プロジェクトQ:最後んこどもたち
ついにこん日の来た。
夏休みの最終日さね。 余裕ばカマしとった息子ん顔は今粘土のごと青うなっとる。 一応彼の名誉ん為に記しておくばってん、何も宿題ば放っぽりだして日がな一日遊びほうけとったワケではなか。
ほとんどの課題の終わっとる息子に待ち構えとっとは、毎年恒例の自由研究やったとさ。
低学年の頃はかなり手ば貸してはおったものの、そいでは本人の為にならんけんがて、おととしからは「親ノータッチ制」ばとらせてもろうとるとさ。
夏休みに入ったばっかいの頃、父は言うたハズたい。 「自由研究ば早めに済ませたほうが良かとじゃなかとね?」て。
スイカにかじりつきながら眉間に深う谷ばこしらえて研究テーマば模索しよる息子。 いくら考えても何も妙案の浮かばんて半分サジば投げとる気配ば醸しとる。
持つべきもんは「きょうだい」ね。
見かねた兄から思わん助け舟の出た。 「俺が昔やった研究のさ、ビーチコーミングあったけどさ、これリネームして使えば?」
はじめは意味の飲みこめんやった彼は、兄ん前に正座して詳しゅう話ば聞いた後、目ばホタルのごと輝かせたとさ。
もの置きから引っ張り出してきた作品はほこりまみれになっとる。 そいでも丁寧に海辺で拾ったもんば整理してラベリングしてあって、なかなか見ごたえのある力作であった名残は持っとる。
まず彼は、そいが何であるかば理解する事の必要やった。 だけん、兄の前に持っていって、こいは何で、どうしてこいばコレクションしようて思うたとかば聞きながら、メモばとる必要のあった。
そんやりとりば傍観しとる父。
石の種類だけでもバリ多か。 そん名前ばどがんして調べたとかば調査しよったところ、石ころ図鑑の家にある事ば突き止めた息子は、今度は本棚の捜索ばはじめた。
ここまで書いて、もう気づいた人もおるかもしれんけど。
彼は今、立派に、自由に、研究ばしよるとたい! まだ本人は気づいとらんばってんが、兄の小学生の頃生んだ作品ば自分の自由研究として提出するていうズルい道に落ちかけとるようにも見えるばってん、
そいやったら突っ込まれた時マズかけん、自分が受け継いだもんが何であっとかば必死に調査しよるワケたい。
言おうか言うまいか悩んだとけど、もう時間のなかけんそん趣旨ば伝えたら、本人はあまり意味ば飲みこめんでハトのごとキョロついたとさ。
そん後度々質問される兄長男は面倒くさがるかて思えばなんか懐かしさでいっぱいになったらしくて、研究ばサポートするていう神展開に。
結果、収集こそ自分ではしとらんとけど、わりかし立派な研究結果の生み出せてしもうて本人が一番驚いとるごたった。