ガンプラ
小学生時代、何が楽しかったかといえばガンプラだ。
夏休みともなれば朝から親友と待ち合わせて自転車をこぎ、市民プールでめいいっぱい泳いだ。 そしてすぐ近くのアイス屋で12段のソフトクリームを買い、舐めながら「ツキオカ」に向かうのだ。
ツキオカは模型店である。 ショーウィンドーには緻密に作られた模型が所狭しと並べられている。 店内はプラモデルの箱がうず高く積み上げられており、人一人通るのがやっとの通路を歩きながら、目当てのモデルを探すのだ。
我々の目的はガンダムのプラモデルであるが、手を出せそうも無いラジコンや、船の模型を眺めるのも楽しみだった。
ガンプラを買ったら、たまり場の友人宅へ向かい、クーラーのよく効いた部屋で、各々静かに作りはじめるのだった。
先日十年ぶりぐらいに当時の友人と会い、飲みながらガンプラの話で盛り上がった。 思えばそれ以来、ガンプラどころか模型を作ることすらないよなあと互いに相槌を打ちあった。
うちの長男(小学三年生)は、もちろんプラモデルを作ったことがない。 「プラモデルって知ってる?」と聞くと、その言葉すら知らなかった。 クラスの皆は何をして遊んでいると思うかを聞いてみると、ほとんどがテレビゲームだという答えだった。
そもそも当時でさえ、プラモデルを作って遊んでいる子供というのは数えるぐらいしかいかなった。 皆、ファミコンでスーマリでもやってたんだろうと思う。
プラモ作りは手先の訓練になると思う。 ニッパーやヤスリ、接着剤の使い方なども、そこで覚えたのだから。 長男はどちらかといえば不器用な男である。 そこで、教育の一環として、ガンプラ作りをやってもらうことにした。
まず試しに1/144のガンダムをAmazonで注文し、長男に挑戦してもらった。 説明書を広げ、パーツを切り離し、照らし合わせながら組んでいく。 どうしてもわからないところだけ手を貸すようにした(それにしても近頃のモデルは接着剤は要らないはパーツごとに色分けされているわ、親切すぎてけしからん)。
長男は三日がかりで何とか組み上げた。 一度組めれば楽しくなるもので「別のを作ってみる?」と聞けば二つ返事だった。 しめしめ。
こうなるとだまっていないのが次男であり「オレも作りたい!」ということなので、アマゾンで好きなのを選ばせた。 さすがに次男は一人で作れないので、一緒に作ることになる。
長男はメキメキスキルアップし、一番最初に作ったガンダムを眺めては「バリの処理がもう一歩というところだね」なんてつぶやくようになった。
親としてうれしい結果だ。
書斎には、子供たちがこれから作ることになるガンプラの箱をうずたかく積んである。 その山を眺めていると、子供の頃を思い出す。
欲しいものはネットで簡単に見つけ出し、わずか数クリックで家まで届いてしまう世の中だ。 でも子供たちには、実際に店まで出向き、手に取り選ぶ楽しさも教えてやらねばと思っている。 ツキオカ、行ってみるかなあ。