笹の葉にご用心
毎年梅雨時期になると、庭の小笹の青が眩しくなってくる。
台風の多い年だと、それをまともに受けた笹は、葉が飛び散ってまるで枯れてしまったかのよう無様な姿となってしまう。
でも雨がシトシト降り続く頃になると、まるで命を吹き返したかのように青い葉を茂らせながら、新たな笹が地面から伸び出てくるのだ。
今年は異様に梅雨明けが早かった。
ゴミ出しをしたついでに笹の様子を眺めて、それから水撒きをするのが日課であり、今朝もそのルーティンを楽しみながら行っていた。
随分茂っている。 今年はしばらくぶりに、天の川を見る事ができるのかもしれない。 となると、じきこの笹には重要な仕事が待っている事になる。
そこで体裁をととのえてやる事にした。
古い枝を落としてみたり、色の悪い葉を摘んでみたり。 あまりにも垂れ下がりすぎている枝があったので、それを隣のと目立たぬようひとまとめにしてシャンとさせたりしていた。
と、その瞬間。
笹の枝が私の左目を打った。 一種何が起きたのか分からなかったが、すぐ左目がジンジンしてきたのでそうなのだと理解した。
とっさに目を掌で覆った所、涙がボロボロ落ちてくる。
かすんで視界が狭まっている。
目がコロゴロするみたいなので、ゴミが入ったのかと流水に当ててしばらく洗ってみたりもした。
しばらくすると痺れは収まったものの、ゴロゴロが消えてくれない。
片方の目に不具合があるだけで、ヒトは劇的に能率が落ちてしまう事を改めて実感した。 このままでは一日を棒に振ってしまう。 朝イチで眼科に向かった。
何故だか眼科は緊張する。
前回眼科に来たのは何年前だろうか。 その時はたしか、小さなゴミが入っていたと記憶している。
アゴを専用の台の上に乗せるよう促した女医は、左目にライトを当ててしげしげ観察した。 そして何やら薬を塗られ、自らの瞳の拡大画像を見せられながら症状の説明を受けた。
瞳へ縦に、緑色の線が走っているのが見えた。 何でもこれが、傷なのだという。 今回のゴロゴロは、ゴミが入っているのではなく、傷がついたものによるそうだ。
「笹で傷がついたら緑色になるのか…」と内心驚きながら対処法を聞く。 ニ三日すれば収まるだろうという事だった。
診察を終えて看護師から目にグリスのような薬を塗られた。 とっさに「笹で傷がついたから緑色なんですよね?」と聞いてみたら、そうではないらしい。 先生が塗った薬が緑色をしているのだとか。 傷をわかりやすくするためそうなのだという、なるほど。
目薬を出されて一日四回打つよう言われた。
帰宅しても一日中、目の違和感は消えず何事にも集中できなかった。 目薬を使うも、それは解消されなかった。 あくる日目を覚ますと、もっと症状は悪化していた。 もしかすると傷以外に何か重大な事が起きているのでは?と思うほどだった。
ところが一転、昼を過ぎるとウソみたいに症状は治まり目の充血も和らいでいた。
そしてこれを書いている三日目の今、私の左目は何事もなかったかのよう正常に機能している。
改めて、目の大切さを笹に教えられてしまった。
今朝、笹に水をやっている時フとその葉の輪郭を指でなでてみると、ノコギリのような構造をしていた。 なるほどこれだと傷もつくわけだと妙に納得した。
あなたも、くれぐれも、笹には用心していただきたい。 美しいソレにはアレがあるのだから。
「笹の葉でかぶれた!」という話かと思ってたら、大変なことに…
まつげが入っただけでもあれだけ痛いのに。
庭仕事の時は眼鏡にするかゴーグルしたほうがよいのかしら。(暑くてかなわん)
笹はしなるので、予想だにしない方向から枝が飛んでくるんですね。
七夕を楽しみにしているお子さん等にも注意喚起しておきたい所です。
「笹には優しく接してね」
と(笑)。