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2007/05/25 雑記

指から針が出る人

腹が減ってどうしようもなくて、17時頃ラーメン屋に入る。 晩飯まではまだ長いし、少し腹ごしらえをしておこうという魂胆だ。

だけどあまりの空腹が故に、替え玉をしすぎ、サイドメニューも注文しまくり、たった一人でそのラーメン屋のフルコースをを食べ尽くしてしまった。 満腹にはなったが、何故ラーメン屋で腹いっぱいになるまで 食わねばならなかったのか、何故夕食をラーメン屋で済ませてしまったのか、しかもまだ5時だし。 どこか寂しい思いが脳裏をめぐる。

しかし満腹になってしまったものはしょうがない。 家に帰って子供たちの晩御飯を作ってやらねば。 急ピッチで晩御飯をこしらえ、子供らに食べさせる。 そして、就寝前のなごやかな時間を家族で過ごす。 ふーん幸せ。

携帯が鳴る。

少しいやな予感を感じながらも、携帯を開く「ゲッ、Eだ」

E君は今だ独身なのをいいことに、遊びほうけている人物であり、古くからの友人でもある。 独身が故、家庭を持つ者の安らかなひと時というものを知らず、自分がヒマならば、いつ何時、どのような場所にいても電話をガンガンかけてくる空気を読めない人だ。 どうせ飲みに行こうとか言うにきまっている。

「飲みにイ・コ・ウ・ゼ」とすでに酔っていることが電話口でもわかる。 ダサい。 「いやね、だから、もうメシ食ったんだよね。 ラーメンを山のように食ったんだよな。 もう飲めないし、たとえ飲めたとしても、チビたちと遊んでいるから行かない」

このようにキッパリとお断りしたにも関わらず、どうしても来いという。 オイ嫁は、自分が説得してあげるから是非出て来いという。 そこまでいうならば、何故わざわざラーメンで腹いっぱいの風呂にも入って子供とお遊び中のオイが出向かなければいかないのか、理由を言え。

「指から針がでる女が来る」

という。 何のことだかさっぱりわからん。 わけがわからなくなったところで、サッサト電話を切ろうかとすると「マテマテマテ」という。 指から針の出る女は、マッサージがとても上手く、どのような疲れも取り去ってくれる不思議な力を持っているとかなんとか熱く語る。

酔っ払いの戯言といえばそれまでだが、気にならないでもないという気になってきた。 遠くないし、ちょっと行ってみるかな。 ということで嫁に「指から針が出る女を見に行ってくる」と伝え、冷めた目で見送られながら、家を出たのだった。

E君が見えたので、タクシーを降りる。 半にやけのE君が「オイ~」と近寄ってくる。 不気味だ・・。 中華料理屋で針の出る女&その相方と待ち合わせをしているそうで、まだ時間があるらしい。 だから少し腹ごしらえをしたいとのこと。 「そうだ、ラーメン食わない?」なんてふざけたことを言う。 青筋たてながら、今日の17時頃の話をした。 それでもどうしてもラーメンが食いたいのだというので、ついていく。

これがまたマズいラーメン屋に入るわけだ。 相変わらずE君の味覚はおかしい。 「へへ、この店はね、旨すぎて、スープ泥棒に入られたことがあるらしいよ。」といつものキメ台詞を言う。 んなこたないと、断言したい。 何回食っても、この店は病み付きにはならないということは事実だ。 このラーメン屋は、マズい。 腹減ってても食わない。 と心で思いつつも、E君がラーメンを食い終わるまで、ビールでも飲んでおく。

マズいラーメン屋は大体店員の私語が多い。 しかも、客の会話よりも大きな声でショーもない話をしゃべりまくっている。 たまに客が入ってくると、先に食券を買うように促し、客の背後からどのメニューの券を購入するのかをうかがっている。 決めあぐねている客がいると、少しイライラした様子でさらに観察を続け、味噌ラーメンを購入したとするならば、客が席につくまえに、すぐさま丼に味噌を放り込み、スープを注ぎ込み、かき混ぜている。

この作業は、客にいち早くラーメンを食べさせてあげようという心配りからくるものではなく、手っ取り早く客の注文を済ませて、はやく隣のスタッフとしゃべりたいといのだという本心がミエミエの、やりかたである。

一応職人っぽく麺をかき混ぜたり、その他ラーメン職人がやるであろう動作をしているが、どれも雰囲気だけでスキルは伴っておらず、幼稚である。 一度、全国の有名ラーメン店を視察に行け。 それからしゃべれ。

このように、ビールを飲みつつ、エセラーメン職人を観察している横で、ラーメンをすすりながら指から針が出る女の話を語るE君。 要は、E君自身も今日初めて会うのだそうで、数千円払ってマッサージをやってもらいたいのだが、話に聞くと、一人で向かうのはなんだか恐ろしいので、オイについてきてもらった、ということになる。 ビビリだ。

E君がようやくラーメンを食い終わったので、待ち合わせの中華料理屋へ向かう。 何故待ち合わせが中華料理屋なのか、何故中華料理を食べる前にラーメンをすすっておかねばならないのかという細かな疑問もあるが、E君とはそもそもこういう人だし、いいか。

中華料理に着いたが、指から針の出る女はまだ来ていない。 店内のイイ臭いにつられて少し腹が減ってきた。 よし、北京ダッグを食ってみるか。 「紹興酒と北京ダッグを下さい」 しばらくして、艶やかな北京ダッグが運ばれてきた。 それを厨師が目の前で皮を削いでくれる。 あまりにも旨そうで、紹興酒のピッチが早まる。 もはや、指から針の出る女の話なんてどうでもよい。

北京ダッグをつまもうとしたそのとき、指から針の出る女は現れた。 2人連れで、おそらくどちらも女である。 しかもどちらも似ており、どっちから針が出るのかはわからない。 メガネをかけており、体格がよく、おとなしそうな人物。 一応、にこやかに挨拶をしておく。

実は背の少し大きいほうが、針の出るほうであり、それを知ったE君は、少し緊張したようで、紹興酒をあおる。 「マッサージをやりたい方はどちらですか?」と聞かれたので、E君を指差す。 すると早速E君は注意をうける。 マッサージをする前は、酒は控えてほしいのだという。

単刀直入に、指から針が出るとは一体どういう現象なのですか?と尋ねてみた。 すると本人ではなく、おそらく女性である相方が、耳を触ってもらえという。 急に耳を触ってもらえと言われても抵抗がある。 見ず知らずの人に耳を差し出すのは気が引けるし、本当に針が出るのであれば、オイの耳はどうなってしまうのかはわからない。

ここでひとつ断っておきたいわけだが、オイは疑い深い。 TVのスピリチュアルナントカとか、カントカ先生の占いなんて、まったく信じてはいない。 大槻教授は大好きだ。 だが、この世にそのような現象がまったくないとは断言できない。自分が実際経験したり、見たりすれば、もちろん信じる。 がしかし、見たり経験したことがない。

指から針の出る女はオイの右側に座っていたので、そのまま右耳を恐る恐る差し出してみる。 横目で針女の手がオイに伸びてきているのがわかる。 そして、耳の中ほどに軽く触られた。 瞬間、激痛が走る。

耳も痛かったが、全身痛かった。 本当に針で刺されたのではなかろうかと思い、女の手をつかみ、指先を見るがなにもない。 耳も無事のようである。 一体。

なんでも、体に悪いところがあれば、耳を触られると痛いのだそうで、悪いところがなければ、別に痛くはないのだそうな。 それではオイの体のどこが悪いのかというふうに尋ねてみると、なんでも胆嚢が悪いのだとかいう。

おかしいね。 この前の健康診断では健康そのものっていう結果がでたんだけどな。 と伝えると、そのような検査結果には、もっと悪くなってから現れてくるのだそうで、今のうちに注意しておいたほうがよいのだそうな 。 酒の飲みすぎて、胆嚢に負担がかかっているのだとか。

酒はよく飲むが、飲まれることはないし、休肝日も設けている。 だのに、胆嚢が悪いといわれれば少しは気になる。 へえ。 耳が痛かったのは事実だ。

どうにも納得がいかず、耳以外では、体のどこが悪いのかはわからないのか? と聞いてみると、耳以外でもわかるのだとか。 それならばと、今度は手を差し出してみた。 さあ、触ってみてください。 針女は、オイの人差し指に着目し、人差し指を軽くつまむ。 少しヒネられた瞬間、激痛が走った。 これもやはり、体が悪い証なのだとか。

以前、You Tubeで、レーガン大統領のSP(だったっけな)が、日本の合気道の先生にいとも簡単に取り押さえられたという映像を見かけたような気がするが、まさにそのような感じを受けた。

少し触れられただけでもこの痛みなのだから、全身をマッサージされるとなると、体が悪い人にとっては自殺行為のようにも思える。 E君は、不健康の塊のような人物なわけだから、もしかすると、お亡くなりになられるかもしれない。 でも指から針の出る女は、霊魂やオーラも見ることができるそうなので、簡単に呼び戻してくれるのかもしれない。 なんて老少豆腐を食べながらひとり考えた。

オイならばマッサージは絶対お断りする。 そういえば、その日以来、E君に会っていないし、連絡もない。 もしかすると・・・。

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