鳥獣戯画

通称「鳥獣戯画」で知られる「鳥獣人物戯画」は、全四巻からなる。 その第一巻が甲巻で、ウサギとカエルが相撲をとっている場面でよく知られている。
描かれたのは今から850年ほど昔の平安末期。
ウサギは耳先だけ黒い北国の野ウサギ。 カエルはまだら模様で背中の盛り上がる、トノサマガエル。 実に忠実に描写された両者が、くんづほぐれつ相撲をしている場面なのだ。
絵をよく見ればすぐにわかるが、カエルもウサギも決死の勝負をしているわけでなく、笑っている。 あくまで遊びの範ちゅうを出ない取組である。
墨一色、線と濃淡だけで描かれたこの画は「漫画の祖」とも「アニメの祖」とも呼ばれる国宝。
文字だけでなく、絵の力を用いて物語を語る手法は、十二世紀から現代へ脈々と続いてきた、日本文化の大きな特色のひとつなのだった。