備前焼で酒が旨くなる
まだ日も落ちないうちから今宵の宴会を企てるのは楽しい。
出席者の年齢、好みに合わせた店選びにはもちろん自分の主観も大いに入れる。 「あの人肉が好きだって言ってたなそういえば、じゃあ牛タンでも喰うか、あそこの地下街に仙台の店あったっけ」といった具合。
意外にすんなり店選びが終わったらあとは予約するだけ。 ところがいくら電話を入れてもいっこうに出る気配がない。 もちろん今日は営業日のハズだが出ない、いくらかけても出ない。 そこで仕方なく次の店選びをはじめる。
日本酒の豊富な店を探し出した。 予約の電話を入れたら「何名様でのご予約ですか?」と聞くので8人だと伝えたら「ちょっとその人数では無理です」と断られた(じゃあ何人ならば良いんだ)。
よく考えたら日曜なんだよな今日。
営業している店が極端に少ないのだ。 かりにやってたとしても、チェーン店であったり、わざわざ行くまでの店でもなかったりと決めあぐねてしまう。
そこで皆に提案したのが家呑みだった。 各自酒や肴は持ち寄って、ガヤガヤつッ突き合う宴会だ。 驚くほど低コストで、極めて高品質な肴と酒に囲まれた。
安くつきすぎたから、買い物途中で酒器を物色した。 そして備前焼に目が釘付けとなった。
ザラリとしたまるで、固めた砂のような荒い手触りも、ひとたび酒を注げば艶めかしく光り、溶岩のごとく赤い焼き色は口をつけるのもためらわれる美しさだ。
皆に「貸して」とせがまれもしたが、ことごとくお断りさせていただいた次第。
備前焼
千年の伝統を持つ備前焼。 釉を使わず1300度の高温で何日も焼き続ける。 土と炎が生み出す景色には胡麻、桟切、窯変等が知られる。