じました。会社側は一部反論しているということです。
というNHKのニュースを見てフと思い出した事があった。 かれこれ十数年前の話。
仲良くなった寿司屋の大将と飲んでいたら、突如彼は儲け話を切り出してきた。 「本業だけじゃそう稼げないし、私はこれでウハウハなんです」
と。
後程資料を送るというからキッパリ断っておいたら、それでも分厚い封筒が届いてしまったので仕方なし目を通すと、こうである。
モ△コ、というファックスみたいな機械を買えば、その機械を使っているユーザーが全国に何万人もいるからその会員同士で消費が活発に行われるらしい。
たとえば寿司屋の利用者がうどんを欲しいと思えば会員の中にはうどん屋もいるからそこ宛にモ△コすると破格の値段で極上のうどんが手に入る、みたいな話だった。 おびただしい数の手書きファックスが参考資料として添えられている。
そしてモ△コを誰かに紹介して売れたらそこにマージンが発生すると…完全にマルチである。
このネット全盛の中時代錯誤もはなはだしいと、すぐに電話で断りを入れた。
その後勧誘は止んだので、この話はもう決着がついたものと、半年ほどして彼の寿司屋で飲む事にした。 「久しぶりですね」
気持ち良く飲んでいたら、なんとまだ彼はあきらめていなかったのだった。
「こないだの件、ちょうど詳しい人が今からウチに来るようになっているんですよ。 話聞いてみません?」と誘ってくるから断った。 ここに来て失敗だったなと後悔もした。
間を置かずその詳しい人物は現れた。 渡された名刺をみれば「か□めキャビン」と書いてある。
となりに座ってきて、こちらは気持ちよく食事をしているというのにモ△コの説明をこれでもかとはじめてきたのでさすがに頭にきて「いい加減にしなさい」と喝を入れたら収まった、かと思いきや「ここでは何ですから奥の座敷で」なぞ言うものだからさすがに仏の私もだまってやいなかった。
「モ△コはさておきインターネッツはご存知か?」
とブリーフケースから当時愛用していたソニーのバイオを勢いよく取り出すと、その情報弱者相手にまずは彼らの所業についてウェブ上でどのような評価がなされているのかを検索してみせた。
じっとだまって画面を見つめるモ△コ氏。 20秒ほどした所でようやく口を開いた氏は何を言ったとお思いか? 次の瞬間、私はつい爆笑してしまった。
「インターネットだったら、キーボード入力ができないお年寄りや子供向けに、音声で検索できるソフトがありますからそれを紹介しましょうか」
と、今でこそシリやアレクサもいるが、当時では画期的な手法について語り出したのだ。 おいおいモ△コはどうしたんだ。
私は咳き込みながら氏にブラインドタッチの正確さを見せつけながら「こちらは子供でも年寄りでもない」と一喝させていただいたのだった。
ぜひ、人をだますならそれ相応の教養とスキルを身につけてから現れていただきたいと思う次第である。
話は聞かずとも、その人のナリを見れば信用に値する人物かどうかぐらい判断できるのがヒトである。
ものすごく懐かしいです。私も当時つきあい始めたばかりの彼氏に、誘われてセミナーに参加させられました。人間関係こわれますよね。しかし、いまだにこのマルチが消えていなかったとは。
私も思い出してつい笑っちゃいました昨日。 説明があまりにも陳腐で、これで本当に人を騙せると思っているのかなと驚いた記憶があります。
良い寿司屋だったのでそのまま本業をがんばったら良かったんですけどね。 今ではその後の所在を検索してみる気すらおきません(笑)。