フル・スゥイート

飲み屋の帰りにバーで飲んでいたらラインが来た。
「ちょっと初めてな知り合いの店に行きたいんだけど、ひとりで行くのはアレなので付き合って」
と。
そう遠くない場所で、こちらも何気に興味がわいたので向かう事に。
かなり若者向けの店である。 昼間のカフェっぽい内装の店だが歴としたBarだという。 すでに結構呑んでいたので、軽いつまみと、ウォッカをストレートで注文してみた。
するとオーナーから驚きの一言が。 「ウォッカのソーダ割りは置いてますけどストレートは無いです」と。
不思議な話である。
そこで「ソーダを入れずにウォッカだけ持ってきていただくのは不可なんですか?」と聞けばそうでないという。 「ではソーダ抜きでウォッカを」とお願いした。
しばらくして氷のガッツリ入った「ウォッカの水割」みたいなのが出てきた。 怪訝ながら口にしてみると水の味しかしないという…(なぜストレートでくれないのか)。
注文しておいたチーズが出てきた。 カマンベールチーズにハチミツがかかっている模様。 ひとつつまむと、まさにその味がしたのだが、甘すぎてまったく肴にならない。
これ系を出すのなら、せめて塩・胡椒が必要なハズ。 そもそもハチミツの量が多すぎてチーズがザブザブ浸っている事自体が問題ではあるのだが(なぜ素で出さないのか)。
塩と胡椒があるかを聞けば、無いそうで…。
目が覚めてきたぞ。
メニューを見れば、どれもこれも甘そうなものばかりで、酒のアテになるものがほぼ無い。 私はスイーツの迷宮に紛れ込んでしまったのだ。 あのまま素直に帰ればこんな目には遭わなかったのに。
一方呼び出した当人は、ハチミツのかかった分厚いパンに乗せたれたジェラートを、まるで親の仇に出会ったかのようにムシャついている。
赤ワインを頼んでみたが一種類しか用意が無く、しかも相当なる甘口で。 結局ナッツを注文して頬張りながらグラスを空け、夜逃げするみたいに店を出たのだった。