燃えよバンビ
「バンビちゃん」という可愛いあだ名をつけてもらっている次女は、 クラスで一番かけっこが早い。 もう何年も、運動会でも一番だ。 ところが今年、強力なライバルが出現した。
同じクラスのTくんは、このところグンと背が伸びて、それにともない運動能力も向上し、 かけっこの練習では5回走れば2回はスレスレ負けてしまうようになったのだとか。
ここまで本人から聞いており、さて本番。「Tくんとの頂上決戦はいかに!」
とむしろ、親の方が肩に力が入り、だからこうして書いている今も妙な肩コリが残っているワケだが、ともかく「よーいドン!」て六人はいっせいに駆けだした。
すぐに次女とT君の一騎打ちに。
どうやら直線は次女に軍配なのだが、T君のコーナーリングセンスが秀逸であり、まず第一カーブで抜かれ、その後直線で抜き返し、第二カーブでまた抜かれ、また直線で抜き返した。
そして、第三カーブで抜かれそうになったところを持ちこたえた次女だったがT君は「ぜったい勝ちたい!」という強い想いからとっさに手が出てしまい、次女は大きく外回りをした。
その瞬間「あーザンネン負けた!」と思ったのは親だけだった。 次女は泣きっ面になりながらも細い手足をせいいっぱい動かして第四カーブにさしかかりついに、T君に追いついて並んだ!
そして二人はゴールまで並走となったが最後の最後で次女は、想いきり胸を張ってゴールテープを切った。 その瞬間、次女は色んな想いがこみ上げたのだろう、大泣きしてしまったのだが、それを遠くで見ていてこちらもつい涙腺が熱くなったのだ。