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2007/12/17 ニュース酒肴

馬刺しと霜降り

馬刺し

嫁とスーパーへ買出しにいく。 最近マイバックを持参するようになったらしく、エルベシャプリエのナイロントート?っぽいのをクルクル丸めてうれしそうに持っている。 「おー、エコっすかエコ」と聞いてみると、それもあるがマイバックを使用してこのスーパーで買い物をするとポイントがついて得だとかどうのこうの…という話らしい。 

このスーパーはレジの男がガムをクチャクチャ噛みながら仕事するところが気に食わないのでなるべく買い物はしないようにしているのだが、マイバック持参でポイントがつくのはこのスーパーだけなのだとかでここで買い物をせざるを得ない。 嫁はかーなーりポイントが欲しいのだ。

さて今晩は何を食べてやろうか…おーっ、豚スペアリブが安い。 塩コショウ振って焼いて食べるかそれともトンコツでも作るとするか、まあどっちにしたって酒の肴になるなしかし。 ふーん、美しい牛スジ肉ですな。 国産ですかそうなんですか、ストーブの上で一日中煮込んでおいたら嬉しいことになりそうですなフフフ。 この牛タタキ、真っ黒けっけじゃん。焼きすぎっていうか、わざと焦がしているのではないだろうな、しかしその真意は謎だ。 いやしかしスーパーって楽しいな。 な、何っ! 精肉コーナーの一番隅に、それは陳列されていた。

馬刺し「半額」

馬刺しのパックに「半額」というシールが貼られている。 馬刺しが半額になっているのを見たのは人生初である。 古そうにも見えないし、その他欠陥がありそうにも見えない。 速攻、マイバックに放り込む。 このスーパーが安売りシール貼付行為を開始するのは普通夕方からであり、それ目当の主婦が殺到し、混みだすのは大体17時以降である。 今はまだ、昼前である。

馬刺し半額の理由は何なのだろうか? やはりあのニュースの影響なのだろうか。 以下、東京新聞Web版の記事を引用する。

脂注入し『霜降り馬刺し』 不当表示で排除命令『白木屋』『村さ来』など

 脂を注入した馬肉を「霜降り馬刺し」などと不当表示し販売したとして、公正取引委員会は十四日、景品表示法違反(優良誤認)で、大手居酒屋チェーン運営会社三社を含む計五社に排除命令を出した。三社は「白木屋」などを運営するモンテローザ(東京)、村さ来本社(同)、「八剣伝」などのマルシェ(大阪市)。

残る二社は業務用スーパー「A-プライス」を運営するトーホー(神戸市)と、食肉加工会社ファンシー(東京)。

公取委によると、居酒屋三社は二〇〇四年十月から今年五月ごろにかけて全国のチェーン店で、馬の脂を注入した加工肉で作った料理を「霜降りとろ桜刺し」「厳選とろ馬刺し」などと表示し提供、計約七億円を売り上げた。不当表示があった店舗数は、モンテローザが五百七十七店、村さ来二百五十一店、マルシェ二百六十五店。

ファンシーは昨年四月から今年八月まで、中国の業者に製造委託した注入加工肉に「極旨霜降り馬刺し」と表示し販売。トーホーはファンシーから仕入れた製品に自社のラベルを張り、全国のA-プライス九十三店で販売した。

注入加工肉は赤身より味が良く、業者間では「馬脂注入」と明示して取引される。価格は赤身の一・五-二倍だが、本物の「極上霜降り馬刺し」と比べると半額以下。公取委は「表示がなければ、消費者は『霜降り馬刺し』が加工品とは判断できない」としている。

モンテローザの村田祥己総務部長は十四日、経済産業省内で記者会見し「『霜降り』『とろ』という言葉は定義があいまいだがイメージが良く、お客さまにご注文いただけると考えた。反省している」と陳謝した。

と、いうことらしい。

肉に脂肪を人為的に加えるという行為が行われていること自体は「お客に言えない食べ物の裏話」という本を読んで知っていたわけだがこれが「牛だけ」に行われているものではないということは知らなかった。 ちょこっと本を引用してみる。

霜降り肉

じつは、安値の霜降り牛肉には、「工場」で加工されたものが混じっているのだ。 その加工法は二とおりあって、一つは赤身肉を薄く切り、それにアイロンがけにした薄い脂身をはさみ込んでいく方法である。 卵白や牛乳などを接着剤代わりにして、赤身肉と脂身を張り合わせ、幾層にも重ねていく。 こうして、肉の塊をつくり、輪切りにすると、霜降り模様入りの“高級肉”ができあがるというわけである。

もうひとつの方法は、、赤身肉の塊に、加熱して液状にした脂身を注射針で注入するという方法である。 全体にまんべんなく脂肪が入るように、長短さまざまな注射針をたくさん並べた加圧注入装置で、霜降り模様がつくられる。 その後、肉全体をよくもんでから、冷やして輪切りにすると、霜降りの牛肉のできあがりとなる。

この工場で加工された”模造霜降り牛肉”は、味も本物そっくりなら、栄養的にもほとんど変わらない。 口に入れても、よほどのグルメでなければ、見分けられないところまで”技術水準”は上がってきている。

だ、そうだ。

オイが2、3日前に食べたすき焼きに使用した牛肉も、もしかすると実は人工的に作られた霜降り肉だったのかもしれない、なんていう話もあるのかもしれない。  とにかく、人造物が出回るくらいに霜降り肉は消費者に好まれるのだ。 だが待て。

実は最近ハマっている美味しんぼに、こういう話があった。

ある人物が海原雄山先生を接待した際に、極上の牛刺しでもてなしたのだが、それを見た海原先生は一口も食べずに怒って帰ってしまった。 その理由は何か?

実は、その牛刺しが、霜降り肉だったからなのである。 日本人は霜降り肉を最高のものと思い込んでおり、どんな料理にも霜降り肉を使いたがるが、刺身に霜降り肉を使うのは最悪のことであり、おそらくマグロのトロと見た目が似ているので同じように刺身で出したりするのだろうが、そもそもマグロと牛では脂肪の性質が違う。

マグロの脂肪は低い温度で溶けるから舌の上でトロケて美味しい。 がしかし牛の脂肪は高温でないと溶けないので刺身で食べると脂肪がろうそくのようにニッチャリと歯にまとわりつくだけで、旨味を感じない。 霜降り肉信仰の愚かしさもそこに極まれり。

という話が、美味しんぼ18巻第一話にある。 なんでも霜降りならば極上、というわけではないのだ。 でもこれが馬にもあてはまるのかどうかはよくわからない。 でも霜降りという言葉に過剰反応するのは考えものだという結論でよいのではないか。

「オイ、ちょっと! 荷物を持ってよ」

おっと嫁から呼ばれてる。 早く行かないと馬刺しを買ってもらえなくなるかもしれないので今日はこのへんで失礼。

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