【解決】シングルレバー式混合栓水もれ修理【記録】

このページはシングルレバー式混合栓(キッチンや洗面所の蛇口)のカートリッジ交換を試みて、無事成功したその体験談を記しています。 現在水栓から水もれしていて修理を検討している方の一助となれば幸いです。
「あの人は何でもできる」
他人にそう思われると嬉しい反面、どこかしらやるせない。
なぜならば、頼まれごとをされる機会が増えるからだ。
今回の混合栓の修理は、家内が親しくしている近所のおば様より依頼されたもので、以前PCの調子が悪いと教えられた際、何でもない事だったのでチャチャッと直してあげた時から彼女の私に対する評価は「何でもできる人」となったのだ。
蛇口を閉めても水がポタポタ落ちてくるのよ……。
そんな事言われても、私はそれに関する知識は皆無である。 仮に自宅でそうなった場合、自ら修理なぞしようとせずに、即業者へ連絡すると思うその日のうちに。
だが彼女は兎に角、「この人は何でも直せる人」と思い込んでおり、目をキラキラさせながら今日中にでも水モレから解放されると固く信じたまなざしを私に投げかけてくるのだった。
「ホラ、インターネットで調べたら載ってるワヨ、たぶん」みたいな。
「修理に必要なモノがあれば何でもインターネットで買っても良いから!」みたいな。
重たい腰を上げて、彼女の家へ向かったのだった。
ケース1:キッチンのシングルレバー混合水栓の修理
案内された場所はキッチンだった。 目の前のよくありがちな水栓(いわゆる蛇口、もしくは水道)からは、口が閉じているにも関わらず、聞いた通り水がポタポタ、というよりも水栓の根本からあたかも泉が湧き出るかのように水がモレていた。
これは確かに家事に支障をきたすレベル。
いつ頃からこうなっているのかと聞けば、もう半年ほどになるという。 そして、この二週間くらいで特に悪化してきたそうで。
試しにレバーを上げてみると、蛇口から水は出るが、今度は閉じても水の勢いかいっこうに収まらない。
それを見かねた彼女は「こうするのよ」と割り込んできて、下げたレバーを左右にニ三度振った。 するとかろうじて水が止まる(滴ってはいる)という状態。
素人目からしても重症である。
まずは、何に手を付けてよいのかすら不明なので、ひとまずスマホを取り出して「蛇口 水 止まらない」という語句で検索してみた。
そしてズラリと並んだ検索結果の目ぼしい所から順に見ていくと、どうやらこの蛇口の正式名称は「シングルレバー混合水栓」だという事が分かった。 「混合」とはレバーを上げて右に振れば水が、左に振ればお湯が出るという仕組みを指す。
続いて「シングルレバー混合水栓 水モレ 修理」という語句で検索をすると、どうやらカートリッジという部品を交換すれば、この問題は解決できそうな事が判明した。
カートリッジの交換:一日目
水栓を前に、しばし腕組みして考える。 この中にカートリッジがあるとして、一体どうやってそれを取り出せば良いのか…。 ためつすがめつしていると、レバーの上部に取り外す事ができそうなフタがついている事に気づいた。
一旦自宅に戻り、工具箱を抱えて戻ってきた。 そう、工具も何も持たずに彼女の家へ出向いていたのである(修理する気ゼロ)。
そしてマイナスドライバーを取り出してフタに当てコジると、あっけなくはずれてプラスのネジが現れた。
何かやる気が出てくるのを感じた。
続いてプラスドライバーを取り出して、ネジを外そうとした所で気づいたから良かったのだが、このまま作業を進めると、水が噴き出して大変な事になるのでは? という懸念が浮かんだ。
そこで彼女に「この家の水道の元栓はどこにあるのか」と聞けば知らないという。
このまま作業を行うのは危険なので、ひとまずそれを調べる必要がある事を伝えると彼女は水道局へ電話をした。
そして即、元栓の場所は判明したのである。 この家を出てすぐの所の道路にフタがあり、そこを開くと元栓はあった。
これを閉じれば家全体の水道は止まる。 しかし元栓は四角柱の突起があるだけであり、閉じるには特別な道具が必要な事が判明した。
いよいよ大仕事である。
「水道 元栓 工具」と検索した結果必要な道具が判明した。 専用工具「止水栓キー」である。
ひとまずこれを購入し、この日の作業は終える事となった。
カートリッジの交換:二日目
あくる日、届いた止水栓キーを用いて簡単に元栓を閉じる事に成功した。 続いてレバーのプラスねじを外すと、無事レバーを取り外す事にも成功。
そして、である。
ネット上の情報を色々見てきているので、この水栓の中にカートリッジが入っている事は分かっているものの、そこに記載されていたどの水栓とも形状が異なっている。
この金属の塊を、一体どこから開けば良いのか? 再びためつすがめつしていると、レバーを取り外したつけ根の部分に二か所切り落としがある事を発見した。
つまり水栓本体は、円柱の両側面が落とされた形状をしているのだ。 「これは開けるかもわからんね」とモンキースパナを取り出して、口を一杯に広げて当てがってみた。
すると…わずか数ミリ水栓の径が大きく、スパナをはめ込む事ができない…なんたるもどかしさ。
私のモンキースパナはかなり大きなものであり、これで合わないとなるとまた特殊な工具が必要になるのではなかろうか…と考え「水栓 工具」と検索してみると、やはりそれらしいものが見つかった。 水栓レンチである。
見るからに大きな口をしている。 これなら充分だろいうという事で早速購入し、到着を待つ為その日の作業を終えた。
カートリッジの交換:三日目
届いた水栓レンチの口を広げて水栓に当てると、楽々合わせる事ができた。 そして力を込めて左に回すと水栓の円筒は回転し始めた。
そして円筒を取り除いたら、ようやく目当てのカートリッジに行き着いた。
調べた所によると、カートリッジ自体は引き抜く事ができるという。 そこでレバーとの接合部である突起を指でつまんで上に引き上げると、やや抵抗があったものの、カートリッジの摘出に無事成功したのである。
カートリッジは見るからにくたびれている。
まず水気を拭いてから、A4紙の上に置き、スマホのカメラで撮影をし、その画像を元に画像検索をした。 すると類似の画像がズラリと並び、その中から似ていそうなものをいくつか選んでみた。
ここでようやく、この水栓のメーカーが判明した。 KVKである。 早速公式サイトに向かい、カートリッジのページに目を凝らす
これだ…これだとしか考えられない!
手元のカートリッジと瓜二つのものが見つかった。 シングル用カートリッジ(上げ吐水用)型番PZ110Y である。
外径を計測してみてもピッタリ同じ、間違いない。 早速カートリッジを購入していざ到着を待った。
カートリッジの交換:四日目
真新しいカートリッジを手に今心が躍っている。 もはや四日目を迎えたこの修理にいささか楽しみを覚えている自分に気づいてしまった。
勢いよくパッケージを開いて新品のカートリッジを取り出し古いモノと据え替えて、水栓を再び固く、水栓レンチを用いて閉じた。
そしてプラスのネジでレバーと水栓を合体させる所で重大な問題が起きた。
なんと、ネジ穴が無いのである……。
一杯どういう事か。 改めて新品カートリッジの箱書きに目をやると、「ビス無し用」の文字が。
ぬぅあんと!
せっかくここまで来たのに、ようやく今日修理が終わり無事祝杯をあげる事ができると考えていたのに…嗚呼。
一旦現場を離れて自動販売機に向かい、おーいお茶を買って勢いよく半分ほど一気飲みして考えた。 あっ!
ものは試し、やってみようでないか。
新品のカートリッジは水栓にピタリ収まったものの、ネジ穴が無いのでレバーを取りつけられないつまり、使用できない状態である。
一方古びたカートリッジは元々レバーとネジ止めされていたワケだから当然その穴が開いている。 という事は、
レバーとの接合部である穴の開いた部品を、新品に移植すれば良いのではないか? カートリッジがまた、楽に分解できそうな外観をしているから試してみようと考えたのだ。
そこでマイナスドライバーをカートリッジに当てがい部品が跳ねないよう慎重に開き、その部品を据え替えてみた。
ピタリと収まったではないか。 両者の違いは穴があるか無いかという点だけなのである。
改めて移植の済んだ新品カートリッジを水栓に収めて水栓レンチを用いて閉じ、今度はねじ穴があるのだからレバーを乗せてプラスドライバーで止める事ができた。
あとはネジ隠しのフタを閉じれば元通り。
いざ水道の元栓を開いて…レバーを引き上げると、水は勢いよく流れ、そしてまた小気味よく止める事ができた。
修理成功の瞬間である。
新たな問題
ところが、である。 水栓の水の出し止めは完璧になったものの、水栓の根本より溢れ出ている水の勢いには変わりがない。 月々の水道代が気になるくらいに溢れ出ている。
この不具合に関しては、カートリッジの問題ではなかったのだ…一体どうすれば良いのか。
今度はKVKのサイト内で情報検索を始めた。 すると症状別のメンテナンス法のページが見つかった。
ずばり今起きている不具合は、パイプ根本からの水もれである。 原因は、パッキンおよびスリップ板の摩耗との事。
そうか、パッキンを交換すると良いのか!
早速アマゾンに向かい「KVK パッキン」と検索すると、KVK Xパッキンセット Z5011XPが見つかったので早速購入し、到着を待った。
パッキンの交換
あとは一旦閉じた水栓をまた開いてカートリッジを取り出し、今度は水栓のノズルも引き抜いて(上に引き抜くだけ)パッキンをあらわにし、マニュアルを見ながら新旧交換を行った。
はやる気持ちを押さえながらまた水栓を元の姿に戻し、水道の元栓を開いたら、ようやく水のあふれは収まった。
かと思いきや、根本の水のあふれは完全には収まらなかった……何故。
経験がモノを言った
ここからは、これまでの経験則が働いた。 昔DIYで庭に池をこしらえたとき、オシャレな輸入物の水栓を水道管に取りつけたら、水がモレて大変だった。 それを近くのホームセンターで話したら、店員さんがシールテープを勧めてくれた。 薄くて白い、伸縮性のあるテープである。
これを水栓の口に引っ張りながら何周か巻きつけて、そして水道管とつないだらピタリと水モレが収まった事を瞬間的に思い出した。
そこでホームセンターに走りカクダイ シールテープ 5m 797-031を購入してきて交換したばかりのパッキンの上からグルグル巻いて再度水を出してみた所無事、ついに水モレはピタリと収まったのだった! めでたし。
ケース2:洗面所のシングルレバー混合水栓の修理
己の持てる力の全てを発揮して、よそのお宅の水栓を復活させた。 自分で自分を褒めてやりたい。
人様のお役に立てた事はこちらとしても喜ばしい。 所でまる五日もかけて修理したのだからせめて、日本酒と焼酎を一升瓶でそれぞれ一本ずつぐらい礼としていただいても良さそうなものだけど…なんて考えていると、
うわぁーオイさん、本当にありがとう! 実はね、もう一か所ね、困ってるのよ。
と彼女は何の前触れもなく語り出したのである。
なんでも、数年前から洗面所の水栓の調子が思わしくなく、次第に悪化してきたので2、3年前から洗面所の水栓は元栓を閉じて一滴の水も出ないようにしているのだとか。
「ちょっと待ちんさいアンタ。 その際水道の元栓はどうやって閉じたの? もしかして止水栓キー持ってたんかい!?」
と聞けば、洗面所の元栓は、水栓のすぐ下にハンドルがあり、その場所だけ個別に閉じる事ができるようになっておりそうしているのだという、なるほど。
さっそく洗面所へ案内されると、たしかに水気がまったくない。 水栓にホコリがかぶっているくらい、長い間使われていない気配が満々である。
キッチンの水栓とは形状が異なるが、作業手順としては同じ感じだろうと思われる…どうしてすでに引き受ける気になっているんだ自分。
水栓本体を眺めまわすと、今度は楽にメーカーが判明した。 本体側面に「TOTO」と刻印されていたのだ。
TOTOのシングルレバーカートリッジの交換
今度の水栓はネジ止めされているのではなく、真上に引っ張るだけで着脱できるようになっている。 そして前回と同じ手順でカートリッジを取り出して画像検索をし、類似のカートリッジを見つけて購入した。 TOTO シングルレバー用カートリッジ THY582N である。
カートリッジの着脱法は、キッチンの時とはやや異なるが、何特段難しいものではない。 サクッと入れ替えてしばらくぶりにこの水栓の元栓を開放した。
いざ、数年ぶりに開通する水の流れを愛でようではないか。
勢いよくハンドルを引き上げたら、水がジャーッ!とは流れてこなかった…なんで?
水栓内部に「シュッ」と水が昇ってきた音は聞こえたのだが、不思議と蛇口から水が出てこないのだった。
一度カートリッジを取り出し装着し直しても水は出てこない。 己の水栓工事スキルを全面的に信頼した矢先だったのでショックが大きい。
一旦席を外して自動販売機に向かい、UCCブラック無糖缶を購入してその場で一気飲みした。
そして現場に戻り、水栓全体を俯瞰で眺めていると、ある個所が気になった。 蛇口のまさに、水が流れ落ちる部分である。
そこには水流を滑らかにするメッシュのついた部品がついている事が一般的で、やはりコチラにもそれがついていた。 これは手で簡単に着脱できる事は、クリンスイを取り付けた事のある経験上よく知っている。
おもむろにそれを取り外してみると……内部にゴミが沢山つまっていた。
数年間使っていなかったのでチリホコリが堆積したのかもしれない。 原因は間違いなくコレだ。
外した状態で、ためしにレバーを引き上げてみると水は勢いよく流れ出た。 処置は間違っていなかったのである。
そしてゴミのたまったその部品は、漂白剤に浸して半日置いてしっかり水洗いをしてから元に戻した。
結果滑らかな水流までも取り戻したのである。
以上が今回携わったカートリッジ交換工事の全貌である。 もしも同じような悩みでお困りの方がおられたら、参考になれば幸いである(完)。