酒縁
量販店で買い物中に見慣れぬ日本酒の銘柄が目についた。 〇関である。
〇関という酒がある事はもちろん知ってはいたものの、ここ長崎でこの銘柄を見る事はこれまでなかった。
しかも一升瓶で千円程度という安さ。 いまの時期お燗が恋しいので今晩〇関でいっちょう試してみるかと提げて帰った。
よく燗酒コンテスト金賞、など札のついた日本酒を最近見かけるが、お燗してみると妙に甘味が強く丸っこい味のするものが多い。 ところが〇関は舌上で広がりながらもキリッとしたシブさも残っており、今年のお燗は〇関で過ごす事に決めた。
すぐさまダース買いしてこの11月を過ごしてきた。
師走、写真撮影の依頼が舞いこんだ。 なんでもSNS投稿用の写真を求めているらしい。 依頼者は誰だと思う? なんと、〇関の方だったのだ。
これまで20年以上日本酒を飲み続けてき、このあいだ初めて口にした銘柄が気に入って毎日飲んでいたら、当のその会社から仕事の依頼が来るという奇跡。
あまりそういう方向の思考は持ち合わせていないが、これを縁と言わず何と表せばよいか。 もはや縁以外の何ものでもないだろうと快く引き受けて納品を済ませた。
若い頃に読んだ『思考は現実化する』をフと思い出しながら、熱燗を空けた。