自由すぎる酒屋
良い銘柄が置いているから、数年にわたり通っている酒屋がある。
このお店、休みは日曜だけだと一応決まってはいるものの、水曜あたりに行けば閉まっている事が多い。 営業時間は17:00までだと一応決まってはいるものの、15:00に閉まっていたりもする。
入口は自動ドアにはなっているものの、手動である。 しかもその旨の張り紙などされていないので、初めての客は扉が開いてくるまでドアの前に直立する事になるのだが、ほとんどの客が5秒ほど立ちつくした所で「このドア変だぞ」と気づく寸法になっている。
ごくたまにボサノヴァが流れている事がある。
ほとんどの酒に値札がついていないから、たまに会計時、ビックリするような金額になっている事があるし、その逆もある。
常連になっても、レシートはお願いしないと出してくれない。
誰もが知っている超有名銘柄も普通に並べられているが、その酒を何気にカウンターへ持って行けるような空気感はない。
DMを出すからと住所をむりやり聞かれて教えた事があったが、一度もそれが送られてきた事は無い。
それでもつい、通いたくなる店なのだ。
その理由は程良い具合に脱力したオカミさんにある。 とくに会計処理以外はこちらに声かけはしてこないのだが、ひとたび自分の好きな銘柄を手に取った客がいれば、それについて、頼まれもしないのに熱くウンチクしてくる。
ひとまずお酒に対する愛はひしひし伝わってくる。