ヘビースモーカーだったオレの禁煙法

禁煙して、からかれこれ10年が経つ。 今頃になって友人が禁煙を決意したので、その応援もかねての本稿とする。
ちなみにこれまでに行った禁煙は計三回で、一度目は半年で挫折、二度目は一日で終了、三度目がずっと続いて現在に至る。
一度目はたまたま周囲に禁煙を始めた人がおり、それにつられて止めたら難なく成功したもの。 で、その挫折は、飲み会の席で「んな事言わずに一本吸いな!」と差し出されたタバコに何となく火をつけて、それから再び吸い始めたという、止めるも始めるも第三者由来の禁煙だった。
二度目は本気で『禁煙セラピー』という世界的に翻訳されているこの分野の古典を熟読し、病院にも行き、ニコチンパッチの力を借りての禁煙開始だった。 医師から説明を受け、禁煙する旨の誓約書も書き、いざパッチを貼るも、正確には一日もガマンできずに吸ってしまった。 パッチ諸々がすごいストレスになったみたいで「たばこは吸ってもよろしい」と自分自身に強力に言い聞かせ、喫煙を正当化した瞬間でもあった。 この時「オレ一生喫煙者だきっと」と思ったのをよく覚えている。
三度目は、紫煙をくゆらせている時フと「タバコって本当に旨いのか?」と愛煙者らしからぬ哲学的疑問を抱いた所からはじまった。
一本火をつけ存分に煙を吸い込み満足したところで火を消して、間をおかずもう一本吸ってみると、非常にマズかった。 それでも我慢して吸い切って、もう一本吸ってみたところ、旨いマズいというよりも、単なる嫌らしい煙でしかなかった。
つまり、喫煙というものは皆が言うように、ニコチン中毒によるものであり、喫煙者ならばだれでも理解できるが、吸い終わってから一時間もすれば、またもう一本吸いたくなる発作が起きるものなのだ。
これは、よく考えてみれば「オレ自身がタバコを吸いたい」というよりも、ニコチン中毒者なので、体内のニコチンレベルが低下してきたら自然とタバコを欲す信号を脳が受け取るようになっていると考えれば、非常にバカらしい話に思えてきたワケで。
で、タバコを吸えば気分は休まるが、また一時間後には欲すという症状を、起きている間何度も繰り返すことになる。 日々生活していれば、一時間おきに一喜一憂する瞬間等多々あるわけで、ニコチン切れを起こした時、たまたま嬉しい事が起きてる最中だと「タバコを吸うと嬉しさが倍増する!」と思い込んじゃったり、逆に悲しい時だと「タバコを吸うとなんか悲しさがまぎれるんだよね」と思えてしまったりするのではなかろうかと自己分析してみたのだった。 つまり、
タバコを吸おうが吸うまいが、嬉しい事や悲しい事は日々あるわけだけど、いずれにしろ、その最中に喫煙すると、中毒症状が満たされるワケだから、その時の状況にその満足感が結び付けられて「タバコは旨い」と認識されるのではないかと感じたのだ。
そこでこのように禁煙を開始した。
まず家族に「今日からタバコ止めます!」と宣言し、タバコとライターを置いたまま外出した。 もちろんタバコが吸いたくなるが、その際妻へこう、声に出して説明した。
「オレ今タバコ吸いたいんだけど、これはオレが吸いたいというよりも、体がニコチン不足だという信号を発信しているだけなので欲しいのはオレでない。 だから要らない」
こう口にすると、脳が納得するのか吸いたい衝動が収まったので、吸いたくなる度これを繰り返した。 禁煙二日目までは非常に吸いたい時があり、正直苦しさもあったが、とにかく口に出して客観的にタバコを吸いたいという欲求を分析して声に出せば、不思議と欲求は治まった。
以降ニコチン欲求が次第に弱まっていくので流れにまかせる、という感じ。
生活していればもちろん喫煙者に遭遇するし、酒場に行けば、周囲は喫煙者だらけという環境だったりもするが、まったく欲しくはなくなったから不思議だ。 喫煙者を目にする度「ああオレもこんな風だったんだなあ大変だ」と思える。
止めてひと月ほどした時、体は欲していないハズだが、何故か夢にタバコが出てきた。 すでについ一本火をつけて吸ってしまっており、ものすごい罪悪感を感じながらあわててもみ消し、ヘコんでいたらアラ夢だった、みたいなオチ。
これはたぶん、内心ではまだ十年来付き合ってきたタバコの事が忘れられない自分もいるのだと思うし、それはそれで認めるとよいかと思う。 ただ、「今の俺にはもうニコチンは必要ないのだ」という事実を体感するべきなのだ。
健康面ではものすごく良い事が起こる。
禁煙から四、五日すると、慢性的な鼻づまりが解消された。 というよりも「あー息がスイスイ通るスゲエ! ていうか俺って鼻づまりだったんだ」と、妙にスムーズな呼吸に幸福感を得る。 たとえて言うなら、喫煙中、己の肺は両胸に500mlのペットボトル大のものが備わっていたところ、これが突然2リットル大に容量アップしたような感じがするのだ。
呼吸しやすいと寝起きが大変楽で、日中頭が冴える。 これが非常に快適で、仮にもう一度タバコを吸いたくなったとしても、今享けている恩恵を、みすみすドブに捨てちまうほど、自虐的にはもうなれない。
以上酒は絶対止めない男の綴る、タバコとの別れ話完結。
あなたも絶対止められる、がんばって!
追記2017/01/12
私が禁煙に成功した秘訣は何でもない。 あらゆる効きそうなテクニックよりも、たった一言愛する人からの言葉だった。
あなたにタバコは似合わないよ。
これだけでキッパリ止められた(最近IQOSを止めた友人談)。