レジ袋一枚だけください
スーパーで買い物を済ませ、いざレジに並んだ。
ここのレジに並んだのは、列が無かったからだ。 次は私の番だ。 しかも先客、買い物点数がとても少ない。
「あれ?」
少ないハズだがいっこうにコチラの番が来ない。 でも急いでないしまあ良いか。 スマホを取り出し各種チェックを始めた。
「こちらのレジにどうぞ」
と、ひとつ向こうのレジさんから声をかけられたが「いえ、ここで大丈夫です」と答え、順番を待つ。 普段からもっぱらこうしており、その理由は大所帯故カゴが重いから、いちいち持ってむこうまで移動するよりも、このまま待ち続けほうが楽だからである(超混雑時はさすがに考えるが)。
さておきいっこうに順番が来ない。 レジに目をやると、すでに支払シーンへと移行している様子。 だがその男性客は、財布こそ手にしているものの、支払う気配がない。 レジさんもカカシみたいに立ちつくしている。
やがてとなりのレジさんが現れて、こちらの買い物をレジに通し始めた。
突如「ごめーん遅くなって」と女性が現れた。
男性客の連れらしい。 手には二割引きになったアサリのパックをひとつ持っていた。 どうやら会計時買い忘れに気づき、それをひとりは取りに行き、もうひとりはレジで待つという状況だったみたいだ。
レジさんの顔は険しい。
あれ? この女性、よく見たらさっき野菜売り場でアボカドの前に大きなリュックで立ちつくし、なかなかどいてくれなかった人だ。
気がつけばレジさんの眉間のシワが、こちらにもうつっていた。