14日のラプソディー
頼もしい事に、年々次男のもらってくるチョコレートの数が増えていっている。
帰宅するやいなや、母親に「どうだ!」と並べて自慢している姿が微笑ましい。 彼にとってのチョコレートは、お気に入りのおもちゃと同じ種類の愛着なのだろうと察する。
夕食後に、それらを吟味しては、一粒ずつ口に入れて目を閉じ、もくもく味わっている姿は現時点での彼の人生上、もっとも幸せな瞬間のひとつだと思われる。
面白くないのは次女である。
日本においてのルール上、本来彼女はチョコを男子にあげる側である。 でもどちらかといえば、こちらが欲しいのだ。
幸いにもクラスの友達からひとつのチョコをゲットしていたものの、相手(兄)は多数である。 それがなんとも気に食わないのだ。
ただ一言涙ぐみながら「ズルい」と。
長女は毎年ながら、友チョコ作りに忙しい。 バレンタインデー前日には徹夜で仕込んでいる。 「こんなに沢山、商売でもはじめる気?」
と聞けば、友達同士での情報交換からすると、このくらいの数は間違いなく必要になるのだという。
当日後もまた、生チョコをこしらえていたので何故かと聞けば、約束していない人からもいただいたので、そのお返しをせねばとの事。
「一個食べてみて良い?」
と何気に聞いてみたら案外すんなり了承を得たのですぐさま口へ放りこんだ。
ココアパウダーの香ばしい香りの後に、リッチなチョコが溶けてきて、でもさほど甘ったるしいでもなくビターな後味が洋酒を欲しくなってくる。
「欧米のどんな高級チョコよりも、断然こちらが美味しいよ」
と感想を言えば、「そんなの当たり前でしょう」と言わんばかりの表情をしながら、また期間限定パティシエへと戻ったのだった。
うちの長男は極めて硬派で、ある。