スルーする事
10年前にウェブサイトの構築から運営、軌道に乗るまでを手伝った知人よりメールが来た。
「これどう思う?」
と。 添付のPDFを開けば一目見るなり否が応でも感じてしまうキナ臭さ。
ECサイト運営に役立つセミナーだ、とセンスのかけらもないレイアウトの全3ページになるチラシは、大きすぎるフォントとまったく読めない砂粒みたいなフォントを織り交ぜつつ、その効果を謳っている。
送り主は、名前だけなら知ってる人の多いECモールである。
10秒で「相手にしないで良い」と返事した。
するとこのように返ってきた。 「でも県の産業支援機構がからんでいるからちゃんとしてるんでないの?」と。
なぜ県がからむとちゃんとしているという認識を受けるのだろうか。 そもそも県がからんでいるくせに、こんな低質なチラシを該当すると思われる業者へバラまいているのかと、こちらとしてはまったく逆の感想を持った。
良く見ると、たしかに県庁提携の文字がある。
そもそも県は、なぜ単なる一、ECモールと提携しなければならないのだろうか? 他に当たるべき筋を見いだせないのだろうか。 そもそも庁内にウェブに長けた部門を設ける必要があるのではなかろうか。
この案件はつまり県内の産業を支援する、というのは建前であり、実は某ECモールへの集客支援を県が援助している、という流れとなる。
色々方法がありますが、つまりウチに店を出せば儲かりますよ!と(冗談も程々にしていただきたい)。
チラシが届いた事業者を助けるのではなくむしろ喰い物にしてやろうという魂胆が見え見えのあさましさである。
彼にはこう伝えた。
普段使えない、不便利なサイトと誉れ高いモールを運営している会社に、何を学ぶことがあろうか。 ユーザーの利便性を完全に無視した操作性のECモール。 買い物をすれば自動的にメルマガが送り付けられるようになっている長い目で見るとお客が逃げてゆく仕様。
ユーザーをイラつかせる能力を持つ会社だというのは事実だが、反面教師として見る以外、こんな集団から得られる知見は無い。
と。
同時に私自身が読んで参考になり、今も捨てずに本棚に並べている本のいくつかを彼に送った。 熟読して身につけてほしい。
ビジネスに、ウェブだからリアルだからという垣根は存在しない。
思い出したついでに。
まだ駆け出しの二十代、私のビジネスをこきおろしたある広告屋がいた。 その後何年かして順調に軌道に乗りはじめた頃たまたま再開した折、
今度は掌を返してこちらの事を持ち上げてきて、「自分も甘い汁を吸いたいのです」と顔にデカデカ油性マジックで書いてあるかのような分かりやすさで接近してきた田舎社長がいた。
もちろんきっぱり断った。
その際、彼の放った捨てゼリフが忘れられない。 「世間はあらぬ所でつながっているから角の立つような事はしないほうが良い」と。
なぜ御社と仕事をしない事がつまり、角が立つ事になるのだろうか? とは言い返さなかった。
笑顔でただ黙って視線をおくると、煙のようにどこかへ消えていった。
「あの広告屋今大変らしいよ」
という話を聞いたのは、もう五年も前になる。