穴と虫の序章
いつの間にか次女は一輪車のトリコになっていた。
なんでも小学校にズラリと常備されているらしく、休み時間には運動場いっぱいに一輪車がせわしく動き回る光景が、今年のスタンダードになっているのだとか。
娘は一応乗れはするものの、クラス一の達人アキラ君よりももっと上手に乗りこなしたいという本人の強い願望があったので、自宅用を購入して休みに公園で練習に励む事になった。
彼女が楽しそうに運転している間、私には何もやることがない。 だからキンドルで読書をしたり、ニコンで自然を撮ってみたり、自由に時を満喫している。
巨木の下に腰を下ろしてひとやすみ。
「これってクヌギかなあ。 夏にクワガタ寄って来そうね」と見上げたところで、枝に小さな穴を見つけた。
「もしかして、キツツキ?」
よく見れば、その木のいたる所にまったく同じ大きさの、ぱっと見8ミリ程度のまん丸い穴が、まるで電動ドリルで開けたかのような美しい円であちこち開いている事に気がついた。
とっさに小枝を手に取り穴に入れてみるも、奥行きは2センチにも満たない。
もしや昆虫採集目的の、ヒトの仕業であるまいなと思うと同時に「木 穴 小さい」というキーワードで検索してみたのだ。
するとまさかの、驚きの真実が判明したのだった。
カミキリムシの保育器
この穴は、カミキリムシが開けたものらしい。 穴の中に卵を産み、孵化した幼虫は木の中をワシワシ食べ進み、成長してゆくのだという。
そこまでの情報を読んでからスマホをしまい、又しげしげと木を見回してみた。 するとまさに、赤くて小ぶりなカミキリムシが止まっているではないか!
内部を食べ荒らされた木はやがて、枯れてしまうのだという…。
カミキリムシ対策
たとえば庭の木がカミキリムシの標的になってしまった場合は、空いた穴に殺虫剤を噴射すると効果的だという情報を得た。
そこでとっさにホームセンターに向かい、棚を探せばちゃんとカミキリムシ専用のものが置いてあった。 早速穴に噴射して、しばらく様子を見ていると、
穴から幼虫が這い出てきて、木の表面を少し進んだところで下に落ちた。
この殺虫剤、極めて効果的だ。 もしもカミキリムシでお悩みの方がいらしたら、ぜひ本対策をオススメする。
カミキリムシと少年
夏休み、田舎で一日中遊び回るのがファミコンよりもぜんぜん楽しかった。
カブトムシを採りにいけば、樹液の泉に所狭しと昆虫たちは肩寄せ合って食事をしていた。
カブト、クワガタ、スズメバチにカミキリムシ。 ゴマシオ模様で凶悪なキバを持つこの虫の事が割と好きだった。
飼ったりもした。
ところがある日、果樹園で遊んでいたら、ミカンの木に止まるカミキリムシを見つけたので早速ゲットしておじさんに見せたところ、取り上げられて潰された。
かなりショックな出来事だったから今も覚えておりこうして書いているワケだが、なるほどそういう事だったのか。
追記:カミキリムシの計画性(2018/07/15)
この投稿をしてしばらくし、また公園に出かけたら若いクヌギの木に、今度はかなり大きな赤いカミキリムシがとまっていた。 何をしているのかというと木をワシワシかじっている。
ちょうどよかった木に穴をあける様子を観察できると、じっつと見つめていた所なんと! 穴は作っていなかったのだ。 カミキリムシをちょうど人間一人に例えると、一畳程度の範囲を正確にジリジリ樹皮をはぎ取る作業を続けているのだ。
およそ30分程かじっていたろうか、綺麗な長方形にはぎとり終えるとプッと飛んでいった。 しげしげ見つめてもどういう理由がありはぎとったのかも想像がつかない。 検索してもそのような事例は見つからない。 もしかして、たんなる気晴らしだったのではなかろうか?
追々記:カミキリムシの壮大な計画性(2019/02/03)
ずいぶん時間が経ったがまたあの公園に出かけた。 例の気晴らしされた木を見るとあの頃よりもひとまわりほど成長している。 あの長方形の部分は、えっ……。
木の成長につれて長方形の周囲の樹皮は盛りあがり、はぎとられた部分は窪んでいる。 これはもしかすると、このまま木が成長すれば「ウロ」になるのではなかろうか?
ウロとは木に空いた穴で、誰もが一度は目にした事があるだろう。 図鑑の説明によると木が腐って穴が開く、とあるがその腐る原因を作っているのはもしかしてカミキリムシをはじめとする昆虫なのかもしれない、という仮説をたてたい。
もしかすると私は今、とてつもない新発見をしてしまったのかもしれない(笑)。