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歯医者から定期検診のハガキが届いた。
身に覚えがないが、この字はまさしく私の字だ……日付が記されている。 書いたのは半年前で、予約の日付が一週間後になっている。
通っている歯医者は、一年前に定期健診担当者が変わった。 それまでは嬉々として向かっていた三か月に一度の検診も、次第に足が遠のいた。
その理由は、担当との折り合いが悪くなったからだ。
とにかく攻めの検診をしてくる。 以前の担当がいかにソフトタッチだったかという事がよくわかる。
歯茎のチェックも「ツンツン」だったのが「サクッサクッ」とまあなんちゅうか「軽く刺してません?」と聞きたくなる程に痛い。
歯石取りだって、そこまでやるかというぐらい、根本までグイグイやる。 あまりに痛いので左手を挙げて伝えたら「痛かったら麻酔しましょうか」と言う。 虫歯ならばともかく、なんで歯石取るのに麻酔かよと。
やや左を向いてくださいと言う。 向けば向いたで「向きすぎです」と戻される。 それならいっそ、あなたが角度を定めなさい初めからと言いたい。
歯の裏についた茶渋をガリガリ削りこむ。 そのあとトンガッった危険物で、ひっかき回す。 「歯が欠けるのではなかろうか」と不安で頭が一杯になる。 頭は振動で貯金箱のように揺れる。
もはや一刻も早く処理が終わるのを祈るばかりであり、もう絶対歯医者を変えようと固く心に誓いながらも情けない姿で仰向けになる事約一時間。 ようやくヤマを越えた。
と思ったら仕上げの糸楊枝がまた痛い。 「ちょっとこの部分は歯と歯の間が狭いですね」とつぶやきながらも強引に、徹底的に糸を歯間に入れ込んでくる。 もはやスキッパになってしまうのではなかろうかと不安になってくる。
できれば処置の前に予定を伝えてほしい。 たとえば今回一時間弱の掃除になるとか、まず歯石をとります、その後歯を磨きますみたいに流れを教えてくれたらこちらも心の準備ができるというものだ。
最後に主治医のチェックで終了となる。
帰りながら、どこかに良さげな歯医者はないかとキョロキョロすると、意外とあちこち歯医者は点在している。 周囲にも「そんなに嫌なら変えればいいのに」と言われるが、歯医者は変えるのにも妙な決心が必要で。 つまり歯科医が嫌いだから……新しい歯医者が今よりもっと怖い所だったらどうしようと尻込みしてしまうのだ。
つまり歯医者以外の人に歯の掃除をしてもらいたいわけで。