レタシャブ
この前つくったつけ麺のチャーシューは、東海林風だった。 東海林風は豚肉の塊を茹でて、それを醤油に浸しただけで作れる手軽さがウリだ。
ところがどうしたもんか、豚肉をうっかり茹ですぎてしまった。 予定時間を大幅に超えて茹でられた豚バラの塊はグズグズになっていて、このままつかみ上げたのではたぶん脆くも崩れて落ちてしまうだろう。
キラキラと脂がきらめく湯が冷めるのを待つことにした。 できあがったチャーシューは、湯の中に味を全部置いてきてしまったのでとても地味だ。 だからあれほど茹ですぎはいけないと普段から言ってんのに。
対して茹で汁は大したもんだ。 何せ、豚の旨味だらけなんだから。 このまま捨ててしまうのは忍びねえ、一品こしらえることにする。 要は、白切肉とザーサイスープのカンケイだ。
茹で汁を小鍋に移して火にかけて、冷蔵庫からレタスを掘り出してきた。 葉をむしってよく洗い、皿に重ね盛る。 レタスを一枚つまみ上げ煮立った汁の中へ浸すと、豚の脂をまとって怪しく光る。 シナッとしたところをポン酢に浸して食うと、これが旨えの。
いわばレタスの常夜鍋、いやシャブシャブか。 あいにく腹も減ってないし、レタス一本で今夜は飲めそう。 と、
そうこうしているうちに酒が進み、何か他にもつまみが欲しくなってくるもんだ。 冷蔵庫を覗いてみると、手羽先が見つかった。 この手羽先は、前日にスープをとるためだけに2時間じっくり煮込まれたもので、そのスープは牛のストックと合わさりハヤシライスになり、この手羽先自身は、明日中華風手羽先の前菜になる予定だった。
でも見つけてしまったんだからもう後には引けない。 煮汁にブッ込んだ。
味の抜けた手羽先の肉に豚の旨味が染込んでマル。 どうしてスープが白濁しているのかというと、別途つまんでいた腐乳をポン酢に溶かして食べてみたところ旨いのなんの、というところから。 白菜と腐乳が合うっちゅう話は腐乳生菜でわかりきっている。