ヒラゴマ案件
息子が二つくらいの頃だったろうか、一度車で閉じ込みになった事があった。
買い物から家に戻り、夫婦そろって車からせっせと荷物を下ろしている時の事だった。 息子は突如ドアを閉め、何かのはずみでロックをかけてしまったのだった・・・キーは車の中。
「おーい、こっちこっち、ほらそこにボタンあるでしょ、それをこうやってキュッとやってみな、おりこうだねー」
と二人して必死でジェスチャーするも、当の息子は何のこっちゃと手を叩いて喜んでいる。
あいにく秋口で日が落ちた時だったので、熱中症等の心配はないが、初めての子供だったからとにかく一刻でも早く救出せねばとハタから見たらもう「あの夫婦ついにおかしくなったのか」 と思われたであろう大声をあげつつ息子の関心を引きつけ、仕草でカギを開けさせるという苦労をさんざん続けた結果、
もはやガラスを割るしかないか、それともJAFを呼ぶかと思案していたところで現れたのが近所のおじさんだった。
氏は定年まで船舶の整備士をしていた人で、騒ぎを見て歩いてきたのだった。 とっさに「ハリガネのハンガーあります?」と家内に声をかけたおじさんは、手にした無印良品製をほどいて妙な形に曲げた。 それをドアウインドウの隙間にねじ込みゴチャゴチャ奇妙に動かしたところ・・・「カチャ」というそっけない音がし、ロックは解除されたのだった。
その時の歓喜を今でもアリアリと覚えている。
昨日バスを待っていた所、まさに当時の我ら状態になっている初心者マークを付けた若い女性を見た。 幸いすでにJAFが到着しておりいざ開錠作業に取りかかった所だった。
ドアの隙間にゴム製の氷枕のようなものをねじ込んで、膨らませると隙間ができる。 そこへ器具を挿入し、いとも簡単にミッション終了となった。 ものの2分程度か。
あ、バスが来た。