柿取人
息子と二人きりでドライブをしながら、早くもクリスマスプレゼントについての議論を交わす。
オイ「んで、何が欲しいんだねキミは」
息子「ドラゴンボールのケーキとコジマヨシオのパンツ」
オイ「……」
とにかく某パンツ一丁男の人気はすごくて、息子の通う保育園ではどの園児もカンケイナイカンケイナイ、と地団太をふんでいる。 親としては、甚だ迷惑なことである。 でもしかし、赤いパンツを買い与えることは何も悪いことではない。 クリスマスプレゼントは赤パンに決定! なんだか安すぎて息子に悪い気もするが、本人が決めたことだ。
突如目の前に柿の木が現れ、すぐにはるか後方に流れていった。 一瞬なのでハッキリとはしないが、柿の木の下に男がいてかがみこんでいた気がする。 気になったことはすぐに確かめなければならない。 柿の木までUターンする。
男は柿の木に竹ざおを伸ばし、熟した柿の枝にそれをからませる。 枝がポキリと折れて、柿を収穫することができた。 黙々と、その作業を繰り返している。 オイと息子は、その光景を黙って見続けている。
男は「柿泥棒」ではないようだ。 作業が手馴れているうえに、堂々と収穫している様は、きっとこの柿の木のオーナーに違いない。
しかしよくもまあ、あんな竹ざおいっちょで、こうも簡単に柿を取ることができるものだね。 あの竹ざお、一体どうなってんだ? 息子と二人、凝視する。
竹ざおの先端部分、真ん中にちょうど切れ込みが入れられており、その切れ込みに柿の枝を挟ませておいて、一気に竿を回転させる。 すると、枝はポキリと折れるものの、枝自体を竿がしっかりとホールドしているので、落とさない。 まさに簡易版高枝切ハサミのようだ。
このように分析しながら、柿を収獲する様子をじっと眺めていたら、さすがに柿取男も我々の視線に気づいたらしく、手を休め振り返った。 我らはペコリ、こんにちは!と挨拶をする。 人と目が合ったら、挨拶をしなければならない。 できれば先に挨拶をすることが望ましい。
「あーら見てたのね」どこかで聞いたことのあるような受け答えをする柿取人。 「柿食べる?」と聞かれたので「はい!ハイッ!」と返事をする。 柿が竹竿で?がれるまで待ち、手を伸ばしてそれをもらう。 計20個ぐらいはもらった。
「最後にひとつだけお願いです。 一度、その竹竿でオイも柿を取ってみたいのです。 やらせてくれませんか?」
すんなり承諾を得て、よころんで柿を収獲した。 楽しかった。 おわり。
超旨葱料理
まずネギが悪いということだけ申し上げておきたい。
オイは一体何をつまみあげているのか? それは長ネギの白い部分である。 ネギを3.5センチに切り、中身を抜いて、筒にする。 そこへ、コンビーフを詰め込んで、オーブンでこんがりと焼く。
これは東海林さだお氏が「ネギでお腹いっぱい@おでんの丸かじり」で披露しているオリジナルのネギ料理なわけだがビールとイケル。
これを沢山作ってつまもうと、長ネギを求めてスーパーへ向かう。 だがしかし、長ネギの質が悪い。 長ネギが2本束になって298円。 普段ならばせいぜい158円ってところが298円。 どーしたんだ長ネギ。 天候の影響なのか。 長ネギ買うのに300円支払うというのもなんだか勇気が必要とされるが、仕方がない。 美味しいネギ料理のためだ。 298円の長ネギを手に取る。
カゴに入れようとした瞬間、長ネギの異変に気がついた。 長ネギがなんだか、スカスカのゴワゴワなのだ。 よく見ると長ネギの表面は張りがなく、乾燥気味だ。 おそらく、この長ネギを鍋ものに使用すると、外側が固くて食べきれないと思われる。 多分年をとった長ネギなのだ。 なので使用する際は、長ネギ自体を一皮むいてから調理しなければならない。 一皮むくと、一回り小さくなる。
298円ネギのとなりには、普段見かけない中ネギというものが並べられている。 これはまさに長ネギを一皮むいた中身であり、一皮むくことによって小さくなった分、値段も安くなっている。 一束158円だ。
いやまてよ、298円ネギの一皮は、食用に適さない一皮なのであり、その一皮分を中ネギとの差額から算出すると298-158=140円となる。 長ネギの乾燥した分厚い一皮は、140円なのだ。
長ネギを298円で購入してもどうせ一皮むかねば食べることができないわけで、140円分の外側は廃棄処分となる。 中ネギは長ネギを一皮むいた状態で勝手にスーパーがそう名づけて販売しているのであり、丸ごと調理に使うことができる。
ただ、ネギコンを作るにあたり、中ネギ程度の太さでは、いささか具合が悪い。 コンビーフを詰め込みにくいのだ。 しかし長ネギを購入したところで、実際使える部分は中ネギと同じ部分になるわけだし…。
このような葛藤から作られたのが、ページトップの写真である。 中ネギで作ったので、旨いけど細い。 コンビーフをコツコツと詰め込んでいくうちに上手くゆかずイライラしてくる。 こんなに苦労しなければならないのは、長ネギの外側がゴワゴワだからであり、ゴワゴワの長ネギを一束298円で売るとはなにごとか、という怒りがこみ上げてきて、いっそうのこと、上等の長ネギを探す旅に出かけてみたいような気さえしてくる。 なのでこの一品は、上質な長ネギがあることを確認した上で作りはじめなければならない。
飲んでいるうちにメンドクサくなってきて、焼いた長ネギの上にコンビーフをのっけてつまむ、という風に調理法が変わってきた。 どっちにしてもウマカッタ。 長ネギのバカ。
赤い布
インドでは交通事故が起きると、その後ろを走っていた車が救急車のかわりをするそうだ。 インド人はたいてい車内に赤い布を常設していて、けが人を乗せた車は車外にそれを吊るしてサイレンのかわりに使用する。
事故を起こした当事者のほうは、群集で取り囲んで逃げれなくするそうである。
(読むクスリ29巻より)