虫歯決死戦

日ごろ食い物の事ばっかい考えよったら虫歯になってしもうたとばい…虫歯って子供の頃からなぜか夜中に痛み出すとさね、困ったもんで。　 日中痛み出せばすぐ歯医者に行って痛みから開放されるとばってん、なんせ夜中に痛み出すもんやけん、次の日病院に行って治療するまでの 時間は痛みにノタウチマワらんばイカンとさ、つらか時間ばい。

その日もフツーに晩飯ば食うて寝て、夜中の2時半やったとさね。　左の奥歯のメチャ痛かとさ。　もうズキズキしてね歯茎の脈打ちよるて感じさね。　鏡ば手にとって、痛かところば見てみたとけど、特に異常は見当たらんとさね。

ん、よー見たら、ややその歯の黒ずんどるたい。　歯医者に行って治療しても良かけど、虫歯って程でもなかろうて感じ。 でも痛かしな。

歯医者は大嫌いさね。

そがん人は多かやろうけど、そん中でも間違いなく全国屈指のキライっぷりばいオイは。　何でそがん歯医者の好かんごとなったかって？

ちょっと話ば聞いてくれんね。

こうして歯医者がキライになった

オイがまだ小学校1年生の時やった。

たぶん人生初の虫歯のできて、人生初の歯医者に行った時やったとさ。　その時も奥歯の虫歯で、しかも初期虫歯で痛む前やったとさね。　医者はオイばイスに座らせたかと思えば、先っぽのグイって曲がったどデカい注射針ば歯茎に「グサ」て刺したとさ。

我ば失のうたね。　暴れようにも看護婦の3人でオイば抑えつけてさね、今度はペンチで歯ば「グリグリ」て……。　しかもなんか患部じゃなくて、前歯ば抜きよるごたるとやもん…記憶しとるとはそこまでばい。

治療の終わって鏡ば見てからまたショックね。　なんと前歯の2本とも無かとさ！　何で奥歯の治療に行ったとに前歯の二本もなかとやろうか？　先生いわく、「奥歯は抜くほどでもないよ。　前歯は永久歯が生えてきそうな状態だったから抜いたよハハハ」

て。　「まあ良かさ」って軽く考えとったらさ、それからがまた大変でね。　なんと2年間前歯の生えてこんやったとよ。　カアちゃんは「先生が永久歯ば抜いたとかも」　ってバリ心配したって言いよったとばい。　だけん小学校低学年時代の写真は、前歯のないマヌケ面で元気に遊ぶ少年の姿、っていうとがほとんどばい。

そん写真ば見るたびに医者に対する怒りこみあげてきてさね。

こいが歯医者嫌いになった原因よ。

さて夜中の歯の痛み。

翌朝までの対処法としてはね、まず正露丸で虫歯付近ば取り囲むとさ。　3個ぐらい使うもんね。　そしたら歯茎のマヒしてきてね、痛みの少し和らいだような気になるとさ。　ばってん痛かとは痛かとけどね。　次は日頃愛飲しよるウイスキー響ば口に含むとさ。　そしたら歯茎の麻痺してくるけん、ヒリヒリばギリギリまでガマンしてから「ゴクッ」て飲みこむとさ。　また口に含んでからゴクッ。　また含んでゴク。　またゴク。　 だんだん歯じゃのうて脳の方が麻痺して気分良うなってくるとね(笑)。　そしていつの間にか寝ることのできたとさ。

次の日、ここに書くことも恐ろしかごたる治療内容ば聞かされた後、神経ば抜かれた。　オイは歯の根の長ーて、麻酔の効きにくからしくて追加で３回も麻酔ばされたとよ。　痛みは収まったばってん、いっときは通院せんばイカンて思うたら、ものすご憂鬱かとさね。

この歯医者は口コミば信じて選んだとけど、先生は先生でなんか独特やってね。

「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あの～。　し、し、し、し、しんけいがぁ～………」

すごいドモリで言葉の全部が妙に丁寧な敬語でね。　看護婦さんにも患者にもそうで。　こいいう先生やけん、治療についての会話ばするにも

「医者：こ、こ、こ、こ、こんな日程でち、ち、治療をし、し、します。　ハイ」

て言うけんこっちもつい、「ハ、ハ、ハイわかりました」っていう風にうつってしもうてね。

こん先こんままココで治療ば続けても良かとやろかて悩んどるとばい。