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2010/11/06 酒肴野菜

白菜の古漬け

白菜の古漬け

古漬けの作り方へ→

「そこの小道を入った所にあるらしいよ」

仄暗い路地を指差して彼は言った。 「へぇー。 で、美味しいの?」

「うん、アイツがいうにはナカナカな店だという話たけど」

なんでも彼の知人が偶然見つけた店なのだとか。

こぢんまりとした店の前に立ち、壁面に張り出されている品書きを眺める。 「ほぅ、イワシの刺身…何、女将自慢のシメサバときたか。 そーか、おでんの時期が来たんだなあ…覗いてみるか」

「ガラガラ…」「いらっしゃい」

真っ白な割烹着の女将さんが立っていた。 混んでいるが、幸いカウンターの隅っこがふたつ空いている。

ビールを飲みながら肴の注文を。 「とりあえずシメサバをお願いします」

女将:「ごめんなさいねぇ、今日は市場が休みだったから、シメサバ無いのよ。 刺盛りだったらなんとか作れるけど」

仕方ない。

カキフライあります?」

女将:「なんとか一人前はできますよ。 あとはねえ、これといって今日は市場が休みなもので、たいした料理が作れないのよ。 おでんだったら沢山あるけどいかが?」

言われたとおりにする。

極めて家庭的な味のするおでんだった。 かえってそれが、うれしかった。 熱燗をもらう。

メニューに「漬物」とあったので、これも「おふくろの味」がするのかもしれんと注文した。

先のカキフライが出てきた。 小ぶりだからきっと地ガキなのだろう。 レモンを絞って口に放り込んだ。

「?」

今、口にしたのはカキフライである。 しかしこの味はカキでない。 まぎれもない魚の味だ。 でも相方がつまんだのは、まさにカキフイだったという。

目の前のカキフライをよく観察すると、微妙に形の違うフライが混じっていることがわかる。 それが、何かしら小魚のフライだったのだ。

「あのー、カキフライに混ざっている魚のフライは何なのでしょうか?」

女将:「ごめんなさいねえ、カキが残り少なかったから、ナントカという小魚のフライを一緒に盛り合わせたのよ」

な、なるほどですね…。

漬物が到着。 白菜漬けである。 これからの季節、グンと美味しさを増す野菜だ。 ひとひら箸でつまみあげて口に入れた。

「?」

まるでキムチの古漬けのような、かすかな酸味がある。 いやこれはかすかどころではない、かなりの酸が、徐々に舌の上へ広がってゆく。 まるですぐきのようだ。 相方と顔を見合わせ、すっぱい白菜漬けをかみしめる。

これは、あえて酸味が出るまで漬けたものなのか、それとも単に、白菜漬けを置き過ぎただけのものなのかは判断できかねる。 ともあれ、はじめて口にした、酸味のある白菜漬けにしばしショックを受ける。

ヒソヒソすっぱい白菜について話し合っていたところ、となりの席に座る、耳にギラギラ光るピアスを2つはめたおじさんが話しかけてきた。

「これ、もうちょっと酸味が出てたほうがホントは旨いねんけどなあ」

だ、そうだ。

おじさんが言うには、もうちょっと重石をして寝かせ、少しスジスジさせたほうが良いのだとか。 なんでもこの方生まれが京都で、寒くなると母親が、一年分の白菜漬けを大樽で仕込んでいたそうで。 一年分とはいっても、翌年春になれば食べつくしてしまうわけで、その間は白菜の古漬けが待ち遠しくて仕方がなかったのだとか。

どうやって漬けるのかを聞けば、ただシンプルに塩で、洗い干しした白菜を漬け込むだけだという。 とにかく重石をしっかりとし、白菜が汁の中に常に浸っている状態をキープするのがコツらしい。

ここまで聞いておいて、白菜の古漬けを作ってみないわけにはいかない。 早速言われたように漬けて、毎日味見をした。 ちょうど六日目をすぎたころ、ほのかな酸味が醸し出てきた。

開封したての七味をふりかけてつまめば、ぬる燗をしんみり飲むことができた。

古漬けの作り方

白菜漬けが、ほのかに酸味を醸し出すまで安置しておけばよいだけです。

“白菜の古漬け” への1件のコメント

  1. […] 大量に白菜の古漬けをこしらえる。 […]

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