足はどこから始まってるのか?
アテもなく書店に入ったら、面白いように読みたい本が見つかり、狂喜乱舞する時がある。 すぐさま家に帰り、一心不乱読みふけりたくなるが、その帰る道中のワクワクがまた楽しい。
一方本を買いに行き、ぐるぐる店内を回ってみても、読みたい本なんてありゃしない時も、ある。 これは書店の規模等関係なく、気分のせいが大きいだろう。
先日ヒマつぶしに本屋を覗いたところ、見事に読みたい本が見つからなかった。 もう、読書に飽きてしまったのではなかろうかと自問したくなるほど、無かった。
そこでため息交じりに出口へ向かったところ、平積みコーナーに目が向いて、何故か『ねこ背が治って心も体も強くなる!』という文庫に手がのびた。
猫背でもなし、特にどこも弱くはないと思うから、こんな本に用はないハズなのに、つい手が伸びた理由はいかに。 しかも表紙とくれば、完全に女性向けに作られている。
「何やってんだオレは」
と半ば己に呆れつつページをパラパラめくったところ・・・面白いでないの。 柔らかい文体に、可愛らしいイラスト満載で綴られているが、この知識を知らずに生活するのはもったいないというレベルにつき購入。
体の使い方を知る本、と言ってよい。
- 現代人は呼吸が浅いから酸欠気味なんだ、だから深く呼吸しよう。
- 椅子に座る際どういう姿勢良いものなのか?
- 頭本来の位置。
どれも勉強になり、所々実践中の毎日であるが、何に一番衝撃を受けたかというと、
「足はどこから始まってるのか?」のくだり。
「そんなもん、股下何センチという言葉の通り、股からだろが!」と火を噴きたくなるが、そうではない。
足はなんと、みぞおちのやや下から始まっているのである!
まあ聞きたまえ。
左右歩を進める事を繰り返すのがつまり「歩く」という行為。 では歩き始める際どうやるかというと、普通まず右足(左足)を大きく一歩、踏み出すわけだ。
その際まず真っ先に動くのは太もも。 ももを上げて、膝を伸ばし、カカトから着地する。 ももを上げているのは、もちろん太ももの筋肉。
と思うのが普通だが実はそうでなく、本来ももを上げる際用いるべきなのは、大腰筋というインナーマッスルであり、この筋肉はみぞおちの少し下から二本始まって、各々の太ももの骨である大腿骨とつながっている。
だから大腿骨を動かしているのは大腰筋であり、大腰筋はどこからはじまっているのかといえば、みぞおちの下。 ということはつまり足の起点は、みぞおち下なのである。
という理論。
みぞおち下から足が伸びていると意識する事で自然と歩幅が大きくなり、背筋も伸び、手足の余計な力みも抜け、まるでモデルさんみたいに優雅に歩くことができるという。
でも、ヒトはそうとは知らず、太ももの筋肉を使って歩いているのが多いから、へんな部位に筋肉が付き、足の形が悪くなる、と。
この話に納得したのは、先日テレビでアンデウソン・シウバ選手を見たからである。 彼はスパイダーと称されるほど手足が長い。
そして彼の足を見ると、ひざ下の長さ、細さに驚かされる。 ほとんど筋肉はついていないように見えるのに、どうしてあんなに凄い蹴りを放てるのかが、不思議でならなかった。
それが今、なるほど!と、パチリ辻褄が合った。 彼はたぶん、インナーマッスルの使い手なのだ。
そして日本人であるオイのひざ下は太い。 頻繁に走っているせいもあり、一般人のよりも太い。 それはひとえに、走ってるからだと自分で考えていたのだが、ともするとこれは、インナーマッスルをまったく使えていないことに起因するのではなかろうか。
インナーマッスルの存在を認識し、上手く使えていれば、足の筋肉には余計な負荷がかからず、変な肉はつかないのではないかと考えた。
だから今毎日「足はみぞおちの下からね」と自分に言い聞かせながら生活をしている。 特に不便はないが、ハタから見れば、やや不自然な歩き方をしているのかもしれない。
足はみぞおちの下から始まってるって知ってた?
と家族に話したら笑われたので、これから熱くインナーマッスルについて語りはじめるところ。
目からウロコの一冊。 もうちょっと硬い表紙にして「どうしてエグゼクティブは優雅に歩くのか」なんてタイトルにしたらビジネスマンにもウケるんじゃ、みたいな。