デンキブラン
たしかコリン・ジョイスさんの本で知ったと記憶しているが、創業明治13年の浅草にある神谷バーに「デンキブラン」はあるという。
こないだ上京した折に、せっかくだからと飲んできた。 まだ夕刻だったにも関わらず、店内は多くの人でにぎわっており、四方から楽しそうな会話が聞こえる中、とにかくデンキブランを注文して席に着いた。
周囲を見渡すとすでにデキアガッている人も多数いる。 そして面白い事に、どのテーブルにもチョンの乗っているのだデンキブランが。
ショットグラスに入ったウイスキーのような外見をしている。 そしてお客さんの飲み方を観察していると、かなり度数の強い酒のようだ。 皆肴をつまんではデンキブランをひと舐めし、それからチェイサーに手をかける。
とここで我が前にも運ばれてきたデンキブラン。 とにかくデンキブランを飲んでみたいがためだけに来たので、ショットグラスをクッと空けて退くつもりだった。 すかさずグラスに指をかけ「グイッ!」
と飲んだ瞬間全身の毛穴という毛穴が開いた。 もうビックリする味。 度の強い養命酒のようでいてなんちゅうかこう、度数云々よりも何か、ウォッカの一気飲みも何てことないオイがつまり、チビリチビリとしか口をつけれないかつて味わったことのない風味。
この酒は一気飲みを拒んでいる。
すかさず公式サイトを覗けばデンキブランにはブランデー、ジン、ワインキュラソー、薬草などが秘伝の調合でブレンドされているという。 次があるので早く店を出たいところ、デンキブランを残して店を出るわけにもいかないので、マグロブツを注文してこれをつまみながら飲み干す事にした。
ちびりとのんでは肴をつまみ・・・と繰り返しても一向に減らないデンキブラン。 一杯の酒を飲み干すのに、これほどまでに時間のかかった事はかつてない。 恐るべしデンキブラン。
あ、そうか!
ともすれば、デンキブランはこの一杯でも、ゆったり時間をかけて楽しめるよう設計されているのではなかろうか、たぶん。 ようやく飲み終え席を立った瞬間、軽く足にキテいて外は暗くなっていた。