いもや
子供達が興味深そうに見ていた番組を見て絶句した。 「今日から俺は!!」じゃないか。
十代の頃たまり場の駄菓子屋に揃えてあったこのヤンキー漫画をただなんとなく読みふけった頃を思い出した。
奇抜な髪型に今思えば奇妙な学ラン。 もしかすると現代においてかえってボンタンや短ランは新鮮に映るのかもしれない。
上に書いた駄菓子屋はゲーセンも兼ねており、私は近所だったのでよく遊びにいったものだがこの店はこの近辺に生息している名だたる不良たちのたまり場であった。
小学生の頃、はじめは恐ろしかった彼らが意外と親切で面倒見が良く、仲良くしてもらった事を思い出す。
今日から俺は!!の二人を足したような、金髪でBUCK-TICKのボーカルみたいに髪を逆立てた恐ろしいワルは、道端で会えば大人もたじろぐ外見だったものの、ここ駄菓子屋ではたこ焼きをくれたり社会の裏事情を教えてくれたりと、兄のいない私にとってはまさに頼れるアニキであった。
この駄菓子屋から10分ほど歩いた小道に仕立屋があり、ここが彼らの神聖な場所だった。
たとえば先輩から譲ってもらった短ランをもっと短くしたい場合に持ち込んで「あと3センチ短くしてほしいんッスけど」というように、不良たちから絶大な信頼を得ているおじいさんの営む店だったのだ。
物心ついた時に私も何度かお世話になった事があった。
あの頃は、長ランやドカン、渡りが50センチもありすそ幅は18センチしかないようなボンタン、短かすぎて前ボタンが4つしかない短ランを、カッコイイと思っていたのだよなあと目を細めながらおじさんはこれを書いた。