見てるだけの寿司
次男の誕生日だったので、近所の寿司屋から出前をとった。 ここ、中トロだけ、何故か中トロだけに関してはやけに旨いんだよな。
もう晩飯時だというのにカミさんと子供らは一体どこをぶらついているのだろうか。 連絡すらない。
ピンとラップの張ってある寿司桶を前に、もう30分はじっと待ち続けている。 早くラップを引き剥がし、中トロをつまみたい。 これ以上の空腹には、もう耐えられない。
・・・・・・先に食ってもいいじゃないか。 オイはこの家の主だ。
という考えが浮かび上がってきたが、それでは子どもたちもガッカリしてしまうだろう。
・・・知らん顔してガリだけつまんでおくか。 でもラップを再びピンと張り戻す自信がない。 寿司桶の中の何かをつまんだことがカミさんにバレてしまうだろう。
もう寿司はいい。 とりあえず忘れよう。 たしかアンチョビの缶詰があったハズだからそれでビールでも飲んでおくか。 缶詰をパカッ、ビールをプシュッ、静かにトクトクと注いで、一気に飲み干す。
その瞬間、玄関先でにぎやかな声がしてきた。 帰ってきたのだ。
もうタッチの差だった。 あとチョット待っていれば寿司をつまみに一口目のビールが飲めたのに。 いやまてよ、そもそも寿司でビールなんて飲まんやろうもん。
はじめから寿司はほっといて、アンチョビでビールをチビチビやっていればよかったのだという話。 でも目の前に寿司桶があると、気になって仕方がない。