【レビュー】四次元パーラー あんでるせん【再訪】
今回再訪を考えたのは、10月末にフと、あんでるせんの事を思い出したからだった。 完全予約制だという事は知っているので、いわばダメモトで何となく電話を入れてみると、キャンセル待ちという制度があるというのでそれをお願いした。
万が一席が空いたら、あんでるせんから連絡がある状態。
そして11月のなかば頃、お店から「空きが出た」と電話があった。 思わず拳を握った。
日時は年の暮れ、13:00から。
駐車場はどこに止めるか?
キャンセルの連絡をもらった際に、お店のすぐ近くに川棚駅前パーキングがあるのでそこに止める事を勧められた。
他にも銀行の駐車場があるらしいが、そちらは高いらしい。 そこで教えられた通りに駅前パーキングを目指し、無事見つけて駐車した所、
警察官が目の前に現れた。
何でも私は、進入禁止エリアを進んで駐車してしまったらしい。 言われてあたりを見渡すと、確かに侵入禁止の看板っがあった。 ナビを見ながら無事お店に着いた所でつい気が抜けてしまったのだろう、普段はやらないミスだったが、写真を撮って見返しても間違いやすい感も否めない。
ぜひご注意を。
写真の通り、パーキング侵入口横には交番がある。
川棚駅駐輪場
- 〒859-3608 長崎県東彼杵郡川棚町栄町5−2
- 駐車料金:あんでるせんでのショー開始一時間前に駐車して終了後まで泊めておいても500円。
- あんでるせんまで徒歩1分程度。
- 5,6台程度しか泊められない。
あんでるせん待合所
パーキングから歩いて1分ほどの場所にあんでるせんは位置する。
あんでるせんは建物の2階。 そしてその1階は待合室になっているが、利用者はほとんどおらずガランとしている。
私の他にはおそらく13:00の入店を待つお客が二人居るだけだった。
特になんの装飾もない空間。 なんだかこの場所をこういう風に使っているのはもったいないような気もするが、それこそショースペースにでも改装したら良いのに、とも考えたが川棚というこの土地柄からして、さほど空いている敷地に神経を使う必要がないのだろう。
あんでるせん入店まで
13:00の10分前になると、奥様(だと思う)が現れて、お店の中へと案内してくれる。 入口で予約した際の名前を伝えて検温をし、指先を消毒して番号の書かれた札を受け取り店内へ。
ショーが始まるまで、好きな場所でくつろいでいて良い。 もしも店内を撮影したい時はこの間に済ませておく。
会計もこの時順に済ませる(1000円)。 お冷やがふるまわれる。 ちなみにこの感染症前までは、店内で食事が済んだ後にショーを行うようになっていた。
この日は30人弱のお客が揃ったが、感染症前は50人程キツキツに入れていたらしい。 皆13時キッカリに訪れるものだと思っていたがそうではなく、ボチボチ現れては入店してくる、という感じだった。 中には予定がつかずに欠員している団体もいて、
マスターの久村 俊英氏からそういう時は前もって連絡を入れるようたしなめられていた。 理由はキャンセル待ちをしている人が沢山いるのだから(今回の私もそう)。 そしてこの当日キャンセルの場合、ショーの見物代金1000円の全額(もしくは半額かも)を徴収する仕組みとなっている。
いざ開演
結局13時半過ぎ頃までお客が揃うのを待っているような状態だった。 そして久村氏はその間、20センチ程の菓子箱を持って店外へ消えていた。
そして開演前になると、渡された番号順にカウンター周辺へ並ぶ事になる。
カウンター前の数席は、目の前で見物できてしかも椅子に座っている事ができる。 そしてそのすぐ後ろの列は立ち見となる。
そして最後列は、椅子やテーブルの上での立ち見となる。 私は二列目の中央付近に位置していたが、ショーを間近で見る事ができて大変具合が良かった。
予約について
最前列のカウンター前は、毎月一日の朝から始まる電話予約でのみゲットできる。 それこそ何千回と電話してやっとつながる感じだという。
その他の席は一日以降も予約を受け付けているそうなので、私みたいに二列目でも構わないと思う場合は気軽に電話してみると良い。 実際久村氏もそう言っていた。
あんでるせん最良の席位置
そしてこの店で一番良い席はマスターの目の前に座る事となる番号札3で、ここはショーを間近で見物できる他、マスターの助手として活躍する場面もかなり多い。 あんでるせんを存分に堪能するには、この席を狙ってみるもの良いだろう。
いざ開演:以下ネタバレ含
まだあんでるせんを経験していない方は見ないでほしい、閲覧注意。
お札が宙を舞い踊る
お客から借りた千円札の角を指に乗せてバランスをとり立てる。
マスターの腕にからまるように移動をする、あたかもペットであるかのように。 まさに驚愕の技であるが、見ていて気になるしぐさが散見された。
演技(で良いのか)の最中、時折マスターが糸をたぐるような仕草を見せる事があった。 あたかも糸をほぐしているような感じであったが、もしかすると、お客に見えない糸を操ってお札が浮遊しているように見せているのかもしれない(そうだとしても物凄い技術)。
注視していると、演技の終わりにマスターはエプロンの内側に何かをこびりつけて止めたかのように見えた。 もしかすると、その糸を収納したのかもしれない。
お客がトランプの束から選んだカードを言い当てる
マスターが手に持つトランプの束をダダーッとめくっていく途中でお客が「ストップ」と声をかける。
そこに止まった一枚の図柄を言い当てるものである。
私は番号で指名されてその止める役を受け持った。 私が見た図柄をマスターは、考える間もなく言い当てた(もちろん私にしか見えないようになっている)。
その後トランプをまとめて、私が選んだ図柄も、他のお客が選んだ図柄も一緒になってしまったのだがその中からおもむろにいくつかの山に分けたマスターは、私が選んだ札を選んでコチラに向けて見せた、図柄を宣言しながら。
しかし。
マスターの選んだ図柄も宣言も違っていた。 単純にミスだと思われる。 私が「そうだ」と返事をしなかったので彼は「えっ、違う?」と言いながらも、それを無かったかのように次の演目へ間髪入れずに移るものだから違和感を感じる暇はない。
お客が無作為に選んだ四つの連続する数字を円周率一覧冊子よりその数字が並んだ部分の記してあるページと行数を言い当てる
見出しの通りだが、それを行っている際マスターは、その冊子ではなくカウンターの下に視線を落として何かを見ているような気配があった(他の演目でもこの行為は散見されたので何か秘密があるのかもしれない)。
※マスターはかなりの長さで円周率をそらんじる事ができる(合っているのかどうかは不明)。
千円札に油性マーカーで書いた線が消える
千円札の透かしの部分にお客が書いた線が、札の下から火で炙ると消える。 しかし、この時使用したゼブラのハイマッキー黒は、どこか違和感があると思い目を凝らすと、マーカーの先端部分に白いフチ取りがあった。 市販のものにはそれが無いので何か細工が施されているのかもしれない。
10円玉を木片で叩くと割れる
お客が提供した10円玉を、マッチ箱サイズの木片で軽く叩くと5つぐらいの破片に割れた。 そしてその後それは元通りになる。
これは一瞬、マスターの手の中に薄い茶色をした10円玉径の円筒が見えたのでそこから割れた10円玉を出したのかと思ったが、今度はその円筒自体が消えてしまったので何とも不可解な現象である。 本当に「パッ」と手の中から消えたので、むしろ10円玉よりこちらのほうが気になった。
配偶者の名前を言い当てる
私が番号で指名された。 箱の中に入ったメモ帳に、私からしか見えない角度で妻の名をボールペンを用いて漢字で記したが、書き終わる直前すでにマスターは名前を口に出した。
しかし、二度告げられた名前は微妙に違っていたので返事をしなかったら、最後には漢字と読み方を当ててしまった。
これもありえない現象ではあるが、そしてこれと似たような演目がいくつかあるのだが、お客がメモを書く際に、必ずその下に黒い合皮状のパッドが敷かれている。
もしかするとそのパッドに何か秘密があるのではないか、と個人的には思っている。 でも仮に、そのパッドに筆圧検知機能がついており、そしてカウンターの下にはそれを精密に検知して描写し映し出すモニターがあったとしても、
私の知る限りそのような電気機器は存在していないから、マスターのオリジナルもしくはその業界でのツールだという事になるよな、なんて妄想がとめどなく流れてしまう。
そもそも、パッドはメモ帳の背表紙の下に置かれているものであり、筆圧を検知できるワケもないのではあるが。
お客が即興で描いたイラストと瓜二つの画をマスターが事前に描いて封をしておりそれを披露してくれる
私のすぐ後ろの人が当てられて描き始めたが、その最中マスターを観察していたら、カウンターの下に視線を落として何かを見ながら何かを描いている様子を確認できたので、やはりどこかにお客が今描いているものを確認できる何かが存在しているものと思われる。
どうしても頭の理解が追い付かないもの
ショーの中には、どう考えてみてもマジックでは説明のつかないものもいくつかあった。
お客が好き勝手に回したルービックキューブの図柄と開演前から瓶の中に入れてフタをしカウンターに置かれていたキューブの図柄が全て一致する
上の写真の紫のマルの中を見ていただきたい。 ここには図柄の揃っていないルービックキューブがガラス瓶に入れられてフタがされているのだが、
これは開演前からここに置かれていたものであり、マスターはおろかお客の誰も触っていない。
そもそもこのキューブ自体に話が振られる事すらなかった。
そこでショーの中盤、ルービックキューブを用いた演目が始まった際、その最後にお客は皆あ然となる。
番号で当てられたお客にキューブが渡されて、好きなように回転させるようマスターに言われる。 お客はその通り適当に回して図柄のまったく揃っていないキューブができあがる(元々全面揃っていないものを渡される)。
それを受け取ったマスターは、同時に先の紫マルの場所からキューブの入った瓶を持ち上げるのだが、その二つのキューブの図柄の位置が全て一致しているのである。
しかもその瓶の口の径では中のキューブを取り出す事すらできない。 そもそも一体どうやってキューブを中へ入れたと言うのだろうか…。
※マジック抜きにして、マスターはルービックキューブを操るのがとても上手い。
お客から借りたサイン入りの百円硬貨が曲がる。
ショーの序盤でマスターから硬貨を借りるリクエストがあるので事前に即取り出せるよう準備しておくと良い(500,100,50,10,5,1円)。
お客がてのひらの上に置いた、本人のサイン入り100円玉を、マスターが指でなでると曲がってしまった。 明らかに曲がっており、テーブルの上に置くとカタカタ音を立てながら揺れた。
間近で見ていて、すり替える事も不可能と思われる中での一瞬の出来事に戦慄を覚えた。
スプーンが大いに曲がる
かつてテレビで見た事のあるような曲げ方ではなく、触れるだけで曲がってしまう。 そして二本を一緒にして宙に投げてそれを受け取れば、どちらも柄がねじれてしまっているのだ。 そう、ショーの後販売されている曲がったスプーンみたいに。
曲がったものと差し替える事なんてできない一瞬の間である。
さらに車のキーを曲げるとマスターは言い、お客にキーの提出を求めたが、昨今キー状の鍵を持っている人は稀なのか、誰からも提出がなかったので自身のキーの先端を曲げてみせたがこの時もサッとなでるだけだった。 トリックがあるのならぜひ説明してもらいたいものだ。
ボルトからナットが高速回転してはずれる
しっかり組み合ったボルトとナットをガラス瓶の中に入れてフタをし、念ずるとナットが高速に回転しだしてはずれてしまう。
画像のものとソックリなボルトとナットであり、色は鈍い金色をしているもの。
もしや瓶のフタになにかしらの電磁的な仕掛けが隠れているのかと思いきや、今度はマスターはボルトの端を指で持ち、念ずるだけでナットを回転させてはずしてしまった。
一体どうなっているのやら…ボルトの内部にモーターが入っているワケでもなかろうに…謎である。
ただ、最初瓶の中ではずした際に、ナットは完全にボルトからはずれてはいたのだが、瓶とナットの角度関係によりナットが瓶の底に落ちずにボルトの端で回り続けていた。
それをマスターは文字通り説明をして瓶を振って下に落としたのだが、という事はナットはマスターの意思で回転しているワケではないという話になりえないだろうか。
ミニルービックキューブでマリオを描く
ショー最後の演目。 お客それぞれにルービックキューブの小型なものを渡し、それぞれ好きなように回してもらい、それを今度は格子状の枠に次々無作為に収めていく。
そしてマスターが何も手を入れずにそれをお客側にむければ、ドッド画でマリオが描かれているのだった。 もちろんお客一同ドッと沸くが、これも考えても説明が思いつかない。
枠に何かしらの仕掛けがあるのかとも思われるが、枠は単に枠にしか見えない。
そしてミニキューブ。 他の演目でも登場したのだが、その際マスターは黒い財布の小銭入れの中からそれらを次々に取り出した。 もちろんキューブは立方体なのだが、そもそもそれが何個もペタンコの小銭入れの中に納まっているワケがない。
何かしらの加工がされており、紙みたいに薄くなるものだったとしても、それが客の手に渡るとキチンと回転できてキューブとして機能するのだからたとえ細工をするにしても相当な技術が必要なハズだ。
これと同じ現象は、チョコボールでも見受けられた。 チョコボールの箱から、入っているワケがない巨大なチョコボールが振り出される。
ショーの後
じつに3,4時間にわたるショーは終わってみればアッという間に感じてしまう。 それだけ密度の濃い時間を過ごさせていただいたという事になるだろう。
マスターの軽いシメの後、グニャリと曲がったスプーンとフォークの販売コーナーとなる。 いずれもひとつ350円。 昔は無かったと思うが、金色バージョンもありこちらは500円。 せっかくなのでひとつ購入する事にした(任意)。
その他マスターの書いた有り難いお言葉の色紙が抽選で一名にプレゼントさせるのだが、それ専用の手作りの木製額が2000円。 もしも自分が色紙をもらったら間違いなく買ってしまうよな、という感じ。
そして自然解散となる。
多くのお客は名残惜しいのか、スプーンを購入した後も店内にとどまり感慨深げだったが私は先があったので早々に失礼した。
まとめ
以上が今回あんでるせんで経験した事である。 ショーの演目は上記だけでなくほんの触りであるからぜひ、生涯に一度は見ておく事をお勧めする。
冒頭に書いた通り、私がこの店を訪ねたのは二度目である。 一度目はそれこそ何十年も前…十代後半だったと記憶している。
その時と今回ではどちらが感動を覚えたか?
何人もの知人にそう聞かれたが、迷わず私は「一度目だ」と回答した。 それは初めてだったから新鮮でそう感じたのではなく、このショーを心から楽しむには、私は歳をとりすぎてしまっているのだ。
あんでるせんに足を運ぼうと思っている方に伝えたいのは、ぜひ若いうちに行って経験する事。 年を重ねてからは、世間にスレすぎてしまい純粋にショーを楽しむ事ができなくなってしまう恐れが大である。
なのでこのページを読んで「電話してみようかな」と少しでも頭に浮かんだ方は、今すぐ店に電話をかけてみるべきだ。
マスターの言葉を借りれば、それはあなたが「あんでるせんに呼ばれている」という事の証明なのだから。
余談
調べてないので憶測ではあるが、マスターは何十年もの間、ほとんど休まず日々あんでるせんでショーをお客に披露し続けて今日に至るのだろう。
一度ショーを経験すればよく理解できると思うが、これは相当体力と気力を使う仕事である。 仮に自分が同じ事を続けろと言われてもまったくそうできる気がしない。 ひと月も持ちやしないハズ。
つまりマスターは心底このショーを愛しており、人々に驚き喜んでもらう事が好きなのだと思う。 でもないと、一人たった1000円そこらの金額で何時間にも渡って秘技を見せてくれるワケがない。
それを陰で支えている奥様も凄い。 毎日方々からかかってくる電話に丁寧に対応し、キャンセルが出た場合には今回の私みたいにわざわざ電話をかけてくれ、駐車場の案内までもしてくれもし、それが毎日何十人、月何百人、年間数千人にそうなさっているのかと思えば頭が下がるというよりも、もはや途方に暮れてしまう。
その電話代だって馬鹿にならないワケでもあるし。
マスターにはお弟子さんやお子様はおられないのだろうか? 跡を継ぐ方はいらっしゃらないのだろうか。 だとしたら、大変残念な事である。
世界広しとはいえ、これほどまでに質の高いショーをこんなに安価で披露してくれる場所は無いと思う。 遠路はるばる足を運んでも、きっとそのモトは取れる体験ができるハズだ。